分子シミュレーションによって模擬されたガラス(右)。白丸赤丸は分子を表し不規則に配置されている。
分子シミュレーションによって模擬されたガラス(右)。白丸赤丸は分子を表し不規則に配置されている。 / Credit:東京大学
chemistry

ガラスでは分子の再配置が絶えず起こっている。分子の“固体的な振動”と“液体的な流動”の中間的な状態が明らかに (2/3)

2021.01.27 Wednesday

2020.10.19 Monday

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分子シミュレーションによるガラス分子の熱運動の解析

物質は膨大な数の分子から構成されていて、固体でもその中の分子たちは熱によって絶えず運動しています。

この分子の熱運動が固体の物性・性質を決めています。通常の結晶固体は、分子が1つの規則的な配置をして振動しています。熱が伝導したり、固体中を音波が伝わるのもこの振動によるものです。

しかし、ガラスには分子の振動だけでは説明できない物性があると昔から指摘されていました。

つまりガラスの不思議な構造を理解するためには、振動以外の分子の運動を解明する必要があったのです。

そこで今回の研究は分子シミュレーションを用いて、ガラス中の分子の熱運動の詳細を観察・解析しました。

ガラスの分子シミュレーション。左は今回明らかになったガラスにおける分子の再配置運動。
ガラスの分子シミュレーション。左は今回明らかになったガラスにおける分子の再配置運動。 / Credit:東京大学,Mizuno et,al.,The Journal of Chemical Physics(2020)

右の画像は分子シミュレーションによって模擬されたガラスで、白と赤のつぶつぶが分子を表しています。ガラスではこのように分子が不規則に配置されています。

左の画像が分子シミュレーションで明らかになったガラスの分子の運動の様子です。立方体の一辺は分子1つの63倍の長さがあり、赤い矢印は分子の位置の変化を100倍に引き伸ばして表示しています。

ここからわかったのは、ガラスでは分子が振動しているだけでなく、分子の再配置が常に起こっているということだったのです。

これはガラスが液体的な性質を持っていることを示しています。

ただ、ガラス中の分子は液体の流動のように、分子が遠くへ拡散していくことがありません。あくまで拘束された空間内で再配置を繰り返して運動しているのです。

つまり、ガラスは決まった配置で振動する固体ではなく、液体のような流動をするわけでもない、固体と液体の中間状態だということができるのです。

ガラスが固体か、液体かという議論は長く続いていましたが、その問いに対して中間状態という明確な答えを示したのが今回の研究の成果です。

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