太陽光発電によってヘロインが爆発的に増加した理由(アフガニスタン)

society 2020/08/01
Credit:Justin Rowlatt/BBC
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  • アフガニスタンではここ数年でソーラーエネルギーが利用され、農業が大きく発展している
  • 農業の発展はケシ畑を増大させたため、5年でアヘンの生産量は2倍以上に増加
  • 近年、アヘンから作られる麻薬ヘロインが世界中で増加

私たちが利用している「無害」なテクノロジーは、見方によっては「無害ではない」かもしれません。

近年、アフガニスタンのヘロイン産業は拡大しており、その背景には太陽光発電によるソーラーエネルギー利用が大きく関わっているようです。

BBCの記者ジャスティン・ロラット氏は、アフガニスタンのケシ畑を訪れ、太陽発電の与える影響を異なった角度から警告しています。

ソーラーパネルの広がり

ソーラーパネルを利用した太陽光発電は、現在世界中で活用されており、私たちの多くが「無害な」発電方法だと感じています。

アフガニスタンにソーラーパネルが導入されたのは2013年のことであり、それ以降、ソーラーパネルの設置数は爆発的に増加していきました。

農場数の変化/Credit:Justin Rowlatt/BBC

そして2019年には、アフガニスタン南部のヘルマンド州だけでも67,000のアレイ(複数のソーラーパネルを接続したもの)が設置されるまでになったのです。

これらの地域では、太陽光発電が地下水をくみ上げるために利用されています。

18のソーラーパネルからなる2つのアレイだけで、貯水池を満たすための電動ポンプを動かすことができます。砂漠地帯にソーラーパネルを設置するだけで、水を確保でき、農園へと変えられるのです。

Credit:Justin Rowlatt/BBC

もちろん従来のディーゼルエンジン発電も可能ですが、こちらは絶えず燃料費がかかり故障も多いため、多くの農家はランニングコストのかからないソーラーパネルへと切り替えています。

実際、太陽光発電は農地面積の拡大に大きく寄与しており、アフガニスタンに農業革命を引き起こしたとさえ言えるでしょう。

太陽光発電が広大なケシ畑を作り上げる

しかし、このソーラーパネルの広がりは世界に大きな悪影響をも与えました。

世界中で押収される違法薬物ヘロインが爆発的に増加したのです。

それもそのはず、アフガニスタンでソーラーパネルによって発展したのはケシ畑だったのです。

もともとアフガニスタンには大規模なケシ畑があり、このケシの実を乾燥させたものが「アヘン」と呼ばれます。

そして、アヘンに含まれるモルヒネからは、最も中毒性の高い薬物の1つ「ヘロイン」が作られるのです。

この国ではケシの栽培が貧困を抜け出す足がかりであり、反政府勢力の資金源にもなっています。アフガニスタン当局が取締を行っても、反政府勢力の伸長や開発の遅れなどで規制しきれていないのが現状です。

Credit:Justin Rowlatt/BBC

国連は毎年世界中で生産されている違法薬物の量を推定しており、その統計はアヘンとソーラーパネルの関係性を示しています。

2012年(太陽光発電が設置される前)、アフガニスタンは合計3700トンのアヘンを生産していましたが、その後急増し、2017年には最大9000トンにも達しています。

そして現在、ヘルマンドを含むアフガニスタン南西部で生産されるアヘンは、世界の供給量の3分の2を占めるほどになっています。

ヘロインが世界に影響を与える

ヘロイン産業の発展は世界中に大量のヘロインをばら撒くことになってしまいました。

2019年の9月、英国警察は、推定1億2000万ポンド(約164億円)相当のヘロイン1.3トンを押収しました。これは国内最大の押収量です。

また、麻薬常習から抜け出すための慈善団体を運営している元常習者のデイブ・ハイアム氏も、近年のヘロイン供給量増加の傾向に気付いています。

デイブ・ハイアム氏/Credit:Justin Rowlatt/BBC , Dave Higham

彼によると、流通しているヘロインの質は向上しており、これまで定期的に訪れていた供給不足が無くなっているとのこと。

さて、太陽光発電の発展は、図らずとも世界の違法麻薬量を増加させるものとなってしまいました。

こうした一連の出来事は太陽光発電について何を示しているでしょうか?

それは、太陽光発電自体がクリーンだとしても、「大きな悪影響を及ぼす可能性がある」ということです。

同じように、今後も安価で安全なテクノロジーは開発され、私たちはそれを喜んで利用するでしょう。

しかし、「必ずしも世界に良い影響を与えるとは限らない」と知っていなければいけないのです。

テクノロジーを生み出すことは、「その影響をコントロールする」という新たな課題を生み出すことでもあるのですね。

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reference: bbc / written by ナゾロジー編集部
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