「ワームホール」の生み出す時空のさざ波を予測。 重力波検出器による発見を目指す

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離れた空間同士をつなげるワームホールのイメージ。/Credit:depositphotos
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  • 現状発見すらされていない理論上の存在ワームホールを発見する方法が考案された
  • 新たな研究はワームホールが生み出す特殊な重力波を予測しており、実際検出されれば存在が証明できる
  • この重力波は連星ブラックホールで、片方がワームホールだった場合、そこにBHが落ちることで発生する

超新星爆発、ブラックホール、ガンマ線バースト。宇宙には想像を絶する現象や天体に溢れていますが、人類はそのほとんどを観測して確認することに成功しています。

正直、もう人類が発見すらしていない未知の種類の天体なんて残ってないんじゃないかという気すらしてしまいますが、理論上存在するだろうと予測されながらも、未だに発見の糸口すらつかめていない天体はいくつも存在します。

暗黒物質も代表的ですが、SF作品でよく耳にする「ワームホール」も未発見の存在です。

ワームホールは「遠く離れた空間同士や異なる宇宙同士をつなぐトンネル」などと表現されています。

新たな研究は、そんなワームホールが重力波観測によって特殊な時空のさざ波として発見できるかもしれないと報告しています。

はたしてワームホールは現実に存在し、発見することは可能なのでしょうか?

ワームホールとは?

Credit:pixabay

ワームホールは離れた異なる時空間同士、または別の宇宙とつながるトンネルです。

見た目はブラックホールにそっくりだと考えられていますが、ワームホールの場合、吸い込まれた物質は強力な重力場の中に閉じ込められるのではなく、ワームホールの中を通り抜けて反対側時空間へ抜け出していくと考えられています。

そんな性質のため、SF作品ではワープ航法の原理であったり、別世界へ旅するためのギミックとして利用されたりしています。

これを聞く限りとても現実に存在するもののようには思えませんが、ワームホールは時空の曲率や、重力を説明する一般相対性理論によれば、理論上存在可能であるとされています。

ブラックホールも同じように一般相対性理論から理論上導き出されたもので、長い間現実には存在しないと言われてきました。

しかし、今ではブラックホールの存在を疑う人はいないでしょう。

ワームホールも観測技術が未熟なだけで、いずれは発見できる可能性があるのです。

特殊な重力波

現実に存在するかどうかは別として、もしあるとしたらどのように検出が可能かを想定することは非常に重要です。

現在ブラックホールの研究で大きな成功を収めているのが、重力波を捉えるレーザー干渉系重力波検出器による観測です。

重力波は時空を揺らすさざ波で、重力波観測では非常に重い2つ以上の天体が互いを回り合ったり、衝突したとき生み出される重力波を検出しています。

中心で質量の異なるブラックホールが回り合っている。右下が中央の拡大。/Credit:Max-Planck-Institut für Gravitationsphysik (Albert-Einstein-Institut),GW190412: Binary Black Hole Merger

今回の研究者である米国ヴァンダービルト大学の研究者William Gabella氏は、もし仮にワームホールが存在した場合、それが生み出す重力波がどのようなものになるかを考えました。

彼が想定したのは、地球から16億光年離れた宇宙に存在するワームホールです。もしその周りを太陽の5倍の質量を持ったブラックホールが周回した場合どうなるでしょう?

この場合、最初の見え方はただの連星ブラックホールになるだろうと予想されます。そのとき発生する重力波は、チャープと呼ばれるタイプの時間とともに周波数が増加する波形パターンになります。

チャープ信号の基本的な例。チャープは鳥のさえずりを意味する英語。/Credit:Wikipedia

では連星ブラックホールが融合するように、ブラックホールがワームホールへ落ちた場合、何が起きるでしょうか?

研究者の予想では、このときブラックホールの重力波はこの宇宙から突然消失し、第2の宇宙もしくは離れた時空へ移動します。第2の宇宙に出たブラックホールはまず回転が反転して外向きの渦巻きになり、その後もとの回転に戻ろうとします。

しかし、その勢いによって再び第1の宇宙へ戻って外向きの渦として顔を出します。

このとき重力波は、チャープと反対のパターンである「アンチチャープ」を生成し、その後またチャープに戻ります。そしてまた第2宇宙へと飛ばされ消失するのです。

このようにして、ワームホールに吸い込まれたブラックホールは重力波のエネルギーを失うまで、第1宇宙と第2宇宙の間で跳ね続けることになります。その間、この奇妙な重力波が観測され続けるだろうと予想されるのです。

このおかしな信号は単純な連星ブラックホールの衝突では発生しません。ワームホールが存在した場合にのみ見られるため、その証拠となるのです。

ワームホールは見つかるのか?

しかし現状、ワームホールが発見される可能性は低いと考えられます。

ワームホールは理論上は存在可能でも、現実として時空のトンネルを開いておくためには負の質量を持った物質が支柱の役割を果たす必要があると言われています。

そんな物質は当然発見されていません。

しかし、この奇妙な重力波はLIGO、Virgoといった現在稼働しているレーザー干渉計重力波検出器ならば検出可能だといいます。

今回の研究も、もしワームホールが存在した場合、どのように検出されるかを予想するもので、発見できると言っているわけではありません。

けれど人類は天体観測によってビッグバンで宇宙が始まったことを特定し、かつては理論上の存在でしかなかったブラックホールの撮影にも成功しています。

別の宇宙とつながるような時空のトンネルを発見する日も、近い将来やってくるのかもしれません。

Credit:depositphotos

この研究は、米国ヴァンダービルト大学の研究者William Gabella氏らによる研究チームより発表され、現在は未査読の状態でプレプリントサーバー arXiv上で公開されています。

The Sound of Clearing the Throat: Gravitational Waves from a Black Hole Orbiting in a Wormhole Geometry
https://arxiv.org/abs/2007.09135

「事象の地平面」を持たない新たなブラックホールの姿が理論的に導かれる。 情報問題も解決可能

質量が異なるブラックホールの衝突が初めて確認される

reference: sciencenews/ written by KAIN
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