”人類の祖先も見ていた”350万年前の夜空は、光輝く「幻想的な景色」だった

space 2020/06/04
Credit:NASA, ESA, G. Cecil (UNC, Chapel Hill), and J. DePasquale (STScI)
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  • 350万年前、天の川銀河中心の大質量ブラックホールは巨大なフレアを起こしていた
  • このフレアの放射線は20万光年離れたマゼラニックストリームのガスを電離させて夜空を光らせた
  • この現象は100万年近く続いた可能性があり、人類の祖先はこの幻想的な夜空を見ていたかもしれない

太古の夜空はどのような景色だったのでしょうか?

人工の明かりがなかった時代、今より星々が数多く輝いて見えたのは確かでしょう。しかし、他にも今は見ることのできない特別な光景が広がっていたかもしれません。

新しい研究は、350万年前、天の川銀河の中心にある大質量ブラックホール「いて座A*(いてざ・えーすたー)に大規模な水素雲が落下し、猛烈なフレア爆発を起こしていた証拠を発見しました

この銀河中心の大爆発は、遠くマゼラン星雲から伸びるガスの帯「マゼラニックストリーム」さえ明るく照らして輝かせたというのです。

この現象は夜空にぼんやりと幻想的な光の雲を作り出しました。人類の遠い祖先はアフリカの平原でそんな不思議な夜空を眺めていた可能性があるのです。

太古の夜を彩った不思議な天体現象。これを解き明かした、ロマンチックな研究はどのようなものなのでしょうか。

ブラックホールの閃光が宇宙を照らす

赤く映された領域がマゼラニックストリーム。背後にあるのは天の川銀河。/Credit:for the radio/visible light image: David L. Nidever, et al., NRAO/AUI/NSF and Mellinger, LAB Survey, Parkes Observatory, Westerbork Observatory, and Arecibo Observatory.

私たちの属する天の川銀河からおよそ20万光年の距離に「マゼラニックストリーム」と呼ばれるガスの帯が存在しています

これはマゼラン星雲(大マゼラン雲と小マゼラン雲)が、飛行機雲のように残した非常に長いガスの軌跡です。

(ちなみに、マゼラン星雲という呼び名は、星雲と銀河の区別ができなかった時代に付けられたもので、実際は星雲ではなく銀河です)

大マゼラン雲と小マゼラン雲。/Credit:Wikpedia,ESO

マゼラン星雲は地球からもっとも近い銀河ですが、20万光年近く離れたこの天体と、天の川銀河は基本的に独立していて、影響を及ぼし合うことは無いと考えられていました。

しかし、350万年前に起きた天の川銀河中心の大爆発は、マゼラン星雲が残したガスの軌跡、「マゼラニックストリーム」まで照らして輝かせていたのです。

こうした痕跡は、マゼラニックストリームの背後にある、はるか遠方の宇宙から届くクエーサー(恒星のように光り輝く天体のこと)の光を解析することで得られました。

クエーサーの光は紫外線領域で豊富な情報を持っています。そこには、かつてマゼラニックストリームが強力な放射線により電離(イオン化)していた証拠も含まれていたのです。

銀河中心の大爆発

天の川銀河中心で起きた爆発は、大質量ブラックホール「いて座A*」の近くで渦巻く降着円盤に、太陽質量の10万倍にも及ぶ水素雲が落下したために起こったと考えられています。

その結果、「いて座A*」は銀河平面の上下方向に宇宙空間の奥深くまで届く、強烈な紫外線の閃光を円錐状に放射しました。

これは、銀河平面の上下方向に大きく広がるフェルミバブルを生み出す原因にもなった現象と考えられています。

Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center

フェルミバブルは約5万光年に及んで、放射線により電離されたガスの痕跡ですが、それは20万光年離れたマゼラニックストリームにまで及んでいたのです。

天の川銀河の南極方向から吹き出した放射線は、円錐状に広がってマゼラニックストリームを構成する水素ガスを電離させました。これは太陽を1億個作り出せるほどの大量の水素でした

なぜ、そんなことがわかるのかというと、それは電離の確認できた領域にあります。

クエーサーの光を通した確認されたマゼラニックストリームの電離は、ちょうど天の川銀河の南極方向から放射状に広がった領域でした。

マゼラニックストリームには、マゼラン星雲を先導するように伸びるリーディングアームという領域もありますが、天の川銀河の南極方向から外れたこの領域には、電離の痕跡は見つかっていません

大マゼラン雲(LMC)とそれに伴う小マゼラン雲(SMC)からマゼラニックストリームというガスの帯が伸びている。これにはマゼラン星雲を先導するように伸びるリーディングアームがある。天の川銀河のフレアは南北方向に円錐状の閃光を放ち、ガス帯の一部を明るく輝かせた。/Credit:NASA, ESA, and L. Hustak (STScI)

このことから、マゼラニックストリームを電離させたのが、天の川銀河の放射だったと推測できるのです。

紫外線のスペクトルは情報が豊富ですが、地上までは届きません。こうした観測は軌道上に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡の紫外線観測だからこそ成し遂げられた成果です。

これはまるでクリスマスツリーのようにマゼラニックストリームを光らせただろうと、研究者の1人宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のアンドリュー・フォックス氏は語っています。

さらにこの現象は、最大100万年近く継続した可能性があるといいます。

これは地球から肉眼で見ても、ぼんやりとした幽霊のような輝きを放っていて、それはアフリカの平原をさまよっていた人類の祖先も目撃していた可能性があります。

はるかな昔、今とは異なる夜空が広がっていたと思うと、とてもロマンをかき立てられます。

この研究は、宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の研究者Andrew J. Fox氏を筆頭としたハッブル宇宙望遠鏡の国際研究チームより発表され、6月2日付けでNASAのプレスリリースで発表されました。

論文は、天文学に関する学術雑誌『Astrophysical Journal』に掲載予定で、第236回米国天文学会でも発表予定です。また、論文全文はプレプリントサーバーで閲覧できます。

Kinematics of the Magellanic Stream and Implications for its Ionization
https://arxiv.org/abs/2005.05720

これでアマチュアだと…!? 1060時間かけて撮影した大マゼラン雲が一枚の写真に

reference: hubblesite/ written by KAIN
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