野鳥の分布にキリンのシマ模様と同じ法則が見つかる!数学者が見つけた自然界の掟「チューリングパターン」とは?

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Credit:Billy Clapham
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  • 相互反応によって生じる「チューリング・パターン」は生物の模様に見られる
  • 新しい研究により、チューリング・パターンは野鳥の分布にも反映されていると判明
  • エナガは巣を持たないが、群れごとに生息分布が被ったり大きな群れになったりしない

自然界には一定の法則が存在し、その法則は数式としても表現できます。

天才数学者アラン・チューリング氏が提唱したチューリング・パターンもその1つであり、様々な生物の模様に当てはまります。

そして最近、英国シェフィールド大学数学統計学科のナターシャ・エリソン氏らの研究によって、野鳥の群れの分布にもチューリング・パターンが表れると判明しました。

チューリング・パターンとは

Credit:Ex.ungue.leonem/wikipedia

アラン・チューリング氏(1912-1954)は、世界に名の知れた天才数学者であり、同時に優れた暗号研究者、計算機科学者でもありました。

彼の功績として有名なのは、ドイツのエニグマ暗号の解読やコンピューターの基礎となったチューリングマシンの考案でしょう。

さらに計算・暗号解析の天才は、いわば自然界の暗号をも解読し、チューリング・パターンとして知られる「生物界に共通する模様メカニズム」を提示しました。

反応拡散の例。チューリング・パターンも反応拡散の1つである/Credit:Kerim Dündar

チューリング・パターンとは、化学反応によって自発的に生じるパターンであり、生物の細胞同士の相互反応による「波」によって形成されます。

例えば、チーターやキリン、熱帯魚などの皮膚には特徴的な模様があります。この模様は生まれた時から決まっていたわけではなく、細胞が成長するにつれて細胞同士の相互反応(波)で自然とそのパターンに形成されていくのです。

Credit:(左)depositphotos, (中)depositphotos, (右)depositphotos

そしてこの波は数式で表現できるため、コンピューター上でもチューリング・パターンの形成プロセスを再現できます。

生物のランダムに見える模様に自然界の法則が組み込まれているという事実は、私たちに自然界の驚異を感じさせるものですし、その法則を見つけ出し数式で表現したチューリング氏は確かに天才だと言えるでしょう。

野生動物の縄張りの背後にある数学的法則

さて、シェフィード大学のエリソン氏らの研究によって、生物の縄張りの背後にも数学的法則があると判明しています。

通常、野生動物の生息地は各々の縄張りによって知られます。そしてこの縄張りは匂いや巣の位置から判断できます。

さらにそれらの縄張り分布は数学的法則で表現できるとされており、その法則はコヨーテや人間のギャングにまで適用できるとのこと。

しかし、野生動物の中には領土としての縄張りを持たないものもいます。エリソン氏らが研究している野鳥「エナガ」もその1つです。

Credit:Andreas Trepte/wikipedia

エナガはスズメに似た小鳥であり、長い尾羽を特徴としています。この鳥は英国シェフィードのリベリンバレー周辺に生息しており、それぞれがある程度の群れをつくるものの、巣を持ちません。

そのため領土としての縄張りがなく、エナガたちがどのような群れを形成し、周囲に分布しているか調査するのは難しいことでした。

加えて、この鳥たちの生息分布には不思議な点がありました。

エナガは縄張りを持たないはずなので、餌の豊富な場所に多くの鳥が集中しそうなものです。しかしこれまでの観測ではそのような傾向がなく、それぞれのエナガがあえて別の場所に生息していたのです。

野鳥の群れはチューリング・パターンを形成する

群れは相互に影響し、チューリング・パターンを示す/Credit:Natasha Ellison

研究チームは、このエナガの分布を調査するためにチューリング・パターンが有効であると推測。

そしてこのシミュレーションに沿ってエナガの生息場所と関係性を識別していくことに成功しました。

結果として、やはりエナガの分布はチューリング・パターンを示しており、いくつかの群れを形成していると判明。

群れの位置は移動しているが、重なり合うことがない/Credit:Natasha Ellison

エナガの群れは巣などの縄張りを持ちませんが、それぞれの群れが他の群れと重ならないように生息しているのです。そして大きな群れをつくることもありません。

これはエナガの相互関係による縄張り・グループ形成を示しており、エナガの本能にチューリング・パターンという法則が組み込まれている証拠なのかもしれません。

生物界の様々な分野に組み込まれているチューリング・パターン。更なる研究・解明により、今後も新たな適用先が見つかるかもしれませんね。

 

この研究は8月10日、「Journal of Animal Ecology」に掲載されました。

Mechanistic home range analysis reveals drivers of space use patterns for a non‐territorial passerine
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1365-2656.13292

偉大なる変人アラン・チューリング、死後半世紀を経てついに訃報記事が掲載される

reference: sheffield / written by ナゾロジー編集部

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