イネに受精失敗させると砂糖ができる
さて、イネでPOEM現象を再現したのが、今回の研究です。
精細胞を取り除き受精失敗させても、米粒(胚乳つまりデンプン)は作られるのでしょうか?
結果は研究チームの期待を良い方向に裏切るものでした。
受精失敗したイネの胚珠は肥大化したものの、デンプンを合成することはなかったのです。ただし、胚珠内にはデンプンの代わりに前駆体である液体が満たされていました。
この液体を解析したところ、砂糖水だと判明。
しかも糖別の割合は、ショ糖が98%、果糖1%、ブドウ糖1%となっていました。受精失敗イネから高純度のショ糖が生産されていたのです。これは私たちが食卓で用いる上白糖とほとんど同じ成分です。
つまり、意図的に受精を失敗させた変異体イネ(砂糖イネ)を利用すれば砂糖生産が可能なのです。これはサトウキビ、サトウダイコンに続く第三の砂糖原料になり得ます。
サトウキビやサトウダイコンは栽培できる環境が限定的であるため、より広範に栽培できる砂糖イネは大きなアドバンテージがもっています。
実際イネは世界各地で栽培されているため、世界中で高純度の砂糖が生産できるかもしれないのです。
今後、研究チームはトウモロコシやコムギなど他の植物での糖生産を考慮していきます。