宇宙に羽ばたくナゾ謎の影「バットシャドウ」の正体とは?

space 2020/06/30
若い星HBC672とそれを取り巻く反射星雲でできた影「バットシャドウ」/Credits: NASA, ESA, and STScI
point
  • ハッブル宇宙望遠鏡が2度に渡り撮影した「バットシャドウ」は、羽ばたいていることがわかった
  • これは若い星をチリとガスの円盤が歪んだ形で取り巻いているためと考えられている
  • 新たな研究はこの円盤の歪みが、180日周期で回る原始惑星が原因の可能性を指摘している

NASAのハッブル宇宙望遠鏡は、まるでコウモリが翼を広げたような奇妙な影を1400光年彼方の宇宙で発見しました。

この天体は404日後、再度観測されましたが、なんとそれは以前観測されたときと、影の位置が変わっていたのです。

コウモリの影のように見えることから「バットシャドウ:Bat Shadow」と名付けられたこの天体は、なんと驚いたことに本当に宇宙で羽ばたいていたのです。

バットシャドウの影の長さは約1万7千天文単位(太陽系の200倍 ちなみに太陽から冥王星は39天文単位)もある、非常に巨大なものです。

一体なぜ、宇宙にこんな途方もない大きさの影ができるのでしょうか? そしてなにが、そんな巨大な影を羽ばたかせているのでしょうか?

宇宙に影ができる理由

The Bat-Signal/Credit:en.wikipedia

なぜ宇宙にコウモリの様な影ができるのでしょう? 宇宙人がバットマンに助けを求めているのでしょうか?

バットシャドウの中心にあるのは、誕生から200万年ほどしか経っていない非常に若い星「HBC672」です。

若い星の周りでは、吸い寄せられたチリやガスが円盤状に取り囲んでいます。

これは原始太陽系と同様の状態で、この巻き込んだチリやガスがやがては惑星を形成し、1つの星系へと成長していくと考えられています。

太陽系ができるまで。/Credit:国立博物館

HBC672は、非常に初期の段階にある星のため、原始惑星円盤がまるで円筒形のランプシェードのように周囲を覆っているのです。

このため星の光は円盤の上部と下部の極方向からしか出られません。

Credit:Dimitri Houtteman/Unsplash

綺麗に影が観測できるのは、この星の周りの広い範囲を反射星雲が覆っているためです。

反射星雲とは星に照らされた光を反射して輝く星雲のことです。対照的な存在として、自ら輝く輝線星雲というものも存在します。

星が非常に高温の場合、周囲のガスを電離させて輝線星雲を作り出しますが、今回の場合はそこまで星が高温ではなかったのでしょう。

こうした反射星雲の存在によって、上の画像のように壁紙に光が反射するように、光と影のコントラストが地球からでもはっきり見えたのです。

なぜ羽ばたくのか?

Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center

バットシャドウが最初にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたのは、2017年でした。その約1年後の2018年に再度撮影すると、その影の位置が変わっていたことがわかりました。

現在のところ2枚しか撮影画像がないため、微妙な変化に見えますが、1万7千天文単位(約0.24光年)のサイズのものが羽ばたくように動いているというのは驚くべきことです。

なぜ、バットシャドウの影は動いているのでしょうか?

これはHBC672を取り巻く原始惑星円盤が、ポテトチップスのように歪んだ形をしているためだと考えられています。

Credit:HubbleESA,Animation: The Bat Shadow’s “Flapping” Motion Explained

では、一体なぜ円盤はゆがんでいるのでしょうか?

1つの説としては、HBC672が連星であり、低質量・低光度の伴星を持っているためだと考えられています。

しかし、今回、バットシャドウの歪みについて新たに研究を発表したのチームは、その可能性が低いと考えています。

もし伴星が存在しているとしたら、その伴星は観測されているよりも円盤の材料をもっと飲み込んでしまっているはずだからです。

チームが新たに提案する原因は、傾いた軌道で回る原始惑星の存在です。

ディスク平面に対して傾いた軌道で回る惑星が、ディスクの反りを生んでいる可能性がある。/Credits: NASA, ESA, and A. James and G. Bacon (STScI)

チームの推測では、ディスク平面から非常に傾いた軌道を回る原始惑星があった場合、影を羽ばたかせるような反りを生み出すとしています。

この原始惑星は、少なくとも180日周期で星を回り、太陽と地球とほぼ同程度の距離にあると考えられています。

しかし、現状バットシャドウは2回しか観測されておらず、影の中心にある円盤はあまりに小さいため見ることができません。

正確な原因を特定するのは、難しい状況です。

しかし、もしこれが軌道上の惑星によって引き起こされているならば、羽ばたきは一定間隔で鼓動のように繰り返されているはずであり、その周期性は今後の観測で発見できる可能性があります。

今後稼働するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も、こうした観測を安定して行えるため、この特殊な天体の観測から、原始太陽系における惑星形成の流体力学を学べる可能性があるといいます。

宇宙に羽ばたくバットシャドウ、まだまだ宇宙には不思議な天体が溢れているようです。

この研究は、宇宙望遠鏡科学研究所の研究者Klaus M. Pontoppidan氏を筆頭とする研究チームより発表され、論文は天文学に関する学術雑誌『The Astrophysical Journal』に6月25日付で掲載されています。

Variability of the Great Disk Shadow in Serpens
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab91ae

ブラックホールからエネルギーを取り出せることが証明される!

reference: NASA,sciencealert/ written by KAIN
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