ここ20年間で「人類の平均体温が0.5℃も低下」、現在も”下がり続ける”その原因とは?

あなたの平熱は何度でしょう?
あなたの平熱は何度でしょう? / Credit:pixabay

実は20世紀初め頃、成人の平均体温は37度でした

これを聞いて「え、微熱じゃん」と感じる人は多かもしれません。

実は人類の平均体温は今世紀を通じて徐々に下がっており、アメリカ人を対象にした調査では以前から指摘されていました。

そして、10月28日にオープンアクセスジャーナル『Science Advances』で発表された新しい研究では、ボリビアの辺境に住む先住民族チマネ族が、たった20年の間に平均体温を0.5度近く低下させ、現在も毎年0.03度ずつ急速に低下していると報告されたのです。

これは一体どういうことなのでしょうか?

 

下がり続ける人類の平均体温

ここ1世紀でイギリス、アメリカでは平均体温が0.5度近く低下した。
ここ1世紀でイギリス、アメリカでは平均体温が0.5度近く低下した。 / Credit:depositphotos

コロナの影響もあって日頃から体温を気にして計っている人が増えたかもしれません。

あなたの平熱は何度くらいでしょうか? ひょっとすると昔よりなんだか平熱の体温が下がったな、と感じている人もいるかもしれません。

それは勘違いではありません。近年の研究では、健康な成人の体温が低下しているとあちこちで報告されています

平熱の目安は、1851年にドイツ人医師カール・ヴンダーリッヒ博士が2万人以上の調査から平均体温は37度であると提唱して以来、約2世紀に渡って一般的に使用されてきました。

しかし、英国では2017年に3万5千人の成人を対象とした研究で平均体温が36.6度と、だいぶ低下していることが報告されました。

続いて2020年にアメリカでも、平熱の体温が約36.4であると示す研究が報告され、全体的に人類の平均体温は低下傾向にある可能性が指摘されたのです。

これらの調査は比較的所得の高い先進国で行われていたため、原因については次の2点が指摘されていました。

1つは医療技術の進歩や衛生状態の改善、清潔な水の確保が容易になったことなどで感染症が減ったこと。もう1つは、空調設備が一般的となり年を通じて私たちの体内温度の調節機能がそれほど働かなくなったためです。

この考察は確かにもっともらしい理由に思えました。

しかし、それだけが原因とは言えない可能性が出てきたのです。

ボリビアの先住民族チマネ族の体温低下

ボリビア、チマネ族の家族の写真。
ボリビア、チマネ族の家族の写真。 / Credit:M. Gurven,The Tsimane Health and Life History Project

今回発表された研究では、ボリビアの比較的辺境にある農村部の住人チマネ族の平均体温が、ここ20年で急速に低下していることを報告しています。

2002年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校の人類学者マイケル・ガーヴェン博士が調査を開始したとき、チマネ族の成人の平均体温は37度でした。これは2世紀前にヨーロッパで測定された平均体温と同じ温度です。

ところが、わずか16年間の調査でその平均体温は36.5度まで低下し、その後も毎年0.03度ずつ彼らの平均体温は低下していったのです。

わずか20年足らずの間に、約2世紀にわたってアメリカで見られた体温低下とほぼ同レベルのことが起こった、とガーヴェン博士は語っています。

この研究は、5500人ものチマネ族成人を対象に1万8000回も健康診断を行った大規模な調査データに基づいています。研究では、ずっと同タイプの温度計を使用し続けていて、他にも周囲の気温や体重など体温に影響を与える可能性のある複数の要因も考慮されているため、データはかなり信頼性の高いものです。

これは医師によって完全に健康と診断された10%未満のデータに制限して分析しても、同様の平均体温低下が確認されました。

これまでの研究では、体温低下の理由に先進国ならではの要因が語られていました。しかし、チマネ族は先進国と事情が異なります。

アメリカ人とチマネ族の一致しない環境

快適で健康な暮らしが体温低下の原因なのか?
快適で健康な暮らしが体温低下の原因なのか? / Credit:Depositphotos

ボリビアのチマネ族は比較的辺境の農村部に住む人々です。それは文明から切り離されたとは言えないまでも、先進国のような整った環境ではありません。

もちろんここ20年でチマネ族の健康に関する状況はだいぶ改善はされています。また、毛布や防寒具などの体温調節を支援する道具も彼らには普及してきています。

しかし、先進国のような劇的な医療の進歩、衛生状況の改善、高度な空調テクノロジーは、彼らの生活環境に普及していません。

ボリビア農村部は熱帯地域であり、依然多くの感染症が蔓延しています。また空調設備も設置されていない場所がほとんどです。

この状況でも平均体温の低下が起きたという事実は、これまでの研究考察の内容では説明できない要因が存在することを示唆しています。

感染症の現象や、体温調節の支援をするテクノロジーの普及が人々の平均体温に影響していることは明らかだと研究者は考えています。しかし、それだけでなく、もっと何か大きな要因が起こっていることも間違いないようです。

これはおそらく複数の要因が複雑に重なって現れている可能性が高く、単一の要因で説明できるものではないだろうと研究者は語っています。

体温はもっとも簡単に測定できる健康のバロメータであり、多くの医療が利用している情報です。

世界で見られる体温低下の理由、人類の身体に何が起きているのかを正確に把握するためには、世界中のさまざまな地域の人々をもっと大勢調査する研究が必要となるでしょう。

しかし、少なくとも平均体温の低下は、人類が昔よりも健康で安全に生活できるようになった証である可能性は高そうです。怯える必要はない問題だと思われます。

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