アボリジニが描いた謎の古代ステンシル画、ついに作り方が判明?

history_archeology 2020/05/30
Credit: ancient-origins

オーストラリア先住民の「アボリジニ」は、歴史的に貴重な資料となるロックアート(岩石画)を残してきました。中には、2万8000年も昔にさかのぼる作品もあります。

オーストラリア北部のリンメン国立公園にある「Yilbilinji洞窟」もそのひとつ。

ここでは直径12センチほどのロックアートが300点以上も見つかっているのです。

今回、オーストラリア・フリンダース大学は、同地で確認された17点のステンシル画に注目しました。ステンシルとは、型を使って文字やイラストをプリントする、現代でも馴染みの手法です。

研究チームは、実験考古学や民族史の記録を用いることで、アボリジニのステンシル画の作り方について新たな発見をしました。

古代のステンシル画は非常にめずらしい

本研究は、リンメン国立公園のレンジャーと同地に住むマーラ族(アボリジニ)の協力のもと行われました。

この洞窟はマーラ族が所有してきた長い歴史があり、神聖な場所として先祖代々、受け継がれています。

Yilbilinji洞窟の入り口

今回の研究対象であるステンシル画は、ロックアートとしては非常にめずらしく、この他にインドネシアと同じくオーストラリアにひとつずつしか見つかっていません。

Yilbilinji洞窟のステンシル画は、すべて人や動物をかたどったミニチュアの図像でした。

中には、人をかたどった図像が4体見つかっており、1体は盾を持っていて、残りはブーメランを手にしています。他に、首の長いカメや小さなカニ、波線などの幾何学模様も見られました。

洞窟内で見つかったステンシル画/Credit: Antiquity Publications Ltd

ステンシル画の描き方は、最初に図像の型をつくって壁に貼り、その周りに白いスプレーのようなものを吹きかけるというもの。しかしこれまで、その型や塗料にどんな材料を使ったのかは分かっていませんでした。

そこで研究チームは、アボリジニの民族史をもとに材料を割り出し、同じ作り方で再現する手法(実験考古学)をとりました。

型には「蜜蝋」が使われていた?

ステンシル画を調べてみると、すべて輪郭線が丸みを帯びていたことから、粘土のように簡単に整形できる材料を使ったと思われます。

そこで民族史研究に当たってみると、アボリジニのグループは放浪中、常に蜜蝋を持ち歩いていたことが記録されていました。蜜蝋はミツバチの巣に使われているロウを精製したものです。

記録によると、蜜蝋の用途はさまざまで、棒の先にモリを固定するのに用いたり、子どものオモチャを作るのに使われていました。蜜蝋は加熱すると柔らかくなり、好きな形を作るにはもってこいです。

そこで研究チームは、蜜蝋を用いて、洞窟内に見つかったものと同じ人の型を作りました。

蜜蝋でつくった人の型

同チームのリアム・ブレイディ氏は「蜜蝋は、実際の図像に見られる細かなディテールを再現することも可能でしたし、何より岩壁に貼り付けるのにとても向いていた」と話します。

そしてペイント具であるスプレーは、同地域で簡単に入手できるカオリナイトの粘土を水と混ぜて再現しました。

再現された図像がこちらです。

実際のステンシル画/Credit: Antiquity Publications Ltd

かなり忠実に再現できているのが分かります。

また、アボリジニがステンシル画を描いた理由について、ブレイディ氏は「洞窟を神聖な場所と見なしていたことから、先祖の記憶を刻む目的や図像に魔術的な意味合いが込められていたのかもしれない」と指摘しています。

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reference: ancient-origins / written by くらのすけ
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