登山家が遺物を持ち帰ってしまう?
気候変動が、こうした驚くべき発見を可能にする一方、懸念すべき問題もあります。
というのも、氷河から露出した動物のミイラや人工物は、即座に発見・保護しなければ、急速に腐食し、崩壊し始めるのです。
氷河の融解は、多くの考古学的なお宝を提供してくれるものの、そのお宝にはタイムリミットがあります。また、考古学者たちが、お宝が現れるのを氷河の上で待ち構えるわけにもいきません。
代わりに、登山家が遺物の発見を報告してくれることが多いのですが、これにも問題があります。
一般の登山家たちは、出土した遺物が貴重なものと気づかず、自宅に持ち帰ってしまうケースが多発しているのです。
1999年に、イタリア人の登山家が発見した木彫りの人形(冒頭画像)は、昨年になるまで自宅のリビングに飾られていました。しかし、調査の結果、数千年前に人類がつくった貴重な遺物と判明しています。
研究者らは「アルプスに点在する約4000の氷河のうち、95%が今世紀末までに消滅する可能性がある」と指摘します。
そのため、氷河に埋まった遺物を救出するには、専門家と登山家の協力が必要なのです。