植物の受精段階で、精細胞だけ取り除くとどうなるの?
種子植物には胚珠(はいしゅ)と呼ばれる種子になる部分が存在します。この胚珠には卵細胞が内蔵されており、受精することで種子へと発達するのです。
そして受精までの流れは、以下のようになっています。
- ①花粉が雌しべに付着
- ②花粉が花粉管を伸ばして、胚珠に「精細胞」と「花粉管内容物」を注入
- ③胚珠内の卵細胞が受精し、種子へと成長
イネやコムギ、トウモロコシ、エンドウマメなどはこの成長した種子を食用としており、主な成分は胚乳(ほとんどデンプン)となっています。
さて、笠原氏らは2016年に、シロイヌナズナが受精失敗するとその胚珠が受精なしでも肥大するPOEM現象を発見しました。
これは、上記の②の段階で「精細胞」が無くても胚珠が成長するという現象です。
胚珠は花粉管から「花粉管内容物」を注入されることで、いわば勘違いし、胚珠を成長させる準備を始めてしまうのでしょう。
もちろん肝心の精細胞はないので受精卵はできませんが、胚珠は肥大し胚乳(栄養源)を蓄えます。
もしイネやコムギなどで同様の現象が起こるなら、わたしたちは胚乳を食用としているため、「受精させずに可食部だけつくる」ことが可能かもしれません。