オーストラリア産つぶつぶ「フィンガーライム」が柑橘類の未来を救うかも(アメリカ)

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Credit:depositphotos
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  • 柑橘類を緑化し樹木を枯死させる感染病により、米国のオレンジ生産量が大幅に減少
  • オーストラリアに生息するフィンガーライムは感染病にかからない
  • フィンガーライムから安全な治療薬を作成することに成功

柑橘類の果実を緑に変色させ、樹木を枯死させる病気「カンキツグリーニング病(huánglóngbìng:通称HLB)」が、現在の米国オレンジ産業に大きな打撃を与えています。

これまで、HLBに対する安全な治療法は見つかっていませんでしたが、最近、米国カルフォルニア大学リバーサイド校の植物分子遺伝学者のハイリン・ジン教授らの研究チームは、HLBに対抗できるペプチドを作成することに成功しました。

この新しいペプチドは、オーストラリアの「フィンガーライム」と呼ばれる果物から作られており、柑橘類樹木に散布・注射することで、HLBを治療できます。

オレンジを緑化する「カンキツグリーニング病」

Credit:T.R. Gottwald and S.M. Garnsey / Wikipedia

カンキツグリーニング病(HLB)は、柑橘類の樹木が病原体に感染することで発症します。

HLBに感染した柑橘類には、枝や葉に斑点や変形といった症状が表れます。またその果実は本来黄色やオレンジ色なのですが、一部が緑に変色してしまい、非常に苦くなってしまいます。

さらに、病気が進行すると樹木は徐々に衰弱し、最終的には枯死に至ってしまうのです。

この病気は世界中に広がっており、米国のフロリダにも大きな影響を与えています。例えば、フロリダの2000年オレンジ生産量は約3億箱でしたが、2019年には約7000万箱にまで減少しているとのこと。

その対策方法としてこれまで有力視されていたのは、感染した樹木の伐採です。

また、HLBの病原体がキジラミと呼ばれる昆虫によって運ばれてくるため、農薬を散布することでキジラミを殺す手法も取られてきました。

しかし、この農薬はミツバチに有毒なため、より安全な対処方法が求められてきたのです。

フィンガーライムはHLBの影響を受けない

白い実と赤い実のフィンガーライム/Credit:(左)depositphotos , (右)Commons/Wikipedia

HLBに有効な手段として明らかになったのは、オーストラリアの在来種である「フィンガーライム」もしくは「キャビアライム」と呼ばれる柑橘系の果物です。

フィンガーライムはピクルスのような外見をしていますが、中にはキャビヤやイクラのようなビーズ型の果実が詰まっています。

美しい見た目とプチプチとした食感が人気を博し、近年では高級食材としてフランス料理などに用いられるようになりました。

さらに、フィンガーライムは柑橘類でありながらHLBの影響を受けることがなく、専門家たちにも注目されてきたのです。

フィンガーライムからHLB治療薬をつくる

Credit:depositphotos

ジン氏らの研究チームは10年前からフィンガーライムのDNAの研究を始めており、5年の研究の末、HLBに耐性のある遺伝的原因を発見しました。

そして、この遺伝子を使ってHLBと戦う天然のペプチド(アミノ酸が結合したもの)を作り出すことに成功。

それ以来、このフィンガーライムペプチドが他の樹木にどのような影響を及ぼすかテストしてきました。

数々のテストの結果、フィンガーライムペプチドは安全であると実証されたとのこと。

ペプチドはバクテリアと戦うための化学物質よりもはるかに安全であり、人間への影響もありません。

効果性も実証されており、実際、HLBに感染した樹木や葉にフィンガーライムペプチドを注射またはスプレーすることで、HLBを除去できました。

また、若木にスプレーすることで将来の感染を予防できます。

このペプチドは年に数回与えるだけで効果を発揮するので、栽培者にとっては非常に費用対効果の高い予防方法になるでしょう。

今後、研究チームは追加テストを行ない政府の承認を得る予定です。多くの農家がHLB治療薬を必要としているため、製品化が急がれています。

 

この新しい報告は7月7日、「UC RIVERSIDE」に掲載されました。

UC Riverside discovers first effective treatment for citrus-destroying disease
https://news.ucr.edu/articles/2020/07/07/uc-riverside-discovers-first-effective-treatment-citrus-destroying-disease

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reference: smithsonianmag / written by ナゾロジー編集部
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