“ミミズを振動させて”人間の脳をコンピューターに安全に接続する研究

振動するミミズが、脳への安全で高速なデータ転送法を教えるかも
振動するミミズが、脳への安全で高速なデータ転送法を教えるかも / Credit:depositphotos
reference: the conversation

革新的発見は、ちょっとした興味やお笑いから生じるのかもしれません。

今年、「人々を笑わせ、考えさせてくれる研究」に対して与えられるイグ・ノーベル賞を受賞した「ミミズをスピーカーで振動させる研究」ですが、ここにはさらなる可能性が秘められているようです。

この研究を行ったオーストラリアのスウィンバーン工科大学の物理学者イワン・マクシモフ氏は10月21日、科学誌『THE CONVERSATION』にて、ミミズの振動が、人間の脳をコンピューターに接続するためのより安全なアプローチに繋がるかもしれないと伝えました。

ミミズをスピーカーで振動させる実験

ミミズにファラデー波を発生させる研究
ミミズにファラデー波を発生させる研究 / Credit:depositphotos

マクシモフ氏らの「ミミズをスピーカーで振動させる実験」は5月に科学誌『Scientific Reports』に掲載され、イグ・ノーベル賞を受賞しました。

この研究は、ミミズをスピーカーで振動させると表面にファラデー波ができるというもの。

ファラデー波とは、水の入った容器を鉛直方向に一定の振動数で動かすと生じる水面波のことです。この波は自然界でもよく観察されており、例えばカエルは水面にファラデー波を作って仲間を引き付けます。

通常、このファラデー波は水面で観察されるものです。では、ほとんど水分で構成される生物ではファラデー波が生じるのでしょうか?

この疑問に答えたのがマクシモフ氏らの研究です。実験の結果、ミミズの表面にもスピーカーの振動によってファラデー波が生じたのです。

ちなみに、この波を特定のかたちで動作するようコントロールすることも可能とのこと。

ミミズを振動させる意味とは?振動で脳に情報を伝えることに繋がるかも!?

さて、この「ミミズにファラデー波が生じる実験」は、単に「ユニークで面白い実験」では終わらない可能性があります。

マクシモフ氏によると、この実験は「人間のに外部から情報を伝達するアプローチ」として利用できるかもしれないというのです。

この可能性は、脳の働きにおける既存の仮説に基づいています。

それは脳細胞の情報伝達が電気信号だけでなく超音波によっても行われているというもの。

神経インパルスは超音波で生じるという仮説
神経インパルスは超音波で生じるという仮説 / Credit:depositphotos

脳細胞の情報伝達は、神経インパルスという神経系の共通言語によって伝わります。これは電気信号として知られてきましたが、超音波としても伝わるという仮説があるのです。

この説が真実であるなら、その波をコントロールすることで、脳細胞の情報伝達もコントロールできることになります。

イグ・ノーベル賞の研究により、ミミズの組織にファラデー波を生じさせ、コントロールすることができました。

これを発展させるなら、人間の脳の組織に任意のファラデー波を発生させることができるかもしれません。

仮定が正しければ「波=情報伝達」ですから、これは思考のコントロールに繋がるでしょう。

人間の脳をコンピューターと接続する新たな方法になるかもしれない!

人間の脳とコンピューターを接続する試みはこれまでに何度も行われており、それらは電気信号を用いた方法でした。

例えば、イーロン・マスク氏の「ニューラリンク」をはじめとするいくつかの企業では、針状の電極を人間の脳に埋め込み電気信号を送ろうとしています。

実現まで遠い道のりがありますが、ヘリコプターの操縦方法や外国語の知識などを数分でコンピューターから会得できるかもしれません。

しかし、このアプローチは脳組織の損傷や炎症など重大な健康リスクを抱えています。

スマートフォンによって発生させた振動が、私たちの思考をコントロールするという未来
スマートフォンによって発生させた振動が、私たちの思考をコントロールするという未来 / Credit:Ivan Maksymov

これに対して、音波などの振動は人間の組織を損傷することなく移動できます。実際、超音波画像診断は医療に利用されています。

「脳細胞の情報伝達は音波でも行える」という仮定の上に成り立つものですが、これが証明されるなら、「音波で脳とコンピューターを接続する」という新たなアプローチによって、安全な脳への高速データ転送が可能になるかもしれません。

さて、これらの夢のような事柄を実現させるためには、まず、ファラデー波がミミズの神経インパルスと相互作用するという科学的証拠を提出しなければいけません。

マクシモフ氏によると、現段階では証拠を明示できていませんが、その可能性は十分にあるとのこと。

彼の「笑える研究」からは、深くて途方もない可能性が見出されたのです。今後、マクシモフ氏は証拠提出のためにさらなる調査と研究を行なっていく予定です。

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