競争に強い種がモテるために「ムダの進化」をすることで、自然界のバランスは保たれていた!?

biology

credit:東北大学
point
  • 自然では1つの生息地に多様な生物種が共存しているが、弱い種がなぜ競争で淘汰されないか謎だった
  • 新たな研究は鮮やかな模様など、モテるための「ムダの進化」が異種間の競争を緩和していると提案
  • 増え過ぎた競争に強い種は繁栄に繋がらない、ムダな形質にコストを割くことで、結果的に生物多様性の維持に貢献している

生物の中には、色鮮やかな模様を持っていたり、生活の邪魔になるんじゃないかと思えるほど角が巨大化した種が存在しています。

こうした進化のほとんどは求愛行動のためで、個体にとっては有利でも、種全体の増殖には貢献しません。

種の繁栄という観点から見れば、これらはすべて「ムダの進化」と言えるのです。

自然界は厳格な競争社会であるはずなのに、なぜそんな「ムダの進化」が起きるのでしょうか?

実はこの「ムダの進化」は、生態学でこれまで謎の多かった”1つの生息地で競争に弱い生物を含めて多様な種の存在が維持されている理由”と密接な関係を持っているかもしれないのです。

東北大学を初めとした複数の大学・研究機関からなる共同研究グループは、今まで結びつけて考えられることのなかった、「ムダの進化」こそが自然界で競争排除を起きにくくする要因だという、斬新な研究を発表しています。

なぜ多様な生物種が1つの場所に共存できるのか?

Credit:depositphotos

生態学の理論では、1つの生息地に多様な種が共存することは難しいとされています。

餌資源や生息場所が似通った種同士では、当然競争が起きます。その場合、もっとも効率よく進化した種が生き残り、それ以外の競争に弱い種を駆逐してしまう、というのが自然な流れだからです。

しかし、現実には非常にたくさんの生物種が同じ生息地に共存しています。これは生態学の理論予測に合わない状況です。

この問題は1959年アメリカの生態学者George E. Hutchinsonが提唱したものですが、60年以上経っても未だ生態学の未解決問題として残っています。

この問題解決にユニークな提案を行ったのが、今回の研究です。

その内容は、競争に強い種は、メスにモテるために余計なエネルギーを浪費するようになることで、他種族への競争排除の圧力を弱めている、というものです。

研究グループが目をつけたのは、クジャクの派手な羽根や、鳥や昆虫、カエルなどに見られる独特の歌声です。

これらは主に求愛行動のため獲得された「モテ形質」と呼ぶべき特徴で、種の繁栄や生存のために有利な進化ではありません

研究グループは、このムダの進化が起きるプロセスと、競争関係にある異なる生物種の個体数変動プロセスを同時に考慮した、数理モデルを構築しました。

このモデルではムダの進化が起きる場合と起きない場合で2種の生物の生存状況が比較されました。

すると競争に強い種の個体数が増えるほどムダの進化が生じやすくなり、結果的にムダの進化が存在するパターンでは、競争に弱い種が排除されなくなったのです

モテるための努力が平和を呼ぶ

Credit:depositphotos

競争に強い種は個体数が増加していくため、結果的に同種間のオスでメスをめぐる競争が激化していきます。すると、その生物種は「モテ形質」を進化させやすくなります。

このモテるための進化は、個人にとっては重要かもしれませんが、種にとってはなんの意味もなく、個体数の増加にはほとんど貢献しないものです。

これは、他種族から見れば競争にはなんの関係もないムダなエネルギーを浪費している状態です。

生物は限られた資源をどこに割り振るか、ということで多種族との競争を有利に進めていきます。

それを繁殖や成長に割り振らず、モテ形質の進化に投資するようになれば、結果としてその種は増えにくくなります

逆に競争に弱い種が個体数を減らしていくと、モテ形質獲得というムダな投資は控えられて、増殖速度が速くなります。

個体数の増減に合わせておきる、この増殖を取るか装飾を取るか、という進化の選択が、結果として強い種が増えすぎること、弱い種が減りすぎることを抑制し、共存状態が維持されるようになるのです。

多種共存を促進する進化

研究グループは、こうしたモテ形質の進化以外にも、多種共存を促進する「ムダの進化」を発見しました。

1つは「裏切り行動」と呼ばれる進化です。

例えば、アリの様な社会性の高い生物は、ワーカーと呼ばれる個体が、繁殖に専念する個体をサポートすることで集団全体の生産性を高めています。

しかし、個体数が増えていくと、ワーカーの中に社会に対する「裏切り行動」を取る個体が現れてきます。

この裏切りワーカーは、集団のために労働することをやめて、自ら繁殖行動を始めるのです。

これは自らの利益にはなりますが、集団の利益には貢献しないため、モテ形質と類似した進化ということができます。

また、イトトンボの見せるオスがメスに執拗に迫る「無理強い行動」、オサムシなどが後尾の際メスに外傷を与える行動、オスがメスをめぐって起こす闘争行為、さらにオスの出生率があがるなども、同様の効果があるムダの進化だと理論的に示されました。

Credit:depositphotos

メスを惹きつけるための立派な羽根、特徴的な歌声、ダンス、立派な角、または社会への「裏切り行動」、こうした特性は、個人にとっては有利なので進化します

けれど、これらの進化は生物種の存続や繁栄には貢献しない、集団にとってエネルギーの浪費となるムダな進化です。

人間に当てはめて見てもなんだか心当たるものがある気がしますが、しかし、こうしたムダな進化は、ムダであるからこそ、種間での競争を弱めるために働き、結果的に多様な種が共存できる状況を生み出しているのです。

人間社会の中にも、社会の利益にならない一見ムダで身勝手な活動をする人たちが大勢いますが、それも増え過ぎた人間を調整するための、自然の作用なのかもしれません。

この研究は、オーストラリアのクイーンズランド大学山道真人氏を筆頭著者として、東北大学、京都大学、東京大学など複数の大学、研究機関の研究者からなる共同研究グループから発表され、論文は生物学などを扱う科学雑誌『Trends in Ecology & Evolution』電子版に掲載される予定です。

絶滅種の「代役」を立てれば生態系が回復すると判明!麻薬王のカバがきっかけ

reference: 東北大学/ written by KAIN
みなさんのおかげでナゾロジーの記事が「Googleニュース」で読めるようになりました!
Google ニュースを使えば、ナゾロジーの記事はもちろん国内外のニュースをまとめて見られて便利です。
ボタンからダウンロード後は、ぜひフォローよろしくおねがいします。

Google Play で手に入れよう
apple store

あわせて読みたい

SHARE

TAG