ブラックホールの1日の食事量は太陽1個分! 急成長のナゾに迫る

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初期宇宙のクエーサーのイメージ 。画像は「J1120+0641」を描いたもので今回の研究とは異なる。/Credit:ESO/M. Kornmesser
point
  • 太陽質量の340億倍という超大質量ブラックホールの食事量が明らかになった
  • このブラックホールは初期宇宙にあり、1日に太陽1個分に相当する質量を貪り食っている
  • 宇宙誕生から12億年という期間で、これほど巨大なブラックホールが形成される原理は依然不明

1日の食事の量は大きな生き物ほど大量になっていきます。

動物園のサイトなどを除くと、ゾウは1日に200kg近い食事をし、キリンは70kg近い食事をすると書かれています。

こういう素朴な話でも結構驚きですが、では超大質量ブラックホールの1日の食事量はどのくらいでしょうか?

ブラックホールはもちろん生き物ではありませんが、天文学の話題では、なんでも貪るように吸い込むブラックホールは暴食モンスターとしてよく表現されます。

「SMSS J215728.21-360215.1(略称:J2157-3602)」は、太陽の340億倍という質量を持つモンスターブラックホールです。

新たな研究では、このモンスターが一体1日にどのくらい食事をするのかを調査しました

それによると、なんとこのブラックホールは1日に太陽1個分もの物質を飲み込んでいるというのです。

宇宙のモンスターはまさに桁違いです。

初期宇宙の超大質量ブラックホール

クエーサーの中心活動銀河核のイメージ。/Credit:ESO

超大質量ブラックホールというカテゴリーは、太陽の100億倍以上の質量を持つブラックホールに対して使われます。

「J2157-3602」は太陽の340億倍という質量があり、超大質量という呼び名に相応しいブラックホールです。

このブラックホールは、地球から125億光年という距離に見つかりました。

これは宇宙誕生(ビッグバン)からおよそ12億年程度の宇宙にすでに存在していたことを意味しています。

ブラックホールは星の崩壊から生まれ、融合や天体を飲み込むこと進化成長していくというのが現行理論での考え方です。

この考え方でいくと、年齢が現在10%程度しかなかった宇宙に、これほど巨大な超大質量ブラックホールが存在した理由は説明ができません。

そのため、我々の宇宙の観測の仕方や遠方宇宙の解釈に決定的な誤りがあるか、ブラックホールの形成理論が不十分ということになります。

ブラックホールの形成進化について、我々が十分に理解できていないとなると、それはひたすら特殊な天体を観測してその特性を見極めていくしかありません。

「J2157-3602」はクエーサーに分類される天体であり、その中心核です。そして既存のクエーサーの中でももっとも強力で、もっとも急速に成長しているブラックホールの1つでもあります。

今回の研究は、このモンスターブラックホールを対象にして、どのように急成長しているかを調査したのです。

修正されたデータ

この超大質量ブラックホールは2018年初頭に発見が発表されましたが、その時点での質量は太陽の200億倍という推定でした。

しかし、今回の研究はその正確な質量やサイズを改めて調査し、太陽の340億倍という質量であったことを明らかにしました。

この質量は、天の川銀河の中心を支える大質量ブラックホール「いて座A*」の8000倍です。「いて座A*」がこのサイズまで成長するためには、銀河内の天体の3分の2を貪り食らう必要があります。

ブラックホール近く、事象の地平面のイメージ。/Credit:ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser

さらに、シュバルツシルト半径(事象の地平面の半径)は約670天文単位(AU)ということもわかりました。

天文単位は地球と太陽の距離を基準とした宇宙の距離単位で、太陽から冥王星までの距離は約39.5AUになります。

それを考慮すると、捕まったら光さえ逃れられない事象の地平面のサイズが半径670AUというのが、どれだけ途方もないサイズかイメージできるでしょう。

また、地球からの距離についても数千光年修正されました。これは全体の距離が約125億年離れているという事実から考えるとどうでも良さそうな修正に聞こえますが、わずかビックバンから12億年という初期宇宙の研究では、重要な修正なのです。

ブラックホールの食事

Credit:ESA/NASA, the AVO project and Paolo Padovani

ブラックホールは吸い込んだ物質をすぐに飲み込むわけではなく、自身の周囲を取り巻く降着円盤という形で塵やガスを捕らえています。

これらは事象の地平面の内側へ落ちたとき、ブラックホールのエサとして消費されることになります。

今回の研究では、そんなブラックホールの成長の糧ともなる質量の食事量も調査されました。

その結果「J2157-3602」は1日なんと太陽1個分の質量を食い尽くしていることがわかったのです。

そんな勢いで食事をしていたら、太陽の何百億倍もブクブクと成長してしまうのもうなずけます。

しかし、ブラックホールの吸い込む力は、巨大になるほど増加することになります。やはり初期宇宙にこれほど巨大なブラックホールが存在する理由については、未だに未解明の問題です。

また、超大質量ブラックホールは他にも存在しています。

「Abell 85」銀河団の中心にある「Holmberg 15A」という銀河の中心ブラックホール「Holm 15A *」は太陽質量の太陽の400億倍といわれており、クエーサー「TON 618」の中心ブラックホールは太陽質量の660億倍と言われています。

超大質量ブラックホールはまだまだたくさんあるのです。

これらを理解するのはさらに困難だといいます。

ブラックホールの形成と成長には、まだまだ我々の理解が及ばない秘密が数多く潜んでいるようです。

この研究は、オーストラリア国立大学の天文学者Christopher Onken氏を筆頭とした研究チームより発表され、論文は英国の天文学の学術雑誌『王立天文学会月報』に6月30日付けで掲載されています。

A thirty-four billion solar mass black hole in SMSS J2157–3602, the most luminous known quasar
https://doi.org/10.1093/mnras/staa1635

ブラックホールに吸い込まれても生還した珍しい星を発見

reference: sciencealert/ written by KAIN
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