ずっと謎だった「体中の皮膚を擦ると”かゆみ”が治まる効果」が証明される

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特にデリケートな部分がかゆいときは皮膚摩擦が推奨される/Credit:depositphotos

reference: neurosciencenews

かゆみを止めるためには患部を爪で引っ掻くのではなく、別の皮膚を擦るだけで効果があるという研究結果が発表されました。

9月7日に「Journal of Neuroscience」に掲載された論文によると、かゆみを脳に伝達する「かゆみ経路」が、別の場所の皮膚摩擦によって抑制されることが示されたのです。

蚊による虫刺されに爪でバッテンマークをつけるのは、もう時代遅れになるのかもしれません。

化学物質の注射でマウスは全身を引っ掻きはじめた

かゆみを誘発する化学物質を注射されたマウスは体を盛んに引っ掻きはじめる/Credit:九州大学

かゆみは、皮膚トラブルの最も典型的な例であり、古くから多くの対症療法が考案されてきました。

その中で、最も簡単で安全かつ効果的な方法として、皮膚摩擦が知られています。

かゆみを感じる時に、体のあちこちの皮膚をこすると、自然とかゆみが緩和されていくという不思議な現象が起こるのです。

しかしながら、この摩擦によるかゆみ抑制の背後にあるメカニズムは判明しておらず、経験的な医療として考えられてきました。

そこで今回、研究者たちは皮膚摩擦がかゆみを抑制する仕組みの本格的な解明を試みました。

実験にあたってはまず、マウスにかゆみを誘発する化学物質を注射。すると化学物質によりマウスは凄まじいかゆみに襲われ、激しく後ろ足で体を引っ掻くような動作をはじめます。

このときマウスの脊髄を生きたまま開いて神経活動を覗きみると、かゆみを脳に伝達する脊髄の「かゆみ経路」が大きく活性化している様子が観察されました。

全身のかゆみに足裏の皮膚摩擦をする

皮膚摩擦前後の「かゆみ経路」の神経活性レベルを模式的に示したモデル図/Credit:ナゾロジー

マウスが行動学的にも神経学的にも、かゆみに囚われているのを確認すると、次に研究者はマウスの足裏に対して軽い皮膚摩擦を行いました。

古くからの対症療法が正しければ、摩擦によってマウスのかゆみが抑制されるはずだからです。

しかし足裏摩擦の結果、かゆみ経路の活動は一時的に大きく活性化してしまいます。

というのも、かゆみ経路には一般的な皮膚感覚を通す役割もあるために、かゆみに加えて足裏摩擦の刺激が加えたことで、経路がさらに活発化したからです。

全身に激しいかゆみを感じているなかで、足裏摩擦されたマウスがどのような感想を持ったかはわかりませんが…足裏摩擦を止めると、ある変化が起こりました。

足裏摩擦をとめた直後から「かゆみ経路」の神経活性が、化学物質を打っていない通常時以下にまで、低下していたのです。

マウスに体の変化を聞くことはできませんが、これは神経学的には、かゆみが低下している状態を意味していました。

皮膚の下の神経を直接刺激する

皮膚刺激によって鎮静化作用が引き起こされ、かゆみを遮断した/Credit:Journal of Neuroscience

神経学的には効果のあった皮膚摩擦。しかし効果の検証にはさらなる証拠が必要でした。

理想はマウスの自分の体を引っ掻く動作を止めることです。

そこで研究者はマウスの皮膚の下にある感覚神経を直接刺激してみることにします。

皮膚の感覚神経を直接刺激できれば、足の裏を刺激するより効果が期待できると考えたからです。

伝統的な神経刺激は、神経に電極を突き刺すといった方法が用いられてきました。

ですが今回は光で神経を刺激する、最新の光遺伝学的な手法で行われました。電極と比べて、光遺伝学的な手法は苦痛がありません。

光で感覚神経を刺激されると、マウスはもう体を引っ掻く動作をしなくなり、かゆみ経路の神経活性も下がったのです。

このことから皮膚摩擦や皮膚神経の刺激は、かゆみを効果的に抑制できることが示されました。

また今回の研究ではより詳細な調査も行われ、かゆみを脳に伝達するかゆみ経路の正体が、プルリトゲン応答性ニューロンだという事実も突き止められました。

プルリトゲンが分泌されると、かゆみを引き起こすことが知られており、プルリトゲンを阻害する薬はかゆみ止めに使われていた実績があります。

そのため皮膚摩擦は、このプルリトゲン応答性ニューロンに対して、鎮静化作用を与える働きをすると考えられます。

蚊に目を刺されたときには皮膚摩擦

マウスの足裏には毛がない/Credit:野毛山動物園

今回の研究により、皮膚摩擦が優れた効果をもつことがわかりました。

この成果は、蚊に目の周辺を刺された時などに役立てることが可能です。

目の周りは傷つきやすい粘膜で覆われ、爪で引っ掻くことも、かゆみ止めを塗ることもできません。

しかし今回の成果を応用すれば、他の体の皮膚を摩擦することによって、目のかゆみを抑えられる可能性があります。

今度、デリケートな部分に虫刺されや湿疹が出たら、皮膚摩擦を試してみるのもいいかもしれませんね。

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