本震が戻ってくる!? 大西洋で検出された奇妙な「ブーメラン地震」

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  • 大西洋中央海嶺で発生した巨大地震は、進行方向を途中で変え逆伝播していたことが明らかになった
  • 海底地震計と遠隔地の実体波データの統合的に解析された
  • ブーメラン型の特異な破壊は、トランスフォーム断層に見られる新たな地震の姿

地震は恐ろしい災害ですが、通常、その振動は「去ったあとに戻ってくる」ということはありません。

しかし、世の中にはその振動がまるでブーメランのように帰ってくることがあるようです。

この前例のない珍しい地震は、大西洋海底で2016年に発生したもので、日本、イギリス、ドイツが参加した国際共同研究チームにより、その実体が世界で初めて明らかにされました。

帰ってくる地震とは、なんともお盆の時期にふさわしい研究ですね。

2016年のロマンシェ地震

ロマンシェ破砕帯の再構成画像。/Credit:Hicks et al., Nature Geoscience, 2020

今回研究対象とされたのは、2016年に大西洋の海底で発生したマグニチュード7.1のロマンシェ地震です。

この地震はブラジル東海岸とアフリカ西海岸のほぼ中間に位置する赤道付近のロマンシェ破砕帯という場所に沿って発生しました。

大西洋中央海嶺には、プレート同士が水平にズレたトランスフォーム断層があり、これが発達して地震を起こしています。

海嶺というのはマントルが地中からせり上がってきて新しいプレートが生まれている場所です。

このプレート発生の境界である海嶺が分断されて、横ずれを起こしてしまったものがトランスフォーム断層です。

海嶺からは新しいプレートが生まれて移動していますが、トランスフォーム断層が発生した場所だけ、このプレートの動きが互い違いになってしまいます。そのため、ここで地震が発生するのです。

海嶺の構造(左)。図の赤い線がトランスフォーム断層(右)。/Credit:Wkipedia

トランスフォーム断層は内陸にある断層と比較すると形状が単純なため、断層の性質が自身に及ぼす影響の調査に重要な場所となっています。

ブーメラン地震

ロマンシェ地震を解析した結果、地震破壊に2つの過程があったと確認されました。

1つは初期破壊が震源深部から浅い位置へ東方向へ進んでいきました。そして2つ目は破壊方向が西向きに逆転し、震源に向かって最大毎秒6キロメートルという速度で逆伝播しながら断層の浅い部分を破壊したのです。

それはまるでブーメランのような現象でした。

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一般的には理解し難い伝播の仕方ですが、こうした複雑な地震の破壊成長過程は、シミュレーションなどの理論的な研究では部分的に予想されていましたが、証拠となるものはほとんどありませんでした。

今回そんな特殊な地震が、実際に初めて観測されたのです。

研究チームの1人Hicks氏は、構造が単純なトランスフォーム断層を分析していたつもりだったので、この複雑な地震の動きは予想外だったと語っています。

このような反転がどのように起きたのかについての説明は、研究チームでも今のところ推測の域を出ていません。

研究者たちの予想では、深部で放出された地震初期の破壊エネルギーが、浅い位置に伝わって来た際、地中の地形の影響で西向きに反転したのではないかと考えられています。

単純と考えられたトランスフォーム断層で、こうした複雑な地震が確認されたということは、より複雑な構造を持つ内陸の断層でも、似たような現象が起きる可能性があります

地震の破壊前線の進行方向や破壊継続時間は、地震の強さや分布に影響する問題です。

今回の研究成果は、さらに詳細な解析を行っていくことで、将来起こりうる巨大地震や、内陸で発生する地震の災害リスクの評価に貢献していくことが期待されています。

この研究は、日本の筑波大学の研究者を含めたイギリス、ドイツの国際共同研究チームより発表され、地球科学全般を取り扱う科学雑誌『Nature Geoscience』に8月10日付けで掲載されています。

Back-propagating supershear rupture in the 2016 Mw 7.1 Romanche transform fault earthquake
https://www.nature.com/articles/s41561-020-0619-9

動物の第六感を使った「地震予知」に初成功! 科学がオカルトを証明する

reference: 筑波大学,sciencealert/ written by KAIN
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