寿命延長薬は子孫をとるか寿命をとるかの選択を迫る/Credit:depositphotos
- 生殖は身体のホルモンバランスを一時的に大きく崩す
- ミフェプリストンには崩れたバランスを取り戻し妊娠をキャンセルするバランサー能力があった
- しかしバランスを保っている限り子孫はうまれない
エボラ出血熱を治すために作られたレムデシビルが新型コロナウイルスの治療に転用可能だったように、開発された薬に目的外の効果がみつかることがよくあります。
今回、人間の妊娠初期の中絶に使われるミフェプリストンと呼ばれる薬が、進化的に大きく異なる2つの種(ショウジョウバエのと線虫)の生殖能力を奪う代わりに、寿命を延ばすことが判明しました。
何かを得るためには何かを失わなければならない…とは良く聞きます。
寿命延長の等価交換として、生殖能力は見合った対価なのでしょうか?
不死への道は一点突破
研究を主導したランディス博士は老化にかかわる分子を探求していました。
ほとんどの多細胞動物(目に見える大きさの動物)には寿命が存在し、時間と共に老化して死んでいきます。
ランディス博士は、この寿命と老化の仕組みはあらゆる多細胞細胞動物で共通な一方で、もし一つの種でも寿命を延長できたのならば、人間を含むあらゆる動物にも同じことが可能だと考えていました。
ランディス博士が、その最初の一種として扱っていたのは、遺伝学のモデル生物として長い歴史のあるショウジョウバエでした。
ランディス博士はショウジョウバエに様々な種類の化学物質を食べさせ、寿命に変化がうまれるかを調べていました。
そして今回、ミフェプリストン(RU-486)と呼ばれる化学物質に劇的な寿命延長効果を発見したのです。
ミフェプリストンは一般に、人間の女性のための中絶薬として使われているほか、ほとんどの癌とクッシング病として知られるホルモン異常の治療薬としての効果があります。