樹液から「ニッケル」が染み出る植物により、未来の鉱業が一変するかもしれない

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Credit:Antony van der Ent
reference: bbc

ニッケルはキッチンの蛇口や電気自動車のバッテリーまで様々な用途に利用できる金属であり、主に鉱山からニッケル鉱を採掘することで得られています。

しかし5月に発表された研究によると、インドネシア・タドラコ大学の土壌生物学者アイエン・チョア氏は「豊富なニッケルを含む樹木」に注目しており、新たな産出先となる可能性を見出しています。

これらの樹木は土壌からニッケルを吸収し大量に貯蔵できるため、採掘することなくニッケルが得られるかもしれないのです。

を愛する植物たち」

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ほとんどの植物はいくつかの酵素を活性化させるために少量のを土壌から吸い上げています。

この金属の中にはも含まれており、特に植物の開花プロセスを活性化させるのに必要だとされています。

しかし吸い上げる量が少しでも多いと、その自体が毒となり逆に植物を殺してしまうのです。

そのため通常の植物にもが含まれているものの、その量は非常に僅か。ところが、ある植物はを細胞壁内に結合したり液胞の中に貯蔵したりするので、を過剰に吸収しても死ぬことがありません。

この貯蔵植物」たちは、自身の芽、葉、樹液にを貯蔵しているのです。

例えば、イタリア原産の 「Alyssum murale(アリッサム・ムラレ)」などからは乾燥葉1gあたり最大30,000μgのを摂取できます。

アリッサム・ムラレのようにを愛する植物はこれまでに世界で450種ほど記録されています。

しかし、これらの植物のほとんどはキューバや南ヨーロッパ、ニューカレドニア、マレーシアなど堆積が少ない国で育ちます。

そのためを蓄える能力があるものの、効率的に摂取するには至っていないのです。

インドネシアで貯蔵植物を探す

Credit:Antony van der Ent

インドネシアは世界で最も生物多様性の高い地域の1つであり、世界最大の鉱床を持っています。そのためインドネシアの土壌にはが豊富に含まれており、そこから吸収できる量も多いと考えられます。

しかしこれまでにインドネシアの「貯蔵植物」はほとんど発見されていません。これは主に時間をかけて調べる人がいなかったからだと思われます。

そのためチョア氏は、インドネシアに生息する貯蔵植物を探すことにしました。

しかしこれらは一見普通の植物と変わりません。そのため肉眼で探すのはかなり難しく、多大な労力を要するものだったのです。

対象になりそうな植物を見つけたなら検出紙を葉に押し当てることで簡易に診断ができます。が含まれているなら検出紙はピンクに染まるので見分け方は簡単です。

Credit:Antony van der Ent

ただし濃度までは判断できないので、すべてのサンプルを研究室で調べなければいけませんでした。

4年間の調査の結果、チョア氏は2種類の貯蔵植物「Sarcotheca celebica(サルコテカ・セレビカ)」と「Knema matanensis(ネマ・マタネンシ)」を発見しました。

これらの在来植物からは、乾燥葉1gあたり最大5,000μgのを摂取できます。

更なる探索と植栽

その発見以降も貯蔵植物の探索は続けられており、最近では磁気を利用した探索方法が検討されています。

磁気を使用するなら高濃度のしか検出されないため、探索プロセスを高速化できるのです。

では、これらの貯蔵植物は本当に供給源となり得るのでしょうか?チョア氏を含む植物学者たちはその可能性を認めています。

オーストラリア・クイーンズランド大学の植物学者アントニー・ファン・デル・エント氏によると、貯蔵植物1ヘクタールあたり毎年推定120kgのニッケルを生成できるとのこと。

Credit:depositphotos

さらにこれらの植物はただ鉱山を削るだけのとは違い、植えることができます。貯蔵植物を収穫するだけでなく植え続けることで、自然環境を破壊せずにを産出できるでしょう

今後も貯蔵植物の探索と植栽が進むなら、限りある資源だけに頼らずにを得られるかもしれないのです。

チョア氏は現在でも探索を続けており、より貯蔵量の多い植物を求めて活動しています。

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