ヘリオット・ワット大学(スコットランド)の最新研究により、大西洋北部で1万6000年前から生きている長老コンブが発見されました。
地球の最終氷期は約7万〜1万年前まで続いたので、このコンブは氷河期から生きていることになります。
また調査の結果、長老コンブたちは、氷河期の終わりに北極付近から逃げ出してきた「難民」だったようです。
長老コンブは「難民集団」だった?
研究チームは、大西洋北部に広がる14のエリアからコンブを採取し、DNA分析を行いました。その結果、3つの異なるDNA群が見つかっています。
1つ目は、北米大陸の東海岸に沿って生息する「アメリカ・カナダ群」、2つ目は、イギリスのスコットランド、アイルランド沖に生息する「北部ヨーロッパ群」、3つ目がフランス西端の沖合に生息する「ブルターニュ群」です。
そのうち、北部ヨーロッパ群とブルターニュ群が、約1万6000年前から生き残っている長寿のコロニーと判明しています。
しかし、スコットランドおよびアイルランド群のDNAは、ブルターニュ群より、高緯度の北極圏付近に生息する個体群に非常に近いものでした。
これについて、研究チームの海洋生物学者アンドリュー・ワント博士は、こう説明します。
「最終氷期の間、北部ヨーロッパの海は、北極付近まで広がる氷床に覆われていました。それが氷河期の終わりに溶け始めて後退したことで、コンブもそれに追随し、現在のスコットランドやアイルランド辺りに南下したのです。」
つまり、北部ヨーロッパ群は、寒さの厳しい北極圏から逃げてきた「難民」だったのです。