チャットで仕事を中断されるとイライラする? 職場で受けるストレスの意外な研究結果

仕事中のストレスは測定できるのか?
仕事中のストレスは測定できるのか? / Credit:Depositphotos

reference: sciencealert

集中して仕事をしているとき、横から邪魔をされれば誰でも不快に感じるでしょう。

しかし、職場では新たな仕事の依頼や、進捗状況の確認、面談などで仕事を中断させられる場面も多くあります。

これはどの程度のストレスになるのでしょうか?

国際精神神経内分泌学会の科学誌『Psychoneuroendocrinology』Volume 121で発表された新たな研究では、職場で仕事が中断される際のストレス測定を実施し、そこで意外な結果が得られたことを報告しています

数値として測定することが難しいストレスですが、仕事を中断されることは私たちにどういう影響を与えるのでしょうか?

職場環境を再現したストレステスト

パソコンの乗った机の並ぶオフィス。
パソコンの乗った机の並ぶオフィス。 / Credit:Depositphotos

社会で暮らしていればさまざまなストレス要因に出会いますが、心理学ではそれらをなんとか形にして測定し、問題を明らかにしたいと考えています。

今回の研究目的について、筆頭著者でチューリッヒ工科大学の心理学者ジャスミン・カー氏は「職場でのストレスのもっとも一般的な要因と考えられる、社会的な圧力と仕事を中断された場合の影響について測定方法を見つけたかった」と語っています。

この研究のために、カー氏のチームは研究室を実際のオフィス環境に模様替えし、複数列のパソコンを乗せた机が並ぶ実験場を作り、90人の被験者を集めて調査を行いました。

実験では、参加者は保険会社で働いているという設定で、書類をスキャンしてデジタル化する作業、売上の計算、予約のスケジュール管理などの事務作業に従事してもらいました。

そして実験参加者がこれらの作業をこなす傍ら、2人の俳優に人事担当という形で入室してもらい、参加者へ追加のタスクを割り振ってもらいました。

この実験では、「対照群」として簡単な追加作業を与えられるだけのグループと、「ストレス群」として異なる条件でストレスを与える2グループが用意されました。

ストレスグループでは、準備をして面接を受けるようにというタスクが与えられ、昇進など評価の査定面談が行われました。

また、条件1のストレスグループはこの面接だけが追加のタスクでしたが、条件2のストレスグループにはさらにチャットでメッセージを連打して、作業進捗の確認をしたり、仕事の情報を要約したファイルを作って共有するよう求めるなど、作業を中断させるタスクが追加で課されました。

ストレスホルモンの増加と、主観評価の謎の乖離

仕事中にメッセージが届くのはストレスなのか、気分転換なのか?
仕事中にメッセージが届くのはストレスなのか、気分転換なのか? / Credit:Depositphotos

この実験では、見ての通り条件2のストレスグループが仕事を頻繁に中断されるなど多くのストレスを受けるように設計されています。

条件2のような状況は、実際職場で経験している人も多いかもしれません。

こうして異なる条件でストレスを与えた被験者に対して、実験では模擬的な休憩時間を20分おきに設け、その時間を利用して被験者に感じたことのアンケートと、唾液のサンプルの採取を行い、また心電図装置を常時装着してもらって心拍数のモニターを行いました。

唾液を取るのはそこからストレスホルモンの放出量が測定できるためです。

結果は明白で、評価面談を受けた2つのストレスグループは心拍数の上昇が確認され、唾液中のストレスホルモン「コルチゾール」も増加していました。

また条件2のグループは、条件1のグループよりコルチゾールの量が2倍近く高く検出されました。これは実験の設計に対して予想通りの結果だと言えます。

しかし、研究チームにとって予想外だったのがアンケートの結果です。

興味深いことに、仕事を頻繁に中断されていた条件2のグループは、ストレスホルモンの増加が示されていたにもかかわらず、アンケートでは「あまりストレスは感じなかった」と回答したのです。

これはストレスに対する心理的反応と身体的反応の矛盾を示すものです。

もっとも苦労したように見える条件2のストレスグループは、実際には条件1のグループよりも主観的にはストレスを感じず、いい気分で作業ができたと報告されているのです。

作業の中断は逆にストレスを緩和させる?

この原因は現在のところまだ謎のままです。

しかし作業中断が多発すると、コルチゾールが増加する一方で、本人が感じるストレスは何らかの形で感情的に良いものだと認識されてしまうようです。

研究チームはこれが、チャットを介したやり取りの増加で、仕事内容に対する確実性が増し、うまく仕事をコントロールしているという感覚を高めた可能性を指摘しています。

またチャットメッセージのやり取りは、後に控えた面談に対する緊張をそらすように作用した可能性もあります。

仕事を中断させるようなやり取りが連続することは、ストレスを軽減するポジティブな面を持っている可能性があるようです。

もちろん今回の研究が職場の状況を正確に再現しているものではないことは研究チームも認めています。あくまで作られた環境であり、設定した条件にも制限が多く、真の職場のストレスをここから測ることは難しいでしょう。

しかし、仕事が適度に中断されると、仕事のストレスが軽減して感じられるというのはかなり興味深い結果です。

チームは今後もこのここで起こったことの意味ついて、研究を進めていく予定だといいます。

コミュニケーションがストレスの緩和につながるのか?
コミュニケーションがストレスの緩和につながるのか? / Credit:Depositphotos

確かに1人で黙々と作業を続けるよりも、たとえ仕事に関する話だったとしても適度に人とコミュニケーションを取ったほうが気分は楽になる、ということはありそうな気がします。

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