古代マヤ文明は現代でも通用する「世界最古の浄水システム」を持っていた

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きれいな水は古代都市で重要だった。
きれいな水は古代都市で重要だった。 / Credit:depositphotos

古代マヤ文明の誇った大都市ティカルでは、天然の鉱物を使った浄水設備が存在していた可能性があります。

シンシナティ大学の研究チームがNatureから刊行されるオープンアクセス学術雑誌『Scientific Reports』に10月22日付けで発表した研究によると、ティカルの都の一部の貯水池から、ゼオライトや石英による水の濾過を行っていた証拠を発見したと報告しています。

これは現代でも利用されている水の濾過方法であり、マヤ文明は2000年近く前からその方法を知っており、世界最古の水処理システムを構築していた可能性があるのです。

 

現代にも通用する世界最古の浄水設備

堆積物を採取するUCの研究者ニコラス・ダニング氏(左)。
堆積物を採取するUCの研究者ニコラス・ダニング氏(左)。 / Credit: Liwy Grazioso Sierra,UC

現在のグアテマラ北部にある古代マヤ文明の都ティカルは、700年以上続いた大都市でした。

この都市にあるコリアンタール貯水池で、シンシナティ大学の研究チームは水フィルターシステムの痕跡を発見したのだと言います。

それはゼオライト(ケイ素とアルミニウムの結晶性化合物)と石英による粗い砂で、天然の分子ふるいとして機能するものです。

ゼオライトの結晶を含んだ砂のイメージ(左)、今回の研究で発見されたものではない。代表的なゼオライトの骨格構造(右)
ゼオライトの結晶を含んだ砂のイメージ(左)、今回の研究で発見されたものではない。代表的なゼオライトの骨格構造(右) / Credit:depositphotos,Wikipedia

興味深いのはこの2つの鉱物を使った水の濾過は、現代の浄水器でも使用されているものであり、それを2000年近く前のマヤ文明が発見していたということです。

同様のシステムをヨーロッパが使用するようになるのは、近代になってからなので、これは世界最古の水処理設備の発見と言えます。

マヤ文明は自然の中から浄水技術を発見した

きれいな水のイメージ。発見された水源とは関係はない。
きれいな水のイメージ。発見された水源とは関係はない。 / Credit:depositphotos

今回の研究チームの1人、カリフォルニア大学の地理学者であるニコラス・ダニング氏は、グアテマラでのフィールドワークで地元の人が利用している天然の湧き水を発見しています。

それは石英粒とゼオライトの露出した火山凝灰岩で、そこから染み出す水はきれいで甘いと地元では有名でした。地元の労働者はここからボトルに水の補充を行っていました。

そのときダニング氏は、この岩石のサンプルを採取しておいたのですが、これが今回ティカルの遺跡で発見された貯水池の鉱物と密接に一致していたのです。

その後研究チームは、ティカルの北東約29キロメートルにあるバホ・デ・アズカルの切り立った山の尾根で見つかった、ゼオライトと石英の堆積物と遺跡の貯水槽で発見された堆積物が同一であることをX線回析から突き止めました

「古代マヤ人は、この鉱物がきれいな水と関連していることに気づき、なんとか都市まで持ち帰ったのでしょう」とダニング氏はいいます。

沈殿タンクを貯水池に作った

古代ティカルの浄水システムの想像図。
古代ティカルの浄水システムの想像図。 / Credit:Tankersley et al.,Scientific Reports(2020)

以前ナゾロジーでも紹介した同大学の研究では、ティカルが深刻な水源の汚染によって滅びた可能性が指摘されています。

ティカルの貯水池にはアオコの原因となるシアノバクテリアの発生した痕跡や、水銀による毒物の汚染が確認されました。

水銀汚染はマヤの寺院を飾る漆喰や壁画に使用された辰砂(しんしゃ)を原料とした顔料が原因だったと考えられます。

しかし、この研究調査ではコリエンタール貯水池から、汚染物質は検出されていませんでした

そして、そのコリエンタール貯水池には今回報告されている浄水システムの痕跡が見つかっているのです。

調査されたティカル遺跡の地図。右の地図の下部にあるのがコリエンタール貯水池。
調査されたティカル遺跡の地図。右の地図の下部にあるのがコリエンタール貯水池。 / Credit:Tankersley et al.,Scientific Reports(2020)

飲料水として使用されるような水の品質管理を古代文明がどのように行っていたかは、これまでも難しい問題として扱われてきました。

今回の発見はその方法を説明する可能性があります。

ただ、この発見は状況証拠に過ぎず、絶対的な証拠とは言えません。ここから1000年以上前の文明の生活を再構築することはかなり難しい作業になるでしょう。

研究チームが次に解明したいのは、この濾過システムが古代マヤ文明全体にどれほど普及していたかという問題です。

ティカルは水の汚染によって滅びたのは間違いないでしょう。しかし彼らは深刻な貯水池の害を防ぐ方法を知っていました。これらがどのように関連していくのかは、興味深いテーマです。

古代マヤ文明は、同時代のギリシャ、ローマ、インド、中国のような技術を持っていなかったと研究者たちは見ています。しかし、水の管理についてマヤ文明は何千年も先を行っていた可能性があるのです。

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