ブラックホールに飲み込まれた星が「スパゲッティ化」して消える瞬間を初めて観測!

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ブラックホールに吸い込まれスパゲッティ化する星のイメージ。
ブラックホールに吸い込まれスパゲッティ化する星のイメージ。 / Credit:ESO/M. Kornmesser

reference: ESO

星がブラックホールに飲み込まれ引き裂かれる。

そんな壮大なイベントは、お話としては聞いたことがあっても、実際に観測されたという話はあまり聞きません。

実際そうした現象は宇宙でも非常に稀な出来事で、また起こったとしても地球からうまく観測することもできませんでした。

しかし、10月12日に科学誌『王立天文学会月報』に掲載された研究は、ブラックホールに消える星の放った最後の光の爆発を観測することに成功したと報告しています。

星がブラックホールに飲み込まれるとき、一体何が起きるのでしょうか?

ブラックホールに飲まれた星のスパゲッティ化現象

ブラックホールに飲まれる星のクローズアップ。
ブラックホールに飲まれる星のクローズアップ。 / Credit:Wkipedia

星がブラックホールに飲み込まれ破壊される現象は「潮汐破壊現象 (ちょうせきはかいげんしょう)」と呼ばれています。

星がブラックホールに吸い寄せられ、その中へ落ちたとき星は強力な重力の影響によって垂直方向へ引き伸ばされ水平方向へ押しつぶされることで、細長い紐状になります。

ちなみにスティーブン・ホーキング博士はこの様子を「スパゲッティのように引き伸ばされる」と表現していて、天文学ではこれを「スパゲッティ化現象」と呼んでいます。

こうしたブラックホールに落ちる物質の振る舞いは、理論的には理解されていましたが、実際その様子を観測することは非常に困難なことでした。

それは現象自体が稀な出来事ということもありますが、ブラックホールの周囲は、吸い寄せた塵が渦巻く降着円盤で覆われていて、落ちていく星の様子が覆い隠されてしまうためです。

しかし、今回の研究チームはその様子を観測するチャンスが存在することを発見しました。

ブラックホールに落ちた星は、引き裂かれて爆発を起こします。そのとき発生する放射によって、観測を邪魔する塵を吹き飛ばす可能性があったのです。

そして、そのチャンスを使い見事に潮汐破壊現象の様子を初めて詳細に観測したのが今回の研究になります。

もっとも地球の近くで見つかった潮汐破壊現象

潮汐破壊現象『AT2019qiz』が観測されたエリダヌス座周辺の空。
潮汐破壊現象『AT2019qiz』が観測されたエリダヌス座周辺の空。 / Credit:ESO, IAU and Sky & Telescope,ESO/Digitized Sky Survey 2. Acknowledgement: Davide De Martin

チームが研究した潮汐破壊現象は「AT2019qiz」と名付けられています。

この現象は地球から約2億1500万光年離れた銀河の超大質量ブラックホール近くで発見され、飲み込まれた星の断末魔とも言える光の爆発は、ホスト銀河を上回るほど強力で明るいものでした。

2億1500万光年という距離は、これまで観測された潮汐破壊現象の中でもっとも地球に近い位置です。

「AT2019qiz」は星が引き裂かれた直後に発見されました。そのため、地球の多くの望遠鏡がそのポイントに素早く向けられ、先ほど述べた潮汐破壊現象を覆い隠す塵が吹き飛ばされる観測チャンスを捉えることができたのです。

場所はエリダヌス座にある渦巻銀河で、星が引き裂かれる爆発の光度が大きくなり、やがて消えていく6カ月もの間、観測が続けられました

この観測では、電波波長、可視光波長、X線、紫外線などさまざまな波長で広範な観測が行われ、ブラックホールに星が飲み込まれるときに起きる詳細な様子が明らかになったのです。

星がブラックホールに消える「潮汐破壊現象」

星がブラックホールに飲まれる潮汐破壊現象のアニメーション。
星がブラックホールに飲まれる潮汐破壊現象のアニメーション。 / Credit:ESO/M. Kornmesser

飲み込まれた星の質量も明らかとなっていて、それは太陽とほぼ同じだといいます。そして、飲み込んだブラックホールの質量は、太陽の100万倍に及ぶ超大質量のものでした。

ブラックホールは星の半分の質量を飲み込み細長いスパゲッティ状にして、トイレの排水口に流れる水のように降着円盤の一部にしてしまいます。そしてそれは強烈な摩擦によって銀河より明るい光を放ちます。

こうして星の一部の質量は飲み込まれ、一部の質量は外へと放出されることになります。星を飲み込んだブラックホールが放出するジェットの量は、飲まれた星の質量に比例するということも以前の研究から明らかになっています。

こうした詳細な潮汐破壊現象の観測は、とても珍しいケースです。今回のデータは、今後同様の現象を研究するための指標になるだろうと研究者は語っています。

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