いきなり逆回転する!?「ローレンツ水車」のカオス発生装置とは?

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Credit:Harvard Natural Sciences Lecture Demonstrations
reference: harvard

通常、水車は同じ方向に回転し続けるものです。しかし中には、回転速度が遅くなったり逆回転したりする水車も存在します。

ハーバード大学の「Harvard Natural Sciences Lecture Demonstrations」は5月14日、Youtubeチャンネルに、カオス回転する水車の動画を公開しました。

実はこの水車、「ローレンツ水車」と呼ばれており、カオス理論に基づいたカオス発生装置でもあるのです。

いきなり逆回転する!?ローレンツ水車

作成された水車は8つのバケツが等間隔に吊り下げられており、水車自体は固定されていないため、どちらの向きにも回転できます。

また上部の蛇口から水が流れ落ちてバケツ内に注がれることで、水車が回転するようになっています。

ちなみに、このバケツにはそれぞれ穴が開いているので、時間経過で中の水は排出されます。

多くの人は、通常の水車のように「水が注がれると一方に回転して始め、徐々に加速し、しばらくすると速度が安定する」様子を思い浮かべるかもしれません。

しかし、このローレンツ水車は全く予期できない動きをするのです。

Credit:Harvard Natural Sciences Lecture Demonstrations

映像の通り水車は時計回りに加速したかと思えば、徐々に減速し逆回転し始めます。またその逆回転も長くは続かず、すぐに時計回りへと戻っています。

しかも回転の速度や方向は同じ間隔で繰り返されているわけではないのです。

この予測できない動きをさらに検証するために、動画の後半では同じ装置、ほぼ同じ位置、注水量で行なった4回分のを並べて同時再生しています。

Credit:Harvard Natural Sciences Lecture Demonstrations

結果、ほぼ同じ条件にも関わらず、それぞれの水車は全く異なる動きになりました。

この単純な装置が「(混沌)」を生み出しているのが分かりますね。

現象とは

Credit:Wikimol,Dschwen/wikipedia

現象とは、「初期条件の微小な違いが時間経過によって大きな変化をもたらす現象」を指します。

そのため現象はランダムではありません。完全に同じ条件であれば、完全に同じ動き・結果になります。

しかし、人間が同じ条件にできないほどの微小な要因が相互に影響しあい、結果として大きな変化を生み出すため、予測できずランダムに見えるのです。

この現象は気象に当てはまります。気温や湿度、気圧などが複雑に絡み合い、大きな影響を与えることがあるため、完全な気象予報は不可能です。

そして気象学者であるエドワード・ローレンツ氏は1950年代にこの理論を発見。そして後に彼の理論を表現するために作られたのがこの「ローレンツ水車」なのです。

なぜローレンツ水車はなのか?

通常の水車が微小な要素を無視して回転し続けるのに対し、ローレンツ水車はそれらの影響を強く受けるため、全く予測できません。

ローレンツ水車がどうしてな動きをするのか、Java実験室の「ローレンツ水車」シミュレーションから考えてみましょう。

Credit:Java実験室

蛇口から水が流れ始めた段階では、時計回りに回転し始め、新しいバケツにも次々と水が注がれていきます。水入りバケツは重力の影響を受けるため、水車が時計回りに加速するのが分かりますね。

Credit:Java実験室

一回転したところで、水車の回転速度が落ちています。

これは水車が加速したことによって、新しいバケツには少量の水しか入らなかったのが原因です。結果として画面左側のバケツたちの方が重くなり反時計回りの力が働いたのですね。

Credit:Java実験室

さて回転速度が落ちたことにより、新しいバケツには大量の水が注がれるようになりました。

その間にも他のバケツの排水は続いているので、開始段階と似たような状況になっています。つまり、これからまた時計回りに加速するのでしょう。

しかし、開始段階とは微妙に状況が異なっていますね。

そのため、その後も反復を繰り返しますが、回転速度・注入量・バケツ水量にも微妙な違いが生じ、徐々にその変化が積み重なります。

Credit:Java実験室

そしてある時、上図のように左側のバケツだけに大量の水が溜まった状況になりました。これにより時計回りの力が完全に失われ、反時計回りに動き始めるのです。

Credit:Java実験室

あとはこの微妙な要素が相互に影響を与え続け、時計回りと反時計回りを予測できないタイミングで繰り返します。

様々な要素が相互かつ敏感に影響しあって大きな変化を与えていることが分かりますね。

そしてこれらは蛇口から流れる「水量の誤差」や水車の位置の「若干のずれ」という微小な初期条件の違いによってもたらされるのです。

ハーバード大学が行ったでは排出された水が跳ねたり、他のバケツへと流れ込んだりしているため、さらにになっていました。

今回はローレンス水車の動きと影響力の複雑さを単純な状況観察から説明しましたが、数式でローレンス・カオス理論を理解することもできます。理論の深みにはまりたい方はぜひ調べてみてください。

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