100光年離れたブラックホールと同期して脈動する奇妙なガス雲

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Credit:DESY, Science Communication Lab
reference: desy,sciencealert

8月17日付けで科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載さた研究によると、天文学の研究チームが宇宙に奇妙なガス雲を発見したそうです。

そのガス雲は、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡の観測から、ガンマ線を反射させて脈動していることが確認されました。しかもそのリズムが隣にある歳差運動しているブラックホールと同期していたとのこと。

奇妙なのは隣といっても、その2つの距離は100光年も離れていて、しかもガス雲はブラックホールのジェット放射の軸からはズレた位置にあることです。

これは既存の理論で考えた場合、両者には何の関連性も無いように見えます。なのに2つの天体は同期して脈動していたのです。

この謎には天文学者たちも頭を抱えています。

奇妙な天体 マイクロクエーサー「SS 433」

マイクロクエーサーSS 433のアーティストイメージ。/Credit: Artist’s Visualization,NASA

ガス雲と同期したブラックホールは、「SS 433」という地球から約1万5000光年ほど離れた場所にあるマイクロクエーサーの中心核です。

マイクロクエーサーとは、その名の通りミニチュア版クエーサーというべき奇妙な天体で、本来は、はるか遠くの宇宙にあり太陽の何億倍もの質量を持ちます。

しかし「SS 433」は天の川銀河内にあり、クエーサーによく似た特徴を持っているにも関わらず、質量は太陽のたった10~20倍程度しかありません。

それなのに「SS 433」がクエーサーに似ていると言われる理由は、活動銀河核のように多量の物質を巻き込んだ降着円盤を持ちジェット噴射を行っているからです。

ジェット噴射の明確なメカニズムはまだわかっていませんが、「SS 433」のジェット噴射の原因は伴星にあるようです。

「SS 433」は伴星に太陽の30倍の質量を持つ超巨星を連れています。両者は非常に接近した軌道を持っていて13日周期で軌道を回っています。

この伴星の物質を排水口の渦巻きのように吸い上げて、「SS 433」はコンパクトながらジェットを備えた降着円盤を持っているようです。

「SS 433」の歳差運動とガス雲の脈動

Credit: ICRAR

「SS 433」の連星系では2つの天体が軌道に対して平面な状態で並んでおらず、ブラックホールの軸が傾いています。このため、ジェット噴射は歳差運動によって螺旋状に宇宙へ飛ばされています。

ブラックホールのジェット噴射は強力な磁場と関連していて、光速の実に26%という速度で物質を噴射し、同時にX線やガンマ線も放出しています。

このブラックホールの歳差運動は約162日の周期で行われていて、これによってマイクロクエーサーから来るガンマ線は、規則的な脈動をしているように見えるのです。

研究チームは、そんなフェルミガンマ線宇宙望遠鏡の過去10年間の観測記録をチェックしていました。

するとそこから「SS 433」と同期して脈動するガス雲「Fermi J1913+0515」を発見したのです。

しかしこれは非常に奇妙なことでした。ガス雲「Fermi J1913+0515」は「SS 433」から100光年も離れていた上、ブラックホールがジェットを放射していると考えられる軸からはまったくズレた方向に浮かんでいたからです。

関連性がないのに同期する2つの天体

ジェットの軸の方向にない以上、ガス雲はブラックホールのジェットから放射されたガンマ線で脈動しているわけではないように見えます。

それに100光年も離れていながらタイミングが一致しているというのも意味不明です。

一体何がこの2つの天体を接続しているのでしょうか?

研究者の考えの1つは、ジェットだけでなく降着円盤からもガンマ線の放射がされていて、それがガス雲に届いているというものです。

しかし、距離を隔てて同期する理由は説明できません。

今もってこの原因は謎のままです。それは今後の観測と分析によって明らかにされるかもしれませんね。

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