
紀元前8500年頃の新石器時代初期、人類の芸術のモチーフが「動物」から「人間」へと移っていきました。
それ以前は、壁画にせよ彫刻にせよ動物が多くを占めていましたが、この時期から人間に焦点を当てた作品が急増します。これは一種の芸術革命でした。
その一方で、これほど劇的なシフトがなぜ起きたのかは分かっていません。
ところが今回、中東の国ヨルダンで発見された人型の石器により、芸術革命が起きた理由が初めて示唆されました。
そこには、初期人類の「死者への意識」と「精巧な埋葬形式の増加」が関係していたようです。
研究は、スペイン科学研究高等評議会などにより報告されています。
人型石器は埋葬用の供え物だった
人型石器が見つかったのは、ヨルダン西部のザルカ渓谷にある「カレイシン遺跡」です。

石器は、埋葬された7体の遺骨やその他、石から作られたナイフやボウルとともに発見されました。
遺骨の中には、おそらく儀式か埋葬の一環として、骨格の一部や頭蓋骨が取り除かれたものが見られます。また、他の場所にあった遺骨を掘り返して、この地に埋葬し直されたものありました。
このプロセスは、数年にわたり複数回繰り返されたようで、埋葬や儀式が複雑化した可能性があります。
同じ場所で見つかった人型石器は、矢尻や火打ち石として使われた可能性もあるため、石器の形状や表面を入念に調べました。
その結果、石器はすべて紀元前8000年頃に同時に作られたもので、意図的に人型がデザインされており、また、道具として使った形跡が一切ないことが判明しました。
研究主任のユアン・イバニェス博士は「埋葬用の供え物として作られたと見て間違いない」と指摘します。