放置すると電流が生まれる!?「電気泥」には細長いバクテリアが棲んでいた

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Credit:Volker Steger/Science Source

デンマークオーフス大学の微生物学者ラース・ピーター・ニールセン氏がオーフス港の海底からとってきた黒い泥は、不思議な反応を引き起こします。

泥を放置しているだけで化学反応が起こり、自然と電流が生まれていたのです。

調査の結果、この「電気泥」の反応は、ケーブルバクテリアと呼ばれる微生物の仕業だと判明。

このバクテリアは最大5㎝の伝導性ワイヤーを持っており、酸素の無い場所でも酸化還元反応を起こしていたようです。

通常、酸素のない泥の中で酸化還元反応は起こらない

Credit:depositphotos

ほとんどの細胞は、ある分子から電子を奪い(酸化)、別の分子(通常は酸素)に電子を提供(還元)することで成長・繁栄します。

この作用は酸化還元反応と呼ばれており、電子の流れ(電流)が生じます。

酸化と還元は同時に起こるため、細胞の近くに「酸化される分子」と「還元される分子(酸素)」が必要です。

例えば、私たちを含む真核生物の細胞では酸化還元反応がミトコンドリアの内膜で行われており、その反応距離はわずか数マイクロメートルです。

様々な場所に存在しているバクテリアも同様の反応が可能であり、近くの分子や酸素から電流を生むと知られていました。

では近くに酸素がないとどうなるでしょうか?電子の提供先がないため、酸化還元反応は起こらないはずです。

泥の中に生息しているバクテリアはまさにそのような状況にあります。泥の深い階層には酸素がほとんどなく、当然ながらそこに生息しているバクテリアの近く(数マイクロメートルの範囲)にも酸素はありません。

そのため泥の中のバクテリアは酸化還元反応を起こせず、電流が生まれることもないはずです。

泥の中の硫化水素が酸化されて消失した

Credit:LARS KRUSE/AU FOTO

ある時ニールセン氏は、オーフス港の海底からとってきた黒い泥を大きなビーカーに入れました。この泥の中には、泥の色の元である硫化水素がたくさん含まれており、腐卵臭を放っています。

彼がこの泥を30日間放置したところ、泥の中に青白い層ができているのを発見。

泥の中の硫化水素が酸化還元反応によって別の物質へと変化していたのです。これは電子の受け渡し、つまり電流が生まれていたことを意味します。

ニールセン氏の調査により、この原因が泥の中に住む微生物(バクテリア)にあると分かりました。

しかし、当初この発見を懐疑的に思う研究者は多かったようです。

バクテリアの周囲には硫化水素(酸化される分子)がありましたが酸素(還元される分子)はありませんでした。

つまり電子の通り道がないため、酸化還元反応を引き起こせるとは到底考えられなかったのです。

長いケーブルをもつバクテリアを発見。酸素の多い泥へケーブルを伸ばす!?

Credit:Lars Peter Nielsen

ニールセン氏の様々な実験の結果、泥の中には「ケーブルバクテリア」と呼ばれる長いケーブルを持つバクテリアが存在していると判明しました。

このバクテリアは最大5cmにもなるケーブルを酸素に富んだ上方に伸ばし、そこに電子を送っていたのです。

バクテリア付近に酸素が無くてもケーブルで酸素がある場所と繋げるため、酸化還元反応が起こっていたのです。

このケーブルはバクテリアのサイズを考えると驚異的な長さになります。米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校の微生物学者アンドレアス・テスケ氏は「まるで私たち自身の代謝プロセスが18キロ離れたところに影響を与えるかのようだ」と語っています。

ニールセン氏は、このケーブルバクテリアの他にも同様の作用を起こす「ナノワイヤーバクテリア」も発見しています。

これらのバクテリアが生息する「電気泥」は確かに電流を生み出しており、実際におもちゃを動かすには十分な電力を供給しました。

ケーブルバクテリア、ナノワイヤーバクテリアについては未解明な部分が多く、これからも研究は続けられていくようです。

 

この研究は8月21日、「Science」に掲載されました。

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reference: science / written by ナゾロジー編集部
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