希少な恐竜の胎児の化石から奇妙な特徴が見つかる「不自然な位置にツノ」

paleontology

Credit:Martin Kundrát et al., Current Biology(2020)

reference: sciencealert,phys

アルゼンチンのパタゴニアでほぼ完全な状態で約8000万年前のものと思われる竜脚類の胎児の化石が発見されました。

8月27日付けで『Current Biology』に掲載された論文によると、パボル・ヨセフ・シャファーリク大学の研究チームは、X線マイクロトモグラフィという新しい技術を使い、この卵の中の胎児の化石を初めて3D画像として解析することに成功したとのこと。

この化石はまだ卵の殻の中に閉じ込められた状態で、非常に希少価値の高い標本です。また、解析の結果、竜脚類の成体には見られないさまざまな特徴が発見されたのです。

恐竜の幼少期については、まだほとんどわかっていません。これは未だ多くの謎に包まれた恐竜たちの生態を知る重要な資料になるでしょう。

いわくつきの恐竜の卵

今回発見された化石にはちょっとしたいわくがあります。

化石は約25年前、アルゼンチンのパタゴニアで発見されたものだと推定されていますが、正確な出土場所はわかっていません。

それは、この化石がパタゴニアから違法にアメリカへ持ち出されたものだったからです。その後、研究者たちの注目を集めたこの化石はアルゼンチンに送還され、現在はカルメン・フネス博物館に収容されています。

そのため、この化石が元々どこにあったものなのかは現在もわかりません

アルゼンチンのパタゴニアにあるAuca Mahuevoでは、竜脚類のティタノサウルスの化石や卵が多く発見されています。そのため、この卵もAuca Mahuevoで発見されたものだというのが有力ですが、鉱物構成などは一部一致していません。

竜脚類の胎児に見つかる不思議な特徴

なにはともあれ、この非常に希少な恐竜の胎児の化石は、成体の竜脚類には見られないユニークな特徴を持っており、現在科学者の注目を集めています。

この化石は竜脚類のティタノサウルスの胎児だと考えられています。彼らは長い首に小さい頭を持つ非常に巨大な種です。

ティタノサウルスのイメージ。/Credit:depositphotos

竜脚類は、大きいものだと体長50メートルを超えるものも存在しますが、この胎児は数センチしかありません。

Martin Kundrát氏を筆頭とした研究チーム率いる研究チームは、この化石をX線マイクロトモグラフィという新しい画像処理技術で3D化させました。

Credit:Martin Kundrát et al., Current Biology(2020)

この画像の解析からまず目についた特徴は、眼窩が成体のものよりも前方に傾斜していることです。

研究チームはこのことから、「ティタノサウルスの幼体は部分的に両眼視(両目を使った立体視)が可能だったと考えられ、成体よりはるかに優れた視覚を持っていた」と結論づけています。

ティタノサウルスの雛は、両眼視により食べ物や獲物との距離をより正確に判断でき、カモフラージュした捕食者を見つける能力に長けていた可能性があるのです。

不自然な角の存在

さらに研究者たちを困惑させているのが、この標本から見つかった不自然な位置にある角の存在です。

そもそも角なんてあるの? と思う人もいるかもしれませんが、鳥類や爬虫類など殻のある卵から生まれる生物は、卵を割るための角「卵歯」と呼ばれるものを赤ちゃんのときに持っています。

亀の赤ちゃんの卵歯 /Credit: ztv.ne.jp

そのため、卵歯に当たる突起を恐竜の胎児が持っていること自体に不思議はありません。

奇妙なのはその位置です。現存する爬虫類の卵歯に関する知識から考えた場合、胎児の化石に見つかった突起は卵を割るための正しい位置にないということが示唆されています。

下の画像は解析された頭蓋骨から再現されたティタノサウルスの胎児の画像です。赤い矢印は卵歯として妥当な位置ですが、今回見つかった謎の突起は青い矢印の位置にあります。

Credit:Martin Kundrát et al., Current Biology(2020)

こうした角の存在は、成体には見つかっていません。また卵歯は孵化後すぐに抜け落ちてしまうものですが、この突起は骨の構造の中に含まれているため、孵化後もしばらくの間は残り続けただろうと推測されてます。

若い恐竜がなぜこのような突起を持つ必要があったのか、研究者たちは疑問を抱いています。

骨の構造から既存の他の生物たちの胚発生と比較して、この化石は孵化期間の約75%を完了している状態だと考えられますが、それがこの古代の生物にそのまま適用できる知識であるかは不明です。

この化石の胎児が、実際は孵化までのどの期間にあるのかはわからないのです。

また、顔の解剖学的構造や大きさが、これまで見つかっている不完全な竜脚類の胚とは異なっているとも考えられるため、これがまったく新しい種類の恐竜である可能性も排除できません。

実際恐竜の赤ちゃんがどのような姿をしていて、どのように過ごしていたかは、現在のところ謎に包まれたままです。

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