中国で新型豚インフルエンザウイルスがヒトにも感染すると判明! 「ヒトからヒトへの感染は未確認」

medical 2020/07/01
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  • 新型の豚インフルエンザウイルス(G4ウイルス)が中国の養豚場で発生した
  • G4ウイルスの豚からヒトへの感染も確認された
  • 人類をG4ウイルスから救うには豚へのワクチン処理が必要

アメリカと中国の研究チームは、中国全体に広がった新型豚インフルエンザウイルス(G4ウイルス:G4 EA H1N1)を特定し、新たなパンデミックの可能性があると発表しました。

このG4ウイルスはヒト型受容体に結合し、ヒト気道上皮細胞で高い増殖率を示します。

またG4ウイルスは既存のインフルエンザワクチンが効きにくいことから、人類の大半はG4ウイルスに対する集団免疫力を持っていない可能性が高いとのこと。

さらに血清調査では、中国の養豚場労働者の10.4%がG4ウイルスの検査に陽性であることが判明しました。

G4ウイルスは現在、ブタからヒトへの感染のみが見られ、ヒトからヒトへの感染は確認されていませんが、豚飼育場の近隣住民にも感染者が出始めています。

G4ウイルスとはどのようなウイルスなのでしょうか。

G4ウイルスは2016年に現れた新型であった

Gウイルスは複数の種に感染していたウイルスの混合型の一種である/Credit:PNAS

21世紀になってから、インフルエンザはたびたびパンデミックを起こしています。

特に2001年のパンデミックでは6億人の感染者が発生しました。

そのため研究チームはウイルスの発生源として疑われている豚から、2011年から2018年の間に3万個のサンプルを採取して分析を行っていました。

中国の養豚場や動物病院にいた豚からサンプリングが行われたのですが、これは中国に全世界で飼われている豚の半数が存在していると知られているからです。

その結果、179種類の豚インフルエンザの存在が確認され、そのうち165種がユーラシア鳥インフルエンザA(EA H1N1)型であることがわかりました。

これは、中国の豚集団で流行している主なウイルス型が、既知の鳥インフルエンザAであることを示します。

しかし2016年以降は様子が異なり、豚集団でG4ウイルス(G4 EA H1N1)と命名された新型のインフルエンザウイルスの発生が確認されたそうです。

研究チームはそのG4ウイルスが生き物にどのように影響するかを確かめるため、ウイルスをヒトの培養細胞とフェレットに感染させて経過を観察しました。

結果、G4ウイルスは2001年に6億人に感染したインフルエンザといくつかの共通する特徴があることがわかりました。

G4ウイルスは動物のSAα2,6Gal受容体に結合する能力を持ち、ヒトの気道上皮細胞で爆発的に増殖するだけでなく、フェレットどうしの間では高い伝染性(空気感染)が確認されたのです。

そのため研究チームは、養豚場の労働者300人に対してGウイルスの感染によって作られる抗体の有無を判定する検査を実施しました。

結果、養豚場労働者の10.4%が抗体を持っていることが分かりました。

また、現在G4ウイルスのヒトからヒトへの感染は確認されていませんが、養豚場の近隣に住む住民にも感染歴があったため警戒が必要です。

豚はウイルスを混合する

なぜ豚にこのような能力があるのかはわかっていない/Credit:ナゾロジー編集部.(鴨)depositphotos.(豚)depositphotos

近年の研究により、インフルエンザウイルスは、豚の体内で進化と変異をすることがわかりました。

豚にヒトや鳥のウイルスが2種類以上感染した場合、再集合と呼ばれるプロセスが開始され、ウイルス同士の間で遺伝子の交換や混合が行われるのです。

なぜ豚の細胞が再集合を促すのかはわかっていませんが、結果として新型のウイルスが誕生し、免疫能力のない動物や人間に感染を引き起こします。

G4ウイルスを豚の内部に留めることが重要

ヒトからヒトに感染する変異を防ぐために、養豚場で働く労働者の防疫措置が必要になる/Credit:(左)depositphotos.(右)depositphotos

研究チームは、豚間での感染が確認されているG4ウイルスを豚の外に出さないことが重要だと述べています。

現在のG4ウイルスは豚同士の感染が主流であり、ヒトに感染しても他のヒトに感染しない「行き止まり感染」の状態にあります。

しかし豚からヒトへの感染が継続的に続けば変異が起きて、ヒトからヒトへの感染能力をもったウイルスが誕生するかもしれません。

そしてG4ウイルスの感染力や伝染力の強さが引き継がれた場合、新たなパンデミックが発生する可能性があります。

よって、研究チームが提唱する予防法は、豚とヒトの接触を可能な限り制限するというものです。

養豚場の換気や労働者の防疫装備の着用義務化などがそれにあたります。

同時に豚から野生動物への感染も防がなければなりません。

豚から鳥などの野生動物に感染したウイルスが、再び豚の体で混合と再集合を起こしてしまった場合、変異が生じて新たな問題になる恐れがあるからです。

しかし、どちらも簡単には達成できません。

そのため、研究者は最終的には豚のインフルエンザを治療する豚専用のワクチンを開発する必要もあると述べています。

パンデミックを防ぐためには、まず豚を救うことが重要なのかもしれません。

研究内容は中国農業大学のホンレイ・サン氏らによってまとめられ、6月29日に学術雑誌「PNAS」に掲載されました。

Prevalent Eurasian avian-like H1N1 swine influenza virus with 2009 pandemic viral genes facilitating human infection
https://www.pnas.org/content/early/2020/06/23/1921186117

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reference: inverse / written by katsu
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