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月や火星で”宇宙農業”をする計画。 藻類から作ったプラスチックで温室を建設する

2021.01.27 Wednesday

2020.06.10 Wednesday

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Credit: GrowMars/D. Tompkins

現在人類が生活できる宇宙は、衛星軌道上の国際宇宙ステーション(ISS)が限界です。

しかし、近い将来、月面基地の建設や火星有人探査などのミッションが予定されており、実現に向けた準備が着々と進められています。

そうしたときネックになるのが食料の確保です。

宇宙ステーションならば、ほんの数時間で地球からの補給を行うことができます。

しかし、月面での長期滞在では、補給ミッションもかなりの時間を要することになります。また火星に至ってはたどり着くまでに数カ月の時間を要し、費用も莫大なものになるでしょう。

そのため、本気で人類の宇宙進出を考えた場合、宇宙飛行士がある程度自給自足できる技術や方法を開発する必要なのです

現在、NASAを始めとした世界の宇宙機関は、そんな宇宙開拓時代に向けた宇宙農業の研究を進めています。

宇宙で農業するための温室を作る

元NASAケネディー宇宙センターのAnthony Muscatello氏が火星の研究をしている「GrowMars」のDaniel Tompkins氏と共に、NASAの支援を受けて始めた研究では、主に二酸化炭素と水から、温室を作るための資材を生み出す方法を提案しています

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GrowMarsのプロセスを示す図。/Credit: GrowMars/D. Tompkins

これは二酸化炭素から酸素を生み出す生物学的なプロセスを利用して、藻類を化学的に処理して、資材となるプラスチックに変換するというものです。

彼らのコンセプトでは、現地で得られた水、二酸化炭素、また人間の呼吸で得られる二酸化炭素、月面の氷に囚われている二酸化炭素や一酸化炭素、そして太陽光を利用することで藻類を栽培します。

炭水化物を豊富に含んだこのバイオマスは、彼らの変換器に投入することで、バイオプラスチックが生成できるのです。

このバイオプラスチックは、月や火星の塵(レゴリス)の結合剤にもなり、これらの混合からポリマー複合コンクリートも作り出すことができます

こうした方法により、透明なブロックを3Dプリントしていきます。これは彼らの設計した、長方形と台形を合わせた特殊なブロックで、常に太陽に向かって傾けることで、太陽エネルギーを効率よく吸収する温室が建造できるというのです。

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バイオプラスチックのブロックを3Dプリントしている様子。/Credit: GrowMars/D. Tompkins

こうした技術は石油に依存しないプラスチックを作るための方法としても、研究されているものです。

バイオプラスチックは地球外での使用にも十分耐えられるだけの耐久性を持っています。

こうして作られた資材は、形状の組み合わせによって人間が住むための家の建材などにも利用できるとのこと。

また時間が経つにつれて、新しく建造された温室がさらに多くの藻類を成長させることで、加速度的にコロニーを拡大させていくことができます。

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