chemistry

放置すると電流が生まれる!?「電気泥」には細長いバクテリアが棲んでいた

2021.01.27 Wednesday

2020.08.23 Sunday

デンマークオーフス大学の微生物学者ラース・ピーター・ニールセン氏がオーフス港の海底からとってきた黒い泥は、不思議な反応を引き起こします。

泥を放置しているだけで化学反応が起こり、自然と電流が生まれていたのです。

調査の結果、この「電気泥」の反応は、ケーブルバクテリアと呼ばれる微生物の仕業だと判明。

このバクテリアは最大5㎝の伝導性ワイヤーを持っており、酸素の無い場所でも酸化還元反応を起こしていたようです。

画像
Credit:Volker Steger/Science Source

通常、酸素のない泥の中で酸化還元反応は起こらない

画像
Credit:depositphotos

ほとんどの細胞は、ある分子から電子を奪い(酸化)、別の分子(通常は酸素)に電子を提供(還元)することで成長・繁栄します。

この作用は酸化還元反応と呼ばれており、電子の流れ(電流)が生じます。

酸化と還元は同時に起こるため、細胞の近くに「酸化される分子」と「還元される分子(酸素)」が必要です。

例えば、私たちを含む真核生物の細胞では酸化還元反応がミトコンドリアの内膜で行われており、その反応距離はわずか数マイクロメートルです。

様々な場所に存在しているバクテリアも同様の反応が可能であり、近くの分子や酸素から電流を生むと知られていました。

では近くに酸素がないとどうなるでしょうか?電子の提供先がないため、酸化還元反応は起こらないはずです。

泥の中に生息しているバクテリアはまさにそのような状況にあります。泥の深い階層には酸素がほとんどなく、当然ながらそこに生息しているバクテリアの近く(数マイクロメートルの範囲)にも酸素はありません。

そのため泥の中のバクテリアは酸化還元反応を起こせず、電流が生まれることもないはずです。

次ページ泥の中の硫化水素が酸化されて消失した

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

化学のニュースchemistry news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!