材料費約100円の「激安補聴器」が登場、従来品との違いはどこに?

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1ドル補聴器を作成するバンラ氏
1ドル補聴器を作成するバンラ氏 / Credit:Georgia Institute of Technology

世界中の高齢者が難聴を経験していますが、補聴器は高価であり購入できない人も多いでしょう。

アメリカ・ジョージア工科大学生体分子工学部のサード・バンラ氏ら研究チームは、9月23日付けで学術誌『PLOS ONE』に、材料費1ドル(約105円)の補聴器を開発した発表

この超低コスト補聴器はいわゆる手作り可能な「DIY補聴器」であり、これまで高価な補聴器を入手できなかった人たちを助けるものとなるかもしれません。

約100円のDIY補聴器「LoCHAid」

通常、補聴器は片耳10万円以上するものがほとんどであり、中には50万円以上するものもあります。

そのため高齢ゆえに聴力が衰えていても、補聴器を購入できない人は多いのです。特に発展途上国で生活する人々にはなかなか手の届かない代物でしょう。

しかし、研究チームが開発した補聴器「LoCHAid」は限定的な機能しか備えていないものの、大量生産時にはその材料費がたったの1ドルにまで抑えられています。

LoCHAidと装着例
LoCHAidと装着例 / Credit:Georgia Institute of Technology

研究チームは音の周波数増幅の範囲を狭めることによって、設計を簡素化することに成功。そのため対象者は加齢性難聴者のみになりますが、従来のものとは比べ物にならないほど安価な補聴器の作成が可能になったのです。

LoCHAidはマッチ箱サイズのデバイスであり、首からぶら下げるように装着します。デバイスのマイクから音を拾い、増幅した音声をイヤホンによって耳に届ける仕組みとなっているのです。

加齢性難聴の特徴は「高音が聞き取りにくくなる」というもの。そのためLoCHAidは低音を通常音量のまま、高音のみ音量が増すよう設計されています。

しかもLoCHAidはオープンソースなので、誰でもDIYすることが可能。自作する場合の材料費は20ドル(約2100円)未満であり、30分ほどで完成させられるでしょう。

ちなみにLoCHAidは1年半ほどで劣化するため、定期的な交換が必要かもしれません。

従来の補聴器と1ドル補聴器は何が違うの?

大量生産時の材料費のみで1ドル。人件費や調整料金は含まれない
大量生産時の材料費のみで1ドル。人件費や調整料金は含まれない / Credit:Georgia Institute of Technology

10万円以上する従来の補聴器と、開発された約100円の補聴器の違いは何でしょうか?

まず補聴器自体の性能が大きく異なります。

1ドル補聴器がマッチ箱サイズなのに対し、従来品は耳に収まるイヤホンサイズにまで縮小されています。

また1ドル補聴器は高齢者向けに一部の高音を大きくするだけですが、従来品は様々な難聴者に対応しています。ハウリングを抑える機能や音の方向を捉える機能も搭載されているでしょう。

加えて、従来の補聴器料金には「本体価格」に加えて「調整技術料」が含まれています。

人の聴覚は非常に繊細であり、時間による変化も絶えず生じます。従来の補聴器には「人の複雑さ」に対応できるような「複雑な機能」が備わっており、専門家の個々に合わせた調整があってこそ真価を発揮するのです。

補聴器から生じるノイズは、それが稀であっても装着者に大きなストレスを与えるでしょう。ですから使用環境や個人差に合わせた調整こそが「従来の補聴器のポイント」なのです。

1ドル補聴器が目指すところ

1ドル補聴器を装着したバンラ氏
1ドル補聴器を装着したバンラ氏 / Credit:Georgia Institute of Technology

違いに焦点を向けると、「LoCHAidの材料費1ドル」にも納得できます。調整費は含まれていませんし、そもそも調整の余地がほとんどないでしょう。

しかし、1ドル補聴器を「従来の補聴器」の劣化品とみなす必要はありません。1ドル補聴器には固有の需要があるのです。

同研究チーム、アメリカ・ラマー大学音声聴覚科学部のビナヤ・マンシャイア氏は「聴覚を助けるために、最高の技術や最高の装置が必要というわけではありません」と述べています。

例えば、視覚をサポートするために視覚障害者用強度眼鏡や遠近両用コンタクトレンズなどが存在しており、これらは専門家のサポートが必要でしょう。しかし、100円ショップの老眼鏡にも需要があるのは事実です。

同様に、1ドル補聴器が目指すところは、世界中の人が手軽に入手し利用できる「100円補聴器」なのです。従来の補聴器とは別の方向で大きな需要があると言えるでしょう。

現在、研究チームはLoCHAidの製品化を目指しており、そのための臨床試験通過を目標としています。もしかしたら将来、100円ショップの老眼鏡の隣には補聴器が並ぶかもしれませんね。

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