- 亜光速で走る自転車の肉眼でのみえかたが解明される
- 亜光速自転車では接近時に前後に伸びてみえ、遠ざかると前後が圧縮してみえる
- 亜光速自転車が赤色の場合、接近時に青色になり遠ざかると赤外線になってみえなくなる
バトルを描くSF小説やマンガでは、速さはキャラや機体の強さを描写する重要なファクターです。「光速」やそれに近い速度設定も、よく目にしますね。
しかし、光速に近い速度(亜光速)で移動する物体が現実のヒトの目にどうみえるか、噛み砕いて説明してくれる科学論文は少なく、これまでは概念上のものでした。
そこで新しく行われた研究では、亜光速で移動する「自転車」が肉眼にどのようにみえるかを2D・3Dの両方でシミュレート。
その結果、亜光速で移動する自転車は観察者との位置関係によって、ダイナミックに伸び縮みしてみえることがわかったのです。
それでは一緒に、伸び縮みする亜光速自転車を観察してみましょう。
2Dの亜光速自転車は最接近するときに一番伸びる
研究者は最初に、簡略化された2Dの亜光速自転車の見え方を解明しました。
上の図に示した2D自転車は線で構成されているようにみえますが、実は多くの小さな点の集まりです。
研究者はアインシュタインの相対性理論を組み込んだ仮想空間のなかで、この2D自転車を光速の90%で左から右に向かって移動させました。
観察する人間は、上の図のように自転車の移動方向とはズレて配置されています。
シミュレーションを行った結果、亜光速自転車は上の図のようにみえることがわかりました。
自転車は「みかけ」の接近速度が超光速になる接近時に前後に伸びてみえ、遠ざかるにつれて、前輪と後輪の幅が狭くみえるようになります。
このように自転車が伸び縮みして見えるのは、同じ時間にオブジェクトの各部位を「同時にみる」という行為が、原理的に不可能だからです。
私たちがものを「みる」とき、映像はオブジェクトが同時に放出した光子ではなく、同時に到着する光子によって生成されます。したがって、人が見るのは、オブジェクトからさまざまな時間に発生する、一緒に編まれた光子のパッチワークだったのです。
さらに、私たち人間には2つの目があり、厳密に言えば光は右目と左目に異なるタイミングで到達します。
そのため脳の認識力は別として、右目と左目に到達する光の時間差を考慮した場合は、上の図のように自転車がダブって見えます。