トカゲの凍結精子はカフェインで活性化する!? 「カフェインが爬虫類の保護に役立つ」

animals_plants

アーガスモニター(Varanus panoptes)/Credit:commons/wikipedia
point
  • オーストラリアに生息する巨大トカゲは絶滅危機にある
  • トカゲ精子の凍結・解凍は種の保護に繋がる
  • 解凍後の精子にカフェインを加えることで、精子が活性化。動きまわる元気な精子を回収できる

絶滅危惧種の精子を保存することは、種の保護に繋がります。

しかし、凍結保存した精子が解凍後にも元気だとは限りません。

この点、オーストラリア・マッコーリー大学の生物科学者であるサイモン・クラウロー氏ら研究チームは、トカゲの精子を凍結・蘇生させる新しい技術を開発しました。

彼らは精子にカフェインを与えることで、解凍後の活性化に成功したのです。

トカゲの精子を凍結して絶滅回避

近年、アーガスモニター(Varanus panoptes)と呼ばれる巨大トカゲは絶滅の危機に瀕しています。

その原因は、捕食者であるオオヒキガエル(Rhinella marina)の増加にあります。

彼らがトカゲたちの生息地に移動してきたため、生態系全体が甚大な影響を受け、アーガスモニターの個体数は97%も減少してしまいました。

そのため研究者たちは、精子の凍結保存によってトカゲたちを守ることにしたのです。

凍結保存後のトカゲ精子/Credit:Simon Clulow

トカゲの精子は液体窒素(約-196℃)に浸すことで凍結保存され、その後、35℃のぬるま湯で解凍されました。

この凍結保存の際に役立つのが「凍結保護剤」です。

凍結保護剤にはいくつか種類がありますが、実験の結果、一般的な凍結保護剤であるジメチルスルホキシド(DMSO)が有効だと判明。

DMSOは細胞の脱水を促進させ、氷の結晶が細胞内に形成されるのを防ぎます。これにより精子は凍結中に氷の結晶で引き裂かれることがありません。

これらの成果は非常に有望なスタートとなりました。しかし、ある問題も生じました。DMSOは解凍後の精子の運動を大きく制限してしまうのです。

同様の方法で哺乳類や鳥類の精子サンプルを凍結・解凍したとしても、元気に泳いでいる精子を大量に回収できます。しかし、トカゲなどの爬虫類には通用しなかったのです。

カフェインはトカゲ精子の目覚ましになる?

ここで研究者たちが用いたのは「カフェイン」です。

カフェインなどのホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤は、心不全の治療や心筋収縮力の向上に用いられており、精子の環状アデノシン一リン酸(cAMP)細胞濃度を増加させることが可能。

そしてcAMPは細胞内の酵素をリン酸化し、活性化します。

爬虫類の精子は、運動性・代謝調整に関するリン酸化媒介細胞構造を持っている可能性があり、カフェインにより運動性が活性化すると考えられます。

この考えをもとに、研究チームは解凍後の精子にカフェインを加えました。

その結果、精子は活性化し、泳ぎまわる元気な精子が大幅に増加。これにより凍結した精子細胞の半分以上を回収することに成功したのです。

運動しているトカゲ精子の割合。カフェインを加えることで大幅に運動性が向上している。(左)凍結前 (中)DMSO (右)別の凍結保護剤グリセロール/Credit:Simon Clulow

この研究論文の同著者であるニューカッスル大学・環境生命科学部のクラウン・キャンベル氏は「凍結したトカゲの精子は、私たちと同じように朝のコーヒーを飲んで動き出すことが分かったのです」と述べました。

この新しい技術は、世界中の爬虫類の保護に役立つことでしょう。

特にオーストラリア北部では依然として、オオヒキガエルの進行による生態系の荒廃が見られます。

保存技術とカフェインによる活性化を用いるなら、遺伝的多様性を回復させることができるでしょう。

この研究は6月22日、「Conservation Physiology」に掲載されました。

A model protocol for the cryopreservation and recovery of motile lizard sperm using the phosphodiesterase inhibitor caffeine
https://academic.oup.com/conphys/article/8/1/coaa044/5850615

「どっちに進化するか迷ってるのかも」卵生と胎生が同時にできる地球上で唯一のトカゲ

朝のコーヒーはあなたの脳にどう影響を与えるのか「朝10時以降がおすすめ」

reference: phys / written by ナゾロジー編集部
ナゾロジーは皆さんの身近にある”素朴な疑問”を解決する科学情報メディアです。
最新の科学技術やおもしろ実験、不思議な生き物を通して、みなさんにワクワクする気持ちを感じてもらいたいと思っています。
Nazologyについて
記事一覧へ
あわせて読みたい

SHARE

TAG