日本人が2020年イグノーベル賞(音響学)を受賞!「ワニにヘリウムを吸わせて声の高さを確かめる」おもしろ研究

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Credit:Stephan A. Reber et al.,Journal of Experimental Biology(2015)

reference: 京都大学,

変わった研究に送られるノーベル賞のパロディ、イグノーベル賞(音響学)に京都大学霊長類研究所の西村剛准教授の参加した研究が選ばれました。

イグノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる業績」に対して授与されるもので、今回受賞したのは、「ワニにヘリウムを吸わせて唸らせた」研究です。

タイトルだけ聞くと何やってるんだろう、と疑問に思ってしまいそうですが、この研究にはきちんと深い意義があります。

西村准教授は、なぜワニにヘリウムを吸わせたのでしょうか?

ワニの発声メカニズムの謎

吠えるワニ
吠えるワニ/Credit:depositphotos

ワニは爬虫類の中でもっとも大きい鳴き声を出す生物です。

特に交尾の時期になると、ワニは非常に大きな鳴き声をあげますが、この発声メカニズムについてはよくわかっていません。

ワニは求愛行動や縄張り行動には、体の大きさが強く影響します。例えばワニのメスは自分より体の小さいオスの求愛をお断りします。

そのためワニの鳴き声は、自分の体の大きさを示す意味も含まれていると考えられるのです。

哺乳類鳥類は、声帯で音波を発生させ、声道で共鳴させることで増幅し「声」を生成します。この方法はフォルマントという周波数帯のバランスで音色を特徴づけていて、体の大きさなども正確に伝えています。

知られている限りでは、爬虫類にフォルマントが記録されていたことはなく、カエルなどの両生類の鳴き声にもフォルマントは関連していません。

つまり、ワニは大きな鳴き声を出すけれど、声帯や声道の共鳴を使って、哺乳類や鳥類と同じように鳴いているのか、そうでないのかよくわからないのです。

ヘリウムで発声方法を検証

ワニの声道構成。
提案されたワニの声道構成。/Credit:Stephan A. Reber et al.,Journal of Experimental

いまいちよくわからないワニの発声メカニズムが、私たち哺乳類や鳥類と同じ声帯や声道を使っているか確認するにはどうすればいいでしょうか?

そこで研究チームが考えついたのが、ヘリウムをワニに吸わせて声の高さがどう変化するか確認するという方法だったのです。

パーティーグッズとして売られているように、ヘリウムを吸うと人間の声はまるでアヒルのような甲高い変な声になってしまいます。

これはヘリウムと通常の空気では音の伝わる速度が異なるためです。ヘリウムは分子のサイズなどの関係で、通常の空気よりも音を速く伝えます。これが声道で共鳴する際、周波数を変化させて声を高くしてしまうのです。

つまり声道を使った共鳴のメカニズムがなければ、ヘリウムを吸っても声の高さは変化しません。

西村准教授らの研究チームは、水槽に閉じ込めた中国の固有種ヨウスコウアリゲーターを使って実験を行いました。

実験に使ったのはメスのワニで、オスの鳴き声を繰り返しスピーカーで聞かせてそれに答えるように唸らせました。

これを通常の場合と、水槽内にヘリウム(実際はヘリウムと酸素の混合気体ヘリオックス)が満たした場合で録音したのです。

ちなみにヨウスコウアリゲーターの鳴き声は下の動画で聞けます。

実験で録音したヨウスコウアリゲーターの鳴き声を分析した結果、ヘリウムを吸ったワニの鳴き声はフォルマントという声を特徴づける周波数が高くなっていました

ワニの鳴き声の分析
左が通常の空気中、右がヘリオックスを吸ったワニの声。/Credit:Stephan A. Reber et al.,Journal of Experimental

つまりこの実験から、ワニは哺乳類や鳥類と同じような方法で発声を行っていることがわかったのです。

ワニは進化系統上鳥類ともっとも近縁の種で、主竜類に含まれています。この主竜類はワニ、鳥類の共通の祖先である絶滅した恐竜も含まれています。

今回の研究のように、ワニの発声システムを理解していけば、絶滅した恐竜がどのように発声し、仲間とコミュニケーションをとっていたかについても、洞察を得ることができるのです。

これはイグノーベル賞の目指す通り、笑ってしまうようなヘンテコな研究でありながら、実際は深く考えさせられる内容です。

なお、日本人の関わった研究のイグノーベル賞受賞は今回で14年連続になるそうです。おめでとうございます。

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