宇宙飛行士によって宇宙ステーションの細菌叢が変化することが明らかに

space 2020/05/18
国際宇宙ステーションISS。/Credit:depositphotos
point
  • 宇宙飛行士の細菌叢と宇宙ステーションに残る細菌の比較研究が行われた
  • 宇宙ステーション内の細菌と宇宙飛行士の皮膚細菌を調べたところ55%近くが一致した
  • 無菌の宇宙では飛行士の細菌に影響されて、ステーションに誰がいたのか特定できてしまう

もし人類が宇宙の奥深くまで旅する時代が来た場合、長期間の宇宙生活がどんな影響を与えるのか知る必要があります。

宇宙ステーションで生活する宇宙飛行士は、数々の実験を宇宙で行うだけでなく、自分自身に起こる変化も研究対象にされます。

宇宙は基本的に無菌の空間のため、宇宙ステーションは非常にクリーンな環境です。

今回の研究では、そんな宇宙の暮らしが、宇宙飛行士の微生物叢にどんな影響を残しているか、また逆に宇宙ステーション自体にどんな影響が与えられるかを調査しています。

その結果は、かなり興味深いものになったようです。

宇宙で起こる細菌叢の変化

腸内バクテリアのイメージ。/Credit:depositphotos

2019年にネイチャーの科学雑誌Scientific Reports』に掲載された論文では、半年から1年の間宇宙ステーションに滞在した9人の宇宙飛行士の腸内細菌叢の変化について報告しています。

そこでは、意外なことに無菌に近い環境の宇宙で、腸内細菌叢が多様化していたことがわかりました

研究者の多くは、腸内細菌叢の多様性は低下するだろうと予想していました。予想に反したこの結果は、NASAが取り組む宇宙ステーションでの食事の多様化の成果だといいます。

NASAは宇宙ステーションで200以上の飲食物が利用できるよう努力しており、宇宙飛行士は自宅で食事するよりも多様な選択肢を与えられているのです。

腸内細菌叢が多様化すれば、一般的に病気などを回避できる可能性が高くなります

しかし、皮膚の細菌叢を検査したところ、一貫している傾向として、プロテオバクテリアが減少していることがわかりました。これは主に土壌中に存在する細菌で、宇宙ステーションが清潔であることが現象の原因と考えられます。

このように宇宙は無菌状態のため、注意を払っていなければ細菌は減少していく傾向があるようです。

SF映画などで地球へ攻めてきた宇宙人が、地球の汚染や細菌の影響であっさり自滅してしまうオチがありますが、長く無菌の宇宙を旅してくれば、環境の変化に極端に弱くなってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。

宇宙ステーションに住む細菌たち

今回の研究者たちが注目したのは、宇宙飛行士の細菌叢だけではなく、宇宙ステーションに居着いている細菌たちがどうなっているか? ということでした。

無菌に近い宇宙ステーションでは、逆に宇宙飛行士たちの影響を受けてステーション内の細菌叢が変化するのではないか、と考えたのです。

実際これは、想像以上にはっきりとした変化を与えるものでした。

研究者たちは、宇宙ステーションの壁や床から採取した細菌の痕跡を見れば、どの宇宙飛行士が宇宙ステーションに滞在したか判別できるほどだといいます。

Credit:depositphotos

研究チームは、ミッション前、ミッション中、ミッション後の宇宙飛行士の口、鼻、耳、皮膚、唾液から綿棒でサンプルを採取し、また宇宙ステーションの8つのポイントから、同様に細菌のサンプルを採取して、それらを分析しました。

すると両者の細菌には一致するパターンが見つかったのです。

さらに研究チームはショットガン・シーケンシング法という長いゲノムを分析する手法を使って、細菌サンプルのDNA分析を行いました。

この方法では、細菌の全ゲノム情報を解析して、どんな菌がどれくらい存在するかや、どのような遺伝子をどれくらい持つかということが分析できます。

その結果、宇宙飛行士の細菌叢と宇宙ステーションの細菌叢では、55%が一致していたというのです。これは特に飛行士の皮膚サンプルとよく一致していました。

宇宙ステーションの最近は、そこで過ごす宇宙飛行士の細菌叢に大きく影響され、それは宇宙飛行士が地球へ帰還した後も最大で4カ月持続するとわかったのです。

現在のところ、これは一人の宇宙飛行士を対象に行った研究ですが、非常に興味深い結果を示しています。

将来宇宙で犯罪が起こった場合は、指紋の代わりに細菌で犯人が特定される…なんてことも起こってしまうかもしれませんね。

Credit:depositphotos

この研究は、米国ローレンス・リバモア国立研究所とNASAの研究チームの共同で発表され、科学と医学分野の一次研究論文を扱うオープンアクセスの査読付き学術雑誌『PLOS One』に4月29日付けで掲載されています。

宇宙滞在で遺伝子が変化!?双子のDNAと別物になってしまった宇宙飛行士

reference: sciencealert/ written by KAIN
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