うがい薬を「使わない」ほうが、カゼ予防になると示す研究結果(日本)

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  • カゼの予防には水うがいが効果的
  • うがい薬を使用すると、うがいしない人と同じくらいカゼにかかるという研究結果
  • 新型コロナウイルス予防には水うがいが効果的かもしれない

コロナ禍にあって、人々の感染予防への意識が高まっており、うがい薬の効果性が議論されています。

実は、日本人の習慣でもある「のどうがい」の薬の効果性は、数年も前に検証されていました。

予防医療学を専門としてきた京都大学名誉教授の川村孝氏は、2005年の時点で、カゼの予防には「うがい薬を使わないほうが良い」との研究結果を発表しているのです。

新型コロナウイルスの予防と一般的なカゼ予防は同じではありませんが、彼の研究からうがい薬に対する正しい見方が得られるでしょう。

うがいは世界の習慣ではない?

日本人にとって「のどうがい」は一般的なカゼ予防の1つであり、生活の習慣として定着しています。

しかし、「TEDx TALKs」の動画内で川村氏は「うがいは日本独自のユニークな衛生習慣」であると述べています。

もちろん、他にもうがいが行われている国はあるので、日本だけに存在する方法ではありません。ただし、日本ほど「うがい」が一般・習慣化している国は珍しいと言えるでしょう。

川村氏も2005年当時、「世界の文献を調べたが、うがいがカゼの予防に有効だと証明する論文は見当たらなかった」と述べています。

そのため、川村氏はうがいのカゼ予防効果を検証する世界初の臨床試験を行なったのです。

「水うがい」と「うがい薬」の効果性

この試験では、日本全国の387人を対象にし、彼らを3つのグループに分けました。

1つ目は、水でうがいをするグループ。2つ目は、うがい薬(ヨード液)でうがいをするグループ。3つ目は、特にうがいをしないグループとなっています。

うがいをするグループは、口うがい1回・のどうがい2回を1クールとし、1日3クールを2か月間続けてもらいました。

そして、この間にどれほどの人がカゼをひくのかグループごとの違いを調査したのです。

Credit:京都大学

試験の結果、水うがいを行なったグループはうがいをしなかったグループに比べてカゼになる割合が36%も減少しました

さらに、水うがいを行なったグループはカゼをひいたとしても症状がいくらか軽くなる傾向も見られたとのこと。

しかし、うがい薬を使用したグループは、うがいをしないグループとほとんど変わらない結果となりました。

カゼ予防には、うがい薬を使用せず、水でうがいする方がはるかに効果的だったのです。

「水うがいが効果的」で「うがい薬は効果的でない」理由

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水うがいがカゼ予防に効果的だったのはなぜでしょうか?

川村氏はそのメカニズムについて「カゼのウイルスが水で洗い流されたのではない」と述べています。カゼのウイルスはのどの細胞のレセプターに付着して素早く細胞内へ入ってしまうため、1日2、3回のうがいで除去されるとは考えにくいとのこと。

ですから水うがいは、ウイルスの感染を助けるタンパク質「プロテアーゼ」を除去することで効果を発揮していると考えられます。

プロテアーゼは一種の酵素であり、口の中に入ってきた細菌が作り出すこともあれば、空気中の埃の中にも存在します。これを水うがいは洗い流しているのです。

では、うがい薬が効果的でなかった理由は何でしょうか?

川村氏は「うがい薬が口の中の常在細菌叢(じょうざいさいきんそう)をも除去してしまうから」だと予想しています。

非常に強力なヨード液は、ウイルスだけでなく口内の秩序を保っている細菌までも殺してしまうので、これにより口内やのどは丸裸になってしまうのです。

ただしこれらは推測であって、川村氏の研究は「うがい薬がカゼ予防に効果が無い」との結果を出しただけです。そのメカニズムが明らかになったわけではありません。

新型コロナウイルスにうがいは効果的なのか?

「カゼには水うがいが効果的」だと数年以上前から証明されていますが、新型コロナウイルスに対しては効果があるのでしょうか?

川村氏はヘルステック研究所による動画内で、「コロナウイルスだけを調べた研究はまだ行われていない」と前置きしつつも、「新型コロナウイルスにも効果が期待できる」と述べています。

というのも、これまで研究されてきたカゼには従来のコロナウイルスによるものも含まれており、同じグループである新型コロナウイルスでも同様の効果が期待できるとのこと。

ただし、川村氏が述べているのは「水うがいの効果性」であり、話題となっているうがい薬の効果性を証明するものではありません。

「うがい」の習慣自体が世界ではマイナーであり、多くの研究がなされたわけではありません。新型コロナウイルスへの効果性を明言するには、より広範な研究が必要になってくるでしょう。

 

川村氏の研究は2005年、「American Journal of Preventive Medicine」に掲載されました。

Prevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling  A Randomized Trial
https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(05)00258-8

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reference: 京都大学 / written by ナゾロジー編集部
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