線路の上に「落ち葉」があると電車が滑りやすくなる現象を解明。 タンニンによって秋の電車は遅延していた!?

chemistry 2020/08/01

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  • 鉄道レール上の落ち葉で滑りやすくなるのは、落ち葉に含まれる「タンニン」が原因だった
  • 落ち葉のタンニンとレールの鉄イオンによって黒い「タンニン酸鉄」の層ができる
  • タンニン酸鉄によるレールのコーティングは、摩擦係数を極端に低下させる

鉄道レール上の落ち葉があると、鉄道は途端に滑りやすくなり、ブレーキや加速が困難になります。

列車は安全を優先するため、遅延に繋がることも多々あるでしょう。

これまで、この「落ち葉があると滑りやすい」原因は、単純に落ち葉の繊維や水分にあると考えられてきました。

ところが、最近の英国シェフィールド大学機械工学科のマイケル・ワトソン博士らの研究によって、「落ち葉のタンニン」と路線の鉄によってできた「タンニン酸鉄」が滑りやすくしていると判明したのです。

鉄道を混乱させる「黒い氷」

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英国では毎年5000万枚の葉が線路上に落ちています。この落ち葉によって列車が遅延するため、推定で年間3億4500万ポンド(約472億円)の損失が生まれています。

落ち葉の上を列車が通った後には、レール上の落ち葉が押しつぶされることで黒い層が形成されており、車輪とレールの摩擦を大幅に減少させていました。

この現象は「the black ice of the railway:鉄道の黒い氷」と表現されており、鉄道関係者の悩みの種だったようです。

そして最近、ワトソン氏らによって、この「黒い物質」の成分が調査され、摩擦係数を減少させる原因が「落ち葉のタンニン」にあると考えられました。

タンニンとは、植物に由来する渋み成分であり、紅茶やワインなどに含まれています。赤ワインの渋みや色もこのタンニンが関係しているのです。

加えてタンニンには金属イオンと反応して結合する性質もあります。

落ち葉の抽出液は酸性であるため、これにより溶解した鉄イオンがタンニンと反応し、黒い物質の層を形成していると考えられます。

タンニン酸化鉄が摩擦係数を減少させていた

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この点を確かめるために、研究チームは、水にタンニンを含むスズカケノキの葉を注入して、茶色の抽出物を生成しました。

続いて、この抽出物に、レールから溶け出た鉄に相当する「塩化鉄」の水滴を追加。

その結果、鉄道上で見かけるのと同じような「黒い鉄含有物質(タンニン酸鉄)」が形成されたのです。

同様の手順をタンニンの含まない葉でも試してみましたが、黒い物質が形成されることはありませんでした。

この試験により、列車を滑りやすくする「黒い物質」はタンニンとレールの鉄で生成されるタンニン酸化鉄だと証明されたのです。

続いて、タンニンを含む葉(タンニン酸鉄が形成される)、タンニンを含まない葉、水をそれぞれレール上にまき、それぞれの摩擦係数の減少度を比較しました。

その結果、葉の繊維や水は摩擦係数をそこまで減少させないと判明。対して、タンニンを含む葉は大きく摩擦係数を減少させました

タンニンを含む葉が鉄道レールに落ち、タンニン酸化鉄が生成されることが滑りやすくなる原因だったのです。

ワトソン氏らは次に、様々な種類の木の葉のタンニン含有量を調査する予定です。

鉄道レール付近からタンニン含有量の多い樹木を減らすことで、スリップによる経済損失を防げるかもしれません。

この研究は7月29日、「Proceedings of the royal society A」に掲載されました。

 

The composition and friction-reducing properties of leaf layers
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspa.2020.0057

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reference: theguardian / written by ナゾロジー編集部
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