過冷却実験により「水」は”2種類の液体”から構成されているという新事実が判明!

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水は1つではなく2種類の液で構成されているとする2液説
水は1つではなく2種類の液で構成されているとする2液説 / 1種類だと思っていた水は2種類の液体から成り立っていた/Credit:Nilsson
reference: Sciencearxivphys

水は2つの液体が1つであるように偽装しているかもしれません

9月18日に『Science』に掲載された論文によれば、水を液体のまま冷やす「過冷却」状態にすると、2つの異なる液体に分離する様子が観測されたとのこと。

水には数多くの奇妙な性質が知られていますが、1つの液体が2つの異なる状態にわかれて存在するという実験的証拠が得られたのは、今回がはじめてとなります。

過冷却中の水はどのような状態を見せてくれたのでしょうか?

過冷却水の謎

過冷却水は構造の違う2液で構成されるとする2液説
過冷却水は構造の違う2液で構成されるとする2液説 / 低温では低密度で規則的な液が優勢で高温になるにつれて高密度で乱雑な液が増えてくる/Credit:Nilsson

凍結を許さず氷点下に冷やされた水「過冷却水」は長年、科学者の悩みの種でした。

なぜなら、通常の物質は冷えれば冷えるほど、分子の動きの変動が小さくなる一方で、過冷却状態の水は冷やせば冷やすほど謎の分子運動を起こしていたからです。

この分子運動は近年になって密度変化が原因ではないかと疑われるようになっていました。しかし、過冷却水は通常、形成されてから数ナノ秒後に凍結してしまうため、それを検証する手立てが限られていたのです。

ところが今回、アメリカパシフィックノースウェスト国立研究所のクリングル氏らは、マイナス200℃に冷却されている氷に対してレーザーパルスを照射することで、断続的に過冷却水を生成させ、分光法で解析することに成功しました。

結果、過冷却状態の水が、上図のように密度の異なる2つの構造に分離していることがわかったのです。

右側にあるのは「高密度で乱雑」な構造であり、私たちの知る常温の世界では優勢な形です。

しかし水を液体のまま過冷却することで、左側の「低密度で規則的」な構造が現れることが判明しました。

次にクリングル氏らは過冷却水をマイナス33℃からマイナス99℃の間で生成してみました。

2つの液体の状態が、液体と気体の変化のように、温度変化に依存して現れるかどうかを調べるためです。

結果、冷えれば冷えるほど「高密度で乱雑」だった液の割合は減少していき、マイナス103℃以下になると、全ての液体が左の「低密度で規則的」な液体に置き換わりました。

credit: depositphotos

しかし真に興味深い点は低温ではなく、私たちの知る常温世界にありました。

温度が上がるにつれて「高密度で乱雑」な液の割合は増えて行きましたが「低密度で規則的」な液は0℃を超えても(本研究では20℃まで想定)全滅していない可能性があったのです。

これはつまり私たちが「普通の水」だと思っていたモノが、既に2種類の液体(高密度で乱雑と低密度で規則的)が混ざったものである可能性につながるかもしれません。

普通の水も2種類の液で構成されているかもしれない

水の2液説は常温の普通の水にもあてはまるかもしれない
水の2液説は常温の普通の水にもあてはまるかもしれない / 水が2つの液から構成されていると考えると全てのつじつまが合う/Credit:depositphotos

過冷却水だけでなく、普通の水すらも2種類の液体で構成されているとする説(2液説)は化学や物理学に大きな影響を与えるでしょう。今までの常識が覆る内容であるために、クリングル氏らも慎重な姿勢をみせているようです。

しかしクリングル氏らは、普通の水が2種類の液体から成り立っているとすると、水の持つあらゆる奇妙な性質を説明できると述べています。

例えば奇妙な性質の一つである、4℃の水が氷よりも密度が高いことは、加熱によって「高密度で乱雑」な構造の液体がシェアを伸ばすからだと説明できます。

また水分子が圧力をかけることで、より拡散しやすくなるのは、高圧により「高密度で乱雑」な液の移動性が増加するためだとも言えるとのことです。

今後も研究チームは水の2液説を常温にも拡大可能かどうかを調べていく予定です。

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