影からエネルギーを生成!光と影のコントラストで発電する「陰影電池」が開発される

technology 2020/05/24
Credit: Royal Society of Chemistry
point
  • 室内でも効率的に発電可能な「影を利用した電池」が開発される
  • 光と影のコントラストによって生じる電圧差で発電できる
  • 適切な条件下では、太陽電池の2倍の発電効率をもつ

光と影は対象的です。多くの人はエネルギーをもたらす光にはプラスのイメージを抱きますが、影にはマイナスのイメージを抱くかもしれません。

しかし、シンガポール国立大学材料工学科のタン・スウィー・チン助教ら研究チームは影の効果を利用した発電デバイスを開発することで、影を有効利用しました。

この新たなデバイスは「影効果エネルギー発生装置(SEG)」と呼ばれ、屋内に生じる光と影のコントラストによってエネルギーを供給できます。

[ads01]

影のある場所でも充電したい

現在の私たちの生活には、スマートフォンなどのモバイル電子機器が必要不可欠です。

同時にモバイルバッテリーもあると便利ですが、大きなものを持ち歩くのは不便であり、それらも充電を必要とします。

Credit:depositphotos

そのため、軽くて装着しながら自己発電できる「ウェアラブル充電器」の需要が増加しています。

市販の太陽電池を用いればこの需要を満たすことができますが、影の多い屋内環境ではエネルギー回収効率が大幅に低下します。

このように影の存在は「発電の敵」とされてきましたが、新しい研究では、その影によって電力を生み出すことに成功しました。

研究チームは低コストで組み立てが簡単な影効果エネルギー発生装置(以下、SEG)を開発し、「室内照明と影によってできるコントラスト」を電力変換に利用したのです。

光と影から発電する仕組み

室内ではどこでも、照明による光と物体による影が生じます。

このコントラスト部分にSEGを置くことで影の部分と光の部分の間に電圧差が生じ、電流が発生するようになっているのです。

チン氏によると、「影の存在下でエネルギーを収集するこの概念は前例のないものです」とのこと。

SEGは柔らかくて透明なプラスチックフィルム上に配置された「SEGセル」から構成されています。

Credit: Royal Society of Chemistry

各SEGセルは、シリコンウェハー(回路を書き込むためのシリコンでできた基盤)上に金の薄膜を重ねられたつくりになっており、市販の太陽電池に比べて低コストで製造可能です。

室内にあるコントラストから発電できる

SEGはコントラスト状況下でのみ効果を発揮します。ですからSEGセル全体が照明下もしくは影になっている場合、発電量は非常に少なく、全く発電しないことも。

しかし、SEGセルの一部に光が当たることで、かなりの量の電気が発電されます。発電に最も適切なのは、SEGセルの半分が照明下にあり、残りの半分が影にある状態とのこと。

実際に、照明と影のコントラストの元に置かれたSEGはデジタル時計に十分な電力(1.2V)を供給しました。

デバイスを光と影のコントラスト下に置く必要がありますが、室内照明下のほとんどの状況で影が生じることを考えると、案外効率が良いのかもしれませんね。

室内では照明と影のコントラストができる/Credit:depositphotos

さらに、SEGは影と光を感知できるので近接センサーとしても応用できます。

物体がSEGの側を通過することで一瞬影ができ電圧差が発生。その電圧差によって物体の存在や動きを認識できるのです。

今後、研究チームは低コスト化を目指して、金以外の材料を使ってSEGを作成できるかテストする予定だそう。

また将来的には、多彩な機能を備えた自己発電型センサーや、衣服に装着して日常的にエネルギーを採取するウェアラブルSEGの開発を視野に入れています。

研究は4月5日、「Energy&Environmental Science」で報告されました。

「太陽を必要としない太陽電池」が開発される

reference: techxplore / written by ナゾロジー編集部
あわせて読みたい

SHARE

TAG