とても珍しい超高温の海王星「ウルトラホットネプチューン」が発見される

space

ウルトラホットネプチューンのイメージ画像
ウルトラホットネプチューンのイメージ画像。/Credit:University of Warwick

太陽系外惑星の探索は、天文学の中でも調査の難しい研究の1つです。

もっともよく発見されるタイプの系外惑星は、「熱い木星(ホットジュピター)」ですが、逆にとても珍しいのが「熱い海王星(ホットネプチューン)」です

海王星型惑星は、巨大氷惑星とも呼ばれ通常恒星の近くには存在しません。

科学雑誌『Nature Astronomy』で9月21日に発表された新たな研究は、そんな珍しいホットネプチューンの中でも特別超高温な非常に太陽に接近したウルトラホットネプチューンの発見について、報告を行っています。

海王星型惑星が太陽の非常に近くに存在する謎は、ここから解明されるのでしょうか?

海王星型惑星とはどういう惑星なのか?

恒星を取り巻く雪線の想像図。 /Credit:A. Angelich (NRAO/AUI/NSF)

惑星のタイプは、私たちの太陽系の成り立ちから分類ができます。

生まれたての恒星の周りには、多くの惑星の元になる塵が回っています。これは太陽からの距離に応じて、岩石の塵と、氷の粒がくっついた塵に分けられます。

太陽に近ければ熱で氷が溶けてしまうため岩石が多くなり、離れると氷の粒が核になっていきます。この境目は雪線と呼ばれます。

太陽系形成の標準シナリオの模式図
太陽系形成の標準シナリオの模式図。/Credit:小久保英一郎,国立天文台・丸善

惑星の形成では太陽から遠い場所ほど大きな惑星が生まれやすくなります。これは太陽から遠いほうが、恒星の重力的な影響を受けにくく、より広い領域から材料を集めやすくなるためです。

太陽に近い場所では、地球や火星など小さくて岩石主体の惑星で地球型惑星(岩石惑星)が形成されます。これは比較的小さい惑星のため、ガスを大量に捕獲することはありません。

それより離れた場所には、大きな惑星を核に円盤のガスを大量に捕獲した木星や土星のような巨大ガス惑星(木星型惑星)ができます

さらに太陽から遠い領域では、惑星の材料の密度が低くなるため惑星形成に時間がかかるようになります。原始太陽系円盤のガスは1000万年ほどで散逸しなくなってしまうため、ここで生まれる惑星は巨大ですが木星のように大量のガスは捕獲できません。

しかし太陽から遠い寒いこの領域では、凍りついた水やメタンが岩石とともに大量に集められます。こうして形成されるのが巨大氷惑星(海王星型惑星または天王星型惑星)です

海王星の構造
海王星の構造/Credit:JAXA,宇宙情報センター

このため太陽に近い領域には、基本的に海王星型惑星が存在することはありません。こうした領域は「ネプチュニア砂漠」という呼び方をされています。

新種の系外惑星「ウルトラホットネプチューン」

新たに発見された系外惑星は、260光年離れた「LTT 9779」と呼ばれる星の周りで発見され、「LTT 9779b」と呼ばれています。

この星系の主星は太陽によく似ていて、大きさと質量はほぼ太陽と同じです。しかし年齢は若く、おそらく太陽の半分程度の20億年と推定されています。

LTT 9779b」の軌道は非常に小さく、地球-太陽間の距離の約1.6%(250万キロメートル)しかありません。それは非常に太陽に接近しているということでもあり、この惑星は1,970ケルビン(約1,700℃)を超える高温に加熱されています

ウルトラホットネプチューンの動画
ウルトラホットネプチューンの動画/Credit:Ricardo Ramirez,University of Warwick

当然この場所は「ネプチュニア砂漠」の領域です。

にもかかわらず、「LTT 9779b」は海王星型惑星であると分類されたのです。

「LTT 9779b」は観測の結果、質量が地球の約29.32倍、大きさは約4.72倍であることがわかりました。また密度から組成を調べたところ、質量の9%を大気が占めていることもわかりました。

巨大な岩石のコアと非常に豊富な大気を持つというのは、まさに海王星の特徴です。

これだけ太陽に近く、超高温に加熱された海王星の特徴を持つ惑星の発見は初めてのことです。この系外惑星は新しい分類「ウルトラホットネプチューン」と呼ばれています。

この大気を持つ巨大な惑星が、最初からこの場所で形成された可能性はまずないでしょう。何らかの重力的な作用によって非常に太陽の近くまで移動したのだと考えられます。

海王星型に見えるがもとは木星型だった?

不思議なのは、なぜ大気が残っているのか? ということです。

この星系の太陽は若いため非常に強い照射を「LTT 9779b」に降り注いでいます。その場合、海王星のような惑星ではその大気を長く保つことはできないはずです。

大気を剥がされるホットネプチューン
大気を剥がされるホットネプチューン/Credit:Ricardo Ramirez,University of Warwick

では、この星がもともとはよく見つかるタイプのホットジュピター(太陽に接近した木星)で、恒星に近づいたために大気を剥がされた成れの果てである可能性はないのでしょうか?

英国ウォーリック大学の天文学者ジョージ・キング博士によると、「LTT 9779b」を巨大ガス惑星としてスタートさせてその大気を剥ぎ取るためには、X線加熱が不十分であると分析しています。

つまり、ここには大気を完全に剥ぎ取られた岩石だけの惑星か、巨大ガス惑星以外は存在し得ないというのです。

同じ研究チームのチリ大学の天文学者ジェームズ・ジェンキンス博士は他の可能性も説明します。それはこの惑星が巨大ガス惑星であった場合、ロッシュローブオーバーフローと呼ばれる作用によって、主星の重力に大気を奪われたというものです。

もしくは、この惑星はやはり海王星で、主星に近づいて間もないだけであるという考え方もできます。

いずれにせよ、この星系では私たちがまだ知らない、非常に珍しい現象が起こっていることはたしかです。

系外惑星の探索では、トランジット法という惑星が恒星の前を横切ることで発生する減光を分析し、星の成分や密度などを分析していきます。

LTT 9779b」は非常に軌道が短いために、現在太陽の周りを18時間で周回しています。それはトランジット法による分析の機会が毎日訪れるということです。

残念なのはこの惑星があまりに珍しく、ここ以外には比較可能なサンプルが存在しないことです。

研究チームはできる限りこの惑星からデータを収集し、謎の多い「ウルトラホットネプチューン」の形成原理を探りたいと語っています。

あわせて読みたい

SHARE

TAG