- 火星は泥火山で覆われている可能性がある
- 泥火山は通常の火山とは異なり地殻の圧力によって泥水を噴出する
- 泥火山をしらべることで他の惑星でも生命探査が進む可能性がある
近年の研究によって、火星はかつて地球のように水に覆われた惑星であり、現在においても、地下にはまだ大量の水が存在していると考えられています。
その証拠となっているのが、泥火山の存在です。
泥火山はマグマが噴出する通常の火山とは異なり、地殻に生じた圧力によって、水を多量に含んだ層が地表に泥水を噴出することで形成されます。
しかし、火星の気圧は地球と比べるとほぼゼロに近く、噴出した泥水の堆積は地球と大きく異なります。
そこで研究者は火星における低温低圧の環境を実験室内部で再現し、火星における泥の挙動の調査を試みました。
その結果、意外な事実が判明しました。
火星環境を再現した空間での冷えた泥水は、冷えたマグマとそっくりの形を形成したからです。
もし同じことが火星で起きていた場合、これまで私たちが火星表面で観測した「冷えたマグマ」や「火山」だと思っていたものが「冷えた泥」や「泥火山」に置き換わる可能性があります。
どうして火星環境では、泥水はマグマのような形状をとったのでしょうか?
火星環境を再現して泥を流す
これまでは、火星で泥水が噴出しても、気圧がほぼゼロに近いために、水は一瞬で蒸発してしまい、後には泥の粒子だけが残ると考えられてきました。
しかし実際に火星と同じ低温低圧の環境で泥水を流した結果、泥水は上の動画が示す通り、マグマのように粘性を保ったまま流れ続けたのです。
原因を探るために研究者が凍った泥を取り出して分析したところ、上の図が示すとおり、泥は地球上での溶岩と同じように多くの気泡を含んでいることがわかりました。
これは低温低圧環境において、泥の中の水が盛んに蒸発していたことを示します。
また、流れ方もよく似ていることがわかりました。
地球のマグマは表面が冷えると流れが一旦せき止められますが、マグマが溜ってくると決壊を起こして、次の流出が起こります。そしてせき止めと決壊を繰り返すことで、冷えたマグマの表面の特徴的な形状が作られます。
それと同じことが、火星環境の泥水でも起こったのです。
泥水は表面の凍結で一旦、流れがせき止められましたが、後ろから流れてくる泥水がたまると決壊し、新たな流出を起こします。
火星の低温低圧の環境にとっては、液体の水を含んだ泥は「極めて高温の流体」であり、マグマと同じように振る舞うのです。
そのため、火星で冷えたマグマだと思われていた構造は、実際は冷えた泥である可能性が出てきました。
火星は私たちがこれまで予想していたよりずっと、冷えた泥で覆われた星だったのかもしれません。