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- 1631年、キナの樹皮から世界初の抗マラリア薬がつくられる
- 19世紀のヨーロッパ軍はマラリアに苦しんでおり、植民地戦争で勝利するためにもキナの木が必要だった
- 一時期、世界支配の優位性を高める上でキナの確保は大きな利点となっていた
最近、抗マラリア薬として知られているクロロキンやヒドロキシクロロキンが、新型コロナウイルスの治療薬としても議論を呼んでおり、世界保健機構は安全性を理由に研究を中止しました。
これらは、もともと抗マラリア薬として活用されていたキニーネから派生したものです。
そして、キニーネ自体はキナ種の樹皮から作られた天然由来の有機化合物であり、その木は「世界地図を塗り替えた木」と表現されることがあります。
キニーネが世界に与えてきた影響を知ると、「治療薬開発と世界情勢」の関係性をも明らかにできるでしょう。このことは、新型コロナウイルス治療薬がもたらす世界情勢の変化と通じるものがあります。
マラリアを唯一治療できる木
マラリアは蚊を媒介とする寄生虫(マラリア原虫)によって引き起こされる感染病です。
無症状・発熱・死に至る重いものまで症状はさまざまですが、熱帯熱マラリアともなると致死率が高く、迅速な治療が必要になります。
マラリアは4000年以上前から人々を苦しめており、ローマ帝国を荒廃させ、20世紀には1.5億人~3億人が死亡したとされています。
加えて、現在でも世界人口の約半分がこの病気に伝染する可能性がある地域で生活しているのです。
今でこそクロロキンやヒドロキシクロロキンなどの化学治療薬が存在していますが、医学が発展していない時代では、マラリアが世界の脅威として君臨していました。
そして、そのマラリアの治療薬が見つかったのは1631年のことです。
ペルーの副総督夫人がマラリアに感染した際、副総督が手に入れた調合薬の中にキニーネが含まれていました。
キニーネは現代のペルー、ボリビア、エクアドルに住んでいた先住民たちに以前から知られていたものであり、彼らがキニーネ(キナの樹皮)を紹介したようです。
副総督夫人が助かったことにより、キニーネの効果は世界中に知れ渡ることになりました。
世界初のマラリア治療薬が見つかったのです。