ブラックホールからエネルギーを取り出せることが証明される!

space 2020/06/25
Credit:depositphotos
point
  • かつてロジャー・ペンローズは、ブラックホールの回転からエネルギーを取り出せる可能性を示した
  • 70年代にこの効果を実験で確認する方法が提案されたが、実現は難しく思考実験に留まった
  • 新たな研究は、音波を使った実験で、半世紀越しにペンローズの予想が正しかったことを証明した

ブラックホールは非常に大きな星が超新星を起こした際にできる時空の穴で、光さえ逃れられない巨大な重力源です。

このすさまじい重力の他に、ブラックホールは光速に近い驚異的な速度で回転しているという特徴があります。

1960年代、数学者のロジャー・ペンローズは、このとてつもないブラックホールスピンからエネルギーを取り出せるのではないか、という提案をしました。

永久機関は作れないのか? という議論もありますが、宇宙は人類文明には使い切れないとてつもないエネルギーを持つ天体で溢れています。

ブラックホールからエネルギーが取り出せるとしたら、未来文明はほとんど永久にエネルギー問題を心配しなくて済むようになるでしょう。

これを真面目に検証した実験が行われ、その結果が科学雑誌『Nature Physics』に掲載されています。

ペンローズ過程

ペンローズが考えたのは、ブラックホールの事象の地平面の外側にある、ねじれた時空領域「エルゴ球」からエネルギーを取り出すというもので、ペンローズ過程と呼ばれています。

ブラックホール周辺の領域。/Credit:Wkipedia

この考えでは、ゴミを乗せたシャトルがエルゴ球でゴミを投棄し、その後エルゴ球から回収されれば、捨てた質量がエネルギーに変換されて、ブラックホールから取り出せるとされています。

その後、相対論研究者のキップ・ソーンは極めて発展した文明ならば、ブラックホールの周りに都市を築いて、ゴミを捨てることでエネルギーを得ることができる、と発表しました。

これはゴミ問題とエネルギー問題を一挙に解決できる、と驚かれましたが、実際確認することは不可能な理論でした。

ペンローズ過程が示すブラックホールを利用したゴミ捨て発電。/Credit:Amplification of twisted sound waves,ExtremeLight Group University of Glasgow

いまいち、どういうことかイメージできないのは、ペンローズが数学者であり、これが計算上の理論だからです。この方法では、実際どうやってエネルギーのやり取りをするのかは、具体的に示されていません。

ペンローズのこの考えは本当に正しいのでしょうか? 多くの人々が実際に検証してみたいと考えました。

しかし、問題はどうやってこの効果を実験で確認するのか? ということです。

実際ブラックホールへ行って実験するわけには行きません。類似したプロセスを地球上で検証する方法が必要になってくるのです。

ペンローズ過程は地球で確認できるのか?

その方法について考案したのが、ソビエト連邦の物理学者ヤーコフ・ゼルドビッチです。

70年代初め、ゼルドビッチは金属シリンダー(円柱)にねじれた光を照射したとき、反射する光はエネルギーを得て増幅されるという予想を発表しました

ゼルドビッチの考えた回転シリンダーへの光照射。シリンダーの回転が十分ならば反射する光はエネルギーが増加している。/Credit:Amplification of twisted sound waves,ExtremeLight Group University of Glasgow

これは概念的にブラックホールの回転からエネルギーを取り出す、ペンローズ過程と同じ効果を説明しています。

ゼルドビッチの理論は、回転シリンダーに光を当てるだけなので、地球上でも実験は可能です。

ただこの理論では、シリンダーの回転数が照射される光の周波数より大きくなければならないという厳しい制約がありました。

光の周波数を超える回転数となると、それは秒速10億回転を超えなければなりません。これはとても実現できるものではありませんでした。

そのため、彼の理論も結局は思考実験で終わってしまいました。

そこで今回の研究チームの出番となります。彼らはこのゼルドビッチの実験を、音波で代用する方法を発見したのです。

音波は光よりもはるかに周波数の低い波なので、実際に実験することができます。

彼らはゼルドビッチのねじれた光を音で再現するために、リング状にスピーカーの並んだ実験装置を作りました。

実際の実験装置。/Credit:University of Glasgow

ここから発せされたねじれた音波は、回転する吸音材に照射されます。

この回転吸音材を抜けてきた音波をマイクで拾うと、音波は増幅されていたのです。

今回の音波による実験。回転速度が十分なら音波は増幅される。/Credit:Amplification of twisted sound waves,ExtremeLight Group University of Glasgow

これはドップラー効果に似た現象が原因だといいます。

論文筆頭著者Marion氏は次のように説明しています。「回転ディスクが十分に速い場合、音波は正の周波数から負の周波数へ変化します。それは回転体の表面からエネルギーを奪うのです。

この実験は、宇宙のブラックホールとはかけ離れた別物に見えますが、実際はペンローズ過程の地球上で実行可能な置き換えだと、研究者は述べています。

この実験では音波が30%増幅していることが確認されました。これはペンローズのブラックホールからのエネルギー抽出と同等の効果です。

半世紀越しでペンローズの理論は実験で確認されました

これは遠い将来、ブラックホールから無限のエネルギーを吸い上げる複雑な社会が実現可能かもしれないことを示しています。

果たして、未来にはブラックホール発電所が浮かぶ宇宙なんて光景があるのでしょうか?

この研究はグラスゴー大学の研究者Marion Cromb氏を筆頭とした研究チームより発表され、論文は科学雑誌『Nature Physics』に6月22日付けで掲載されています。

Amplification of waves from a rotating body
https://www.nature.com/articles/s41567-020-0944-3.

【編集注 2020.06.27 22:30】
記事内容に一部誤字があったため、修正して再送しております。
reference: vice, University of Glasgow/ written by KAIN
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