ついに初めて”室温での超電導”を達成! 世の中を一変させるまであと一歩

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今回の研究を発表したディアス研究室の液体窒素で冷却された超伝導体の上に磁石が浮かんでいる様子の写真。これまではこの写真のように超電導には超低温環境が必要だった。
Credit:University of Rochester photo / J. Adam Fenster

電気抵抗が0になり、磁場を弾く不思議な現象「超伝導」は絶対零度に近い極寒の環境でなければ実現できないものでした。

もしこれが日常の環境で実現できるようになれば、世の中は一変すると言われています。

超電導を室温に近い環境で実現する研究は進歩を遂げていて、これまでで超電導を実現した最高温度は-23℃です。これも大躍進と言える成果でしたが、10月14日に科学誌『nature』で発表された最新の研究は、とうとう完全な室温15℃で超電導を実現したと報告しています

しかし、これは超高圧という環境と引き換えに実現された成果でもあるんです。

ついに実現された室温15℃での超電導

ダイヤモンドアンビルセルの仕組み。
ダイヤモンドアンビルセルの仕組み。/Credit:Dias lab,University of Rochester

室温超電導を実現するために今回の研究で使用されたのは、高圧力をかけられる装置「ダイヤモンドアンビルセル」です。

これは2つのダイヤモンドが向い合せで設置されている装置で、ダイヤモンドで挟んだ底面に高い圧力がかかります。

実験ではここに水素と炭素、そして硫黄を組み合わせた試料をセットして「炭素質硫黄水素化物」を合成しました

これが室温での超電導を実現させた物質なのです。

超電導は量子力学的な現象で、電子が最低エネルギー状態に近づいたときに発生します。この状態は絶対零度近くで起きるため、基本的には極低温の状態で見られる現象として知られています。

しかし、同様の現象は軽い元素の結晶では比較的高い温度で起きやすいと考えられているのです。この世のでもっとも軽い元素は水素なので、水素の結晶を使えば高温でも超電導が起こせるのです。

問題は、軽い水素を結晶化させることが難しいということです。水素を固体にするためにはとてつもない高圧をかける必要があります

高圧をかける装置ダイヤモンドアンビルセルは水素を結晶化させるために使用されたのです。

なお、この装置で生成できる超電導材料の量は非常に小さなピコリットルサイズ(1リットルの1兆分の1)のものです。

鍵を握るのは水素の化合物

固体の水素作成には、結晶化がしやすくなるようにさまざまな物質との化合物が試されています

以前発表された研究では、マックス・プランク化学研究所とイリノイ大学の研究グループが、ランタン水素化物というものを使用して-23℃での超電導に成功しました。

今回の研究を発表したロチェスター大学のディアス研究室は、最初イットリウム水素化物を使い約-10℃の超電導に成功しました。これには2600万psi(ポンド毎平方インチ)の圧力が必要でした。

ちなみに地球の海面での大気圧は約15psiなので、2600万psiは大気圧の約170万倍の圧力になります。

次に研究チームは炭素を使うことを思いつき、水素が豊富な共有結合を持った有機材料の調査を行ったのです。ここで試された「炭素質硫黄水素化物」が3900万psiの圧力(大気圧の260万倍)で、15℃の超電導を実現しました。

超電導材料の可能性

超電導は電気抵抗0、磁場を弾くマイスナー効果など非常に不思議な特性を持っています。

磁場を弾くマイスナー効果。
磁場を弾くマイスナー効果。/Credit:Wkipedia

これを通常の環境で実現できれば、損失のない送電網や、電気の貯蓄、リニアモーターカーのような摩擦のない高速列車が実現可能になり、現在の世の中は一変することになるでしょう。

超電導を実現するためのネックになっていたのは、超低温でなければ機能しないという点でした。

しかし、今回の成果に「もはや温度は超電導の制限にはならなくなった」と語る研究者もいます。

代わりに課題となっているのは高圧でなければ、超電導材料が作れないという問題です。これは今回の実験のように、少量の材料しか作れないという問題とも繋がっています。

けれど、今回の研究は炭素を利用することで温度の問題を大幅に改善すると同時に、純粋な水素だけで金属状態を作るより低い圧力で材料を作り出すことに成功しています。

元素の組み合わせによる「組成調整」で15℃での超電導に成功したという今回の研究は、通常環境で超伝導を達成するための鍵になっていくでしょう。

【編集注 2020.10.16 10:30】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。
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