かつて火星には土星のような「輪っか」があった

space 2020/06/07

Credit:Kevin Gill/Flickr
point
  • 衛星ダイモスの傾いた軌道は、火星リングからの衛星形成モデルで説明ができる
  • 火星のリングは2017年に発表された仮説だが、この研究はその事実を補強するもの
  • 衛星フォボスは火星に向けて少しずつ落下しており、1億年ほどでロシュ限界を超えて再びリングになる

火星には非常に近い場所を回る大きな第1衛星フォボスと、離れた位置を回る小さい第2衛星ダイモスが存在しています。

この2つの衛星は、かつて小惑星が火星の重力圏に捕らえられて形成されたと考えられていました。

しかし、2017年に発表された研究では、小惑星が火星に衝突することで巻き上げられた物質が、火星にリングを生み出し、それがくっついて生まれたという仮説を提唱しています。

かつての火星には、土星のようなリングがあったらしいのです。

新しい研究は、この仮説を裏付ける新たな事実を発見したと発表しています。

その秘密は、外側を回る小さいダイモスの、少しだけ傾いた軌道にあるというのです。

火星のリング

火星がリングを持っていたというのはロマンのあるお話ですが、実際のところ、リングを持つ惑星はさほど珍しいものではありません。

リングを持つ惑星の代表は土星ですが、土星ほどはっきりは見えないものの、天王星、海王星、木星もリングを持っており、太陽系の半分の惑星にはリングがあります

また、太陽系の外縁に浮かぶ準惑星ハウメアや小惑星でもリングを持つものが確認されています。

準惑星ハウメアのリング想像図。/Credit:IAA-CSIC/UHU

リングを持つというのは、それほど突飛な話ではなく、わりとありふれたものなのです。

火星の上空100km以上の場所には、地上から巻き上げられたものとは異なるダストの濃い領域があり、かつてリングが存在したことを示唆しています。

そして、火星の持つ2つの衛星フォボスとダイモスも、こうしたリングがくっついて誕生したというモデルが唱えられているのです。

少しだけ傾いているダイモスの軌道

火星の衛星フォボスとダイモス。/Credit:Wikpedia

火星の衛星のうち、離れていて小さい方が第2衛星ダイモスです。

このダイモスは、火星の赤道上の軌道を回るのではなく、約2度ほど傾いた軌道を回っています

大抵軌道というものは主星の赤道上に広がる平面で一致しており、衛星などが傾いた軌道を回るというのは、珍しい状態です。

しかし、ダイモスの軌道が傾いている事実についてはあまり重要視されたことがなく、これまでその理由は説明されて来ませんでした。

新たな研究は、このダイモスの傾いた軌道が、火星がかつてリングを持っていた証拠になるということを示しています。

衛星の軌道が傾いてしまうのは、近い経路を行く衛星同士の重力的な影響が原因です。これには軌道共鳴という現象が影響しています。

例えば海王星の衛星ナイアドは、海王星の軌道面に対して約5度傾いています

海王星衛星タラッサを固定して見た場合の衛星ナイアドの軌道運動。/Credit: NASA

そして、ダイモスの軌道が傾いている理由も、フォボスの形成モデルを考慮した場合に説明できるというのです。

何度も砕けてはくっついたフォボス

火星の衛星フォボスは、火星の地表6000kmというかなり近い位置を回っています。これは太陽系の惑星が持つ衛星の中でも、もっとも主星に近い衛星です。

新しい研究では、フォボスとダイモスは約45億年前、小惑星の衝突でできた火星のリングがくっついて生まれたと考えています。

そして、このとき形成されたフォボスは現在より20倍質量が大きく、また現在より軌道は外側にあって、ダイモスへの影響も大きかったと考えられます。

この状態を考慮して数値シミュレーションすると、ダイモスの軌道はピタリと現在の傾いた軌道に一致したのです。

ではフォボスが現在の姿へ変わった理由はなんでしょう?

フォボスは過去に少なくとも2回、火星に近づきすぎたために砕けてリングとなり、再びくっついて衛星になったと考えられます。

実際フォボスは現在も火星へ向かって年間1.8cm落下し続けています。そして1億年以内に再びロシュ限界を超え、火星との潮汐力で砕けてリングになると考えられているのです。

ロシュ限界というのは、惑星や衛星が破壊されずに主星に近づける限界の距離を指します。ここを超えると衛星や惑星は潮汐力によって引き裂かれてしまいます。

ロシュ限界を超えた衛星。/Credit:Wikipedia

デイモスの傾いた軌道を説明するためには、フォボスはなんどか生まれ変わり、そのたびに火星にリングを作っていた必要があるのです。

火星のリングは一部は引き込まれて星に降り注ぎますが、一部は逆に外側へ押し出されそこで再びくっついて衛星を生みます。

静かな惑星に見える火星の周囲では、なんとも劇的な変化が繰り返されていたようです。

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2024年にフォボスへ探査機を送り、地表からサンプルを持ち帰る計画を進めています。

もし実現されれば、こうした理論を補強する新たな事実が見つかるかもしれません。

この研究は、SETI研究所のMatija Cuk氏を筆頭とした研究チームより第236回アメリカ天文学会で発表され、論文は『The Astrophysical Journal Letters』へ掲載予定です。また論文は、プレプリントサーバーで公開されています。

Evidence for a Past Martian Ring from the Orbital Inclination of Deimos
https://arxiv.org/abs/2006.00645

海王星の衛星ナイアドは正弦波で移動する? 宇宙に潜む数学の神秘

reference: sciencealert,livescience,CNN/ written by KAIN
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