子供を出産するオスのタツノオトシゴは、受精卵に栄養を与える「胎盤」を持っていた!

animals_plants 2020/07/27
Credit: pixabay
point
  • タツノオトシゴはオスが出産を担当する
  • オスは「育児のう」という袋の中で、受精卵を保護し、成長させる
  • 「育児のう」は、子供に栄養源を送る「胎盤」のような働きを持つことが判明

世の男性陣には、身重の奥さんの苦しみを目にし、「自分が代わってあげられたら…」と思っている方もいるかもしれません。

しかし、現在のところ、生物の中でそれができるのは「タツノオトシゴ」だけです。

タツノオトシゴの繁殖形態はめずらしく、産卵はメスの仕事ですが、出産はオスが担当します。

オスの体内には「育児のう(brood pouch)」という袋があり、そこで卵を保護して稚魚を孵化させるのですが、育児のうについては、まだほとんどが謎に包まれています。

しかし今回、オーストラリアのシドニー大学、ラ・トローブ大学の最新研究により、育児のうの役割について新たな事実が発覚しました。

なんと父親となるオスは、出産を担当するだけでなく、育児のうで子供に栄養を与える「胎盤」のような働きもしていたのです。

オスが出産を担当!その仕組みは?

タツノオトシゴは、オスの求愛が成功すると、お腹辺りにある育児のうを開き、そこにメスが輸卵管を差し込んで、卵を移します。この時、同時に受精も行われます。

卵の移し替えは、休憩を挟みながら数時間繰り返され、最終的に40〜50個(種類によって数が異なる)がオスの育児のうに移されます。

最大1ヶ月間、袋の中で受精卵を保護し、その後、孵化した稚魚を育児のうの口からポンッポンッと産み出すのです。

出産の際、オスは陣痛を思わせるような痙攣を起こします。

「育児のう」では何が起きている?

「ポットベリーシーホース」、お腹(育児のう)が大きいのが特徴

その一方、育児のうが、いかにして受精卵の成長を促しているのかはよく分かっていません。

一般に、受精卵の成長には2つの方法があります。

1つは「卵黄栄養依存 (レシトロフィー)」で、受精卵にあらかじめ存在する卵黄を消費して成長する方法。もう1つは「母体栄養依存(マトロトロフィー)」で、母親の胎盤から直接栄養分をもらって成長する方法です。

多くの生物は、発生の初期段階でこの2つを組み合わせており、卵黄を消費してから、母胎の栄養素へと移ります。

研究チームは、今回、「ポットベリーシーホース(Hippocampus abdominalis)」という種類を対象に、育児のう内での「受精卵」と「孵化した稚魚」の乾燥重量(水分を除いた質量)を比較することで、どちらの栄養源に依存しているかを調べました。

オスは子の成長を促す「母胎」の役割も果たしていた

その結果、稚魚の乾燥重量は、育児のうにいる間、ほとんど変化していないことが判明しました。

調査によると、受精卵の成長は、卵黄の消費から始まっていたので、稚魚の乾燥重量は卵黄の消費分だけ減少するはずです。

矢印で示した部分が「卵黄」/Credit:Comp. Physiol. B, 2020

しかしこれとは別に、受精卵と稚魚の脂質量を測定した結果、成長のプロセスで、脂質量の減少がほぼ起きていませんでした。これは、父親となるオスが、卵黄のなくなった後で、脂肪の形で栄養分の「おかわり」をわが子に与えていることを示します。

つまり、タツノオトシゴの稚魚は、多くの生物と同様、「卵黄栄養依存 」から「母体栄養依存」、正確に言うなら「父体栄養依存(パトロトロフィー)」に移行するということです。

オスが栄養を与えている方法までは説明できていませんが、育児のう内を調べると、受精卵が袋の壁にしっかり埋め込まれていました。

これは、育児のうが母親の「胎盤」のような機能を持ち、それを通じて栄養補給している可能性を示唆します。

育児のう内の受精卵/Credit:Comp. Physiol. B, 2020

このメカニズムを断定するには別の調査が必要ですが、それでもオスの育児のうに、栄養や酸素の供給能力および感染症などから子供を守る機能があるのは確かです。

タツノオトシゴのオスは、予想以上に出産の重要なプロセスを請け負っているのかもしれません。

研究の詳細は、7月2日付けで「Journal of Comparative Physiology B」に掲載されています。

Paternal nutrient provisioning during male pregnancy in the seahorse Hippocampus abdominalis
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00360-020-01289-y
reference: sciencealert / written byくらのすけ

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