賞味期限が2倍になる!? ”絹のコーティング”が食品を長持ちさせると判明

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シルク液をコーティングすると常温でもイチゴを7日間保存できた/Credit:SCIENTIFIC REPORTS
point
  • シルク液は食品表面に付着するとメッシュを形成してコーティングを行う
  • メッシュは酸素の通過を適度に阻害することで生鮮食品が熟れるのを防止する
  • 生鮮食品の賞味期限が2倍になれば、店頭での販売期間も2倍に伸びる

実験の失敗や研究者の怠慢によって引き起こされた偶然は、時に画期的な発見に繋がります。

今回のシルクの新しい特性にかかわる発見も、そんな偶然から見つかりました。

MIT(マサチューセッツ工科大学)の起こしたベンチャー企業では、絹(シルク)の”食品や医薬品”としての性能を調べており、定期的にシルクを食品として使う料理コンテストが行われていました。

シルクはカイコが作る天然の繊維であり、分解することで良質なタンパク源となるほかに、余分な脂肪や糖を吸着することで、生活習慣病の予防にも役立つことが知られています。

研究者のマレリ氏も、コンテストに出すシルク入りの料理の開発を行っていましたが、シルクを溶かした懸濁液に誤ってイチゴを1つ落としてしまいました。

すぐにイチゴを引き上げたものの、マレリ氏はやる気をなくしたのか、一週間ほど実験を休んでしまいました。

ですが、このマレリ氏の行動が、思わぬ発見に繋がります。

一週間後、実験を再開しようと戻ってきたマレリ氏は、1つの新鮮なままのイチゴと、その他の腐ったイチゴを発見します。

新鮮のままだったイチゴは、誤ってシルク液に落としてコーティングがなされたものでした。

いったい、イチゴに何が起きたのでしょうか?

シルクは天然のコーティング薬になる

シルク液をコーティングする過程は極めて簡単で特殊な化合物は必要ない/Credit:SCIENTIFIC REPORTS

野菜や果物といった生きた食品をコーティングして長持ちさせる技術は、現在まで多くの研究者によって研究されています。

コーティングの一般的な役割は、生きた食品を酸素や水蒸気から「適度に遮断」し細胞呼吸を「適度に抑制」することで成し遂げられます。

そのためコーティング剤にはフィルムとしての強さと、水を拒絶する疎水性の両方が求められます。

しかしその両方の性質を持つ安全なコーティング剤はなかなかみつかりませんでした。

フィブロインは親水性と疎水性のパーツを適度に組み合わせている/Credit:SCIENTIFIC REPORTS

しかしマレリ氏による発見により、実はシルクが、この性質を完全に備えていることが明らかになりました。

シルクを構成するフィブロインと呼ばれるタンパク質は、上の図のように適度な疎水性のパーツを持ち、集まると自然に繊維を構成する性質(自己組織性)があります。

そのため適切な濃度で水に混ぜて懸濁液を作ることで、適度な通気性を持つコーティング剤にすることができるのです。

シルク液の保存効果は抜群に優れている

保存が最も難しいとされるイチゴでも常温保存が可能になった/Credit:SCIENTIFIC REPORTS

シルク液のコーティング効果は抜群で、最もコーティングが難しいとされるイチゴに対しても偶然優れた効果を発揮しました。

シルク液はコーティングにより酸素の通行量を減らしイチゴの細胞呼吸を抑制する/Credit:SCIENTIFIC REPORTS

シルク液コーティングの効果を測定したところ、イチゴへの酸素の通気を1/50の量にして、呼吸速度を通常の1/3の速度に低下させていたことが判明しました。

呼吸速度が低下すれば、イチゴが腐ってしまうまでの時間を大幅に伸ばすことが可能になります。

なお今回の実験では、保存期間を最大で2倍に伸ばすことが成功したとのこと。

賞味期限が2倍になれば、店頭で販売できる期間も2倍になり、収益の大幅な強化が期待されます。

無色・無味・無臭で安全なコーティング剤

バナナの保存期限も大幅に伸ばせる/Credit:SCIENTIFIC REPORTS

今回の研究により、シルク液の優れたコーティング能力と食品保存効果が明らかになりました。

シルクは単体でも食品として安全なだけでなく、コーティング剤に加工したあとも無色・無味・無臭です。

研究チームは今後、肉や魚の切り身をはじめとした、あらゆる食品に対する最適化を行っていく予定です。

研究内容はMIT(マサチューセッツ工科大学)のB・マレリ氏らによってまとめられ、5月6日に大手学術雑誌「SCIENTIFIC REPORTS」に掲載されました。

Silk Fibroin as Edible Coating for Perishable Food Preservation
https://www.nature.com/articles/srep25263

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reference: phys / written by katsu
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