火山噴火の犠牲者から”520℃の熱にさらされた脳細胞が無傷で発見される”!(イタリア)

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発見された脳組織
発見された脳組織 / Credit: journals.plos

今年初め、西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火で亡くなった男性の頭蓋骨から、ガラス化した脳組織が発見され話題となりました。

脳は脂肪分が時間とともに溶けてしまうため、考古学的な記録として残ることはきわめて稀です。

しかし今回、フェデリコ2世・ナポリ大学(伊)により、同じ男性の遺体から再びガラス化した脳組織が発見されました。

10月2日付けで『PLOS ONE』に掲載された報告によると、発見された脳組織には、脊髄や小脳に当たる脳細胞が無傷の状態で保存されていたとのことです。

”摂氏520度”の火砕流が町を襲った

男性の遺体は、1960年代に古代ローマの都市・ヘルクラネウムの建物内で発見されたものです。

年齢は25歳前後で、死亡時は木製のベッドにうつ伏せの状態で火山灰に埋もれていました。

大噴火を起こしたヴェスヴィオ火山の火砕流は、隣接する都市・ポンペイとともにヘルクラネウムを飲み込み、多くの人が命を落としています。

火砕流の温度は摂氏500度に達していたと推定され、都市の住民を数分の1秒で即死させるのに十分な熱さでした。

男性の遺体、見つかった脳組織AとB
男性の遺体、見つかった脳組織AとB / Credit: journals.plos

また、男性を襲った火砕流は、発見されたの状態と周囲の火山灰から、摂氏520度に達していたと見られます。

これは極端な輻射熱が脳の脂肪を一瞬で気化させるのに十分な温度です。

その後、火山灰が急速に冷却したことで、脳組織がガラス化され、今日まで残ったと言われます。

”小脳”の一部を発見か

今回の調査では、高性能の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、新たに見つかった脳組織を細部まで調べました。

その結果、神経細胞を構成する「軸索」「ミエリン鞘」と見られる構造が発見されています。

神経細胞の構造
神経細胞の構造 / Credit: ja.wikipedia
軸索(緑)、ミエリン鞘(黄)
軸索(緑)、ミエリン鞘(黄) / Credit: journals.plos

さらに、エネルギー分散型X線分析という方法を用いて、発見されたサンプルの化学組成を測定。その結果、炭素と酸素が豊富に含まれたタンパク質が検出されました。

これらをヒトの脳内で見つかるタンパク質のデータベースと比較したところ、すべてがヒトの脳組織に存在することが分かっています。

例えば、「ATP6 VIF」というタンパク質は、神経伝達物質の伝達に関わるものです。

発見された脳細胞のクローズアップ
発見された脳細胞のクローズアップ / Credit: journals.plos

研究主任のピエル・パオロ・ペトローネ氏は「タンパク質の濃度や位置を踏まえると、脳底部の小脳と脊髄の一部に当たるものではないか」と考えています。

2000年近く前の脳が調べられることは大変貴重であり、研究チームは今後、生物学や法医学など多面的なアプローチから調査を続ける予定です。

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