月そっくりの組成をした小惑星を火星の軌道上に発見! 「月の双子の片割れ」である可能性も

火星トロヤ群。
火星トロヤ群。 / Credit:Wikipedia Commons

reference: AOP

月には生き別れた双子の兄弟がいるかもしれません。

北アイルランドアーマー天文台が率いる国際研究チームにより、科学誌『Icarus』Volume 354に発表された研究では、火星トロヤ群の後方小惑星帯に月そっくりの組成をした小惑星を発見したことが報告されています。

これは太陽系の惑星形成期に起きた天体の衝突まで、起源を遡る問題かもしれません。

>参照元はこちら(英文)

火星のトロヤ群にある小惑星帯

火星のトロヤ群を示す図。太陽から見て火星の前後60度の軌道上にある。
火星のトロヤ群を示す図。太陽から見て火星の前後60度の軌道上にある。 / Credit:AOP

太陽系には、他の惑星や太陽との重力的な影響が釣り合って、惑星が軌道運動しても常に位置関係が変化しないポイントというものがあります。

これをラグランジュ点と呼びます。

ガンダムなどでスペースコロニーの建設地にされるのも、地球と位置関係が変わらない地球のラグランジュ点です。

そして、火星の軌道上には太陽から見て火星の前後60度にあたる2点にラグランジュ点があります。これを火星のトロヤ群と呼びます。

火星のトロヤ群には小惑星が集まった小惑星帯が存在しています。こうした安定した領域には太陽系形成の初期から残る小惑星があり、太陽系の進化の歴史を知る上で興味深い発見をする場合があります。

今回の研究チームは、火星のトロヤ群を研究していて、そこから太陽系初期の歴史を探ろうとしていました。

どうせ観測するなら火星のトロヤ群じゃなくて、地球のトロヤ群でいいんじゃない? と思う人もいるかもしれませんが、地球のトロヤ群は常に太陽の近くに位置してしまうため眩しくて観測するのが困難です。そのため実は地球トロヤ群より火星トロヤ群の方が観測には適しているのです。

月と色がそっくりな小惑星

火星のトロヤ群のイメージ画像。
火星のトロヤ群のイメージ画像。 / Credit:Wikipedia Commons

研究チームは南米チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT望遠鏡に取り付けられた分光器「X-SHOOTER」を使って、小惑星表面の色を調査していました。色の調査とは、小惑星表面で反射する太陽光スペクトルを調査するということを意味します。

もし、この反射スペクトルが太陽系の既知の天体の組成と一致している場合、その小惑星が、地球のような岩石惑星から来ているのか、それとも木星より外側にある氷の多い領域から来たのかなどを判別できます。

そしてチームが調べた火星トロヤ群の小惑星の1つが、今回の主役「(101429)1998VF31」でした。相変わらず分かりづらい型番名ですが、まだ愛称のようなものは設定されていません。

しかしこの小惑星からは、私たちから見てとても興味深い特徴が発見されたのです。

最初、小惑星「101429」のスペクトルは、コンドライトと呼ばれる隕石によく似た組成を示していました。チームはVLTを使ってさらに小惑星の高品質なデータを収集し、NASAの施設にあるデータと照らし合わせてこの小惑星の分類を試みました。

ところが、そのスペクトルはどの隕石や小惑星ともうまく一致しなかったのです。困っていろいろとスペクトル分析を繰り返していたところ、チームは意外な発見をしました。

それは私たちの隣人である、の吸収スペクトルとそっくりだったのです。

スペクトルの比較。赤線が月のスペクトル。黒線が小惑星101429を示す。
スペクトルの比較。赤線が月のスペクトル。黒線が小惑星101429を示す。 / Credit:AOP

小惑星と月のスペクトルはもともとそれほど大きく異なるものではありませんが、よく見るとミクロン単位で吸収スペクトルの深さなどに違いが現れます。

そして小惑星「101429」のスペクトルは、月の火口内部や山の露出した岩盤部分などと、驚くほどそっくりなスペクトルをしていたのです。それはまさに月と瓜二つの存在でした。

小惑星「101429」は月から来たのか?

The Moon.
The Moon. / Credit:ESA/Silicon Worlds/Daniele Gasparri

この珍しい組成をした小惑星「101429」は一体どのようにして火星トロヤ群へやってきたのでしょうか?

1つの可能性として考えられるのは、この「101429」が通常のよくあるコンドライト隕石であり、それが太陽放射への長い暴露の中で月とよく似た組成に変化したというものです。

宇宙風化のプロセスが月と似たように進んだ場合、両者はそっくりになる可能性が考えられます。

しかし、もう1つの可能性としては、小惑星「101429」が衝突などによって分かたれた月の双子の兄弟であるということです。

初期の太陽系には今よりも多くの瓦礫にあふれていて、天体同士の衝突は日常茶飯事でした。そうした中で大きな小惑星(微惑星)が月に衝突し、破片が飛ばされて火星軌道まで到達し、そのまま火星のトロヤ群に閉じ込められたのかもしれないのです。

ただ、もっとも可能性の高いシナリオはこの小惑星が火星から来たというものです。

101429のスペクトルは、惑星サイズの物体の外層や地殻に見られる鉱物が豊富であり、火星には自身とほぼ同サイズの天体が衝突したボレリアス盆地のような痕跡も残っています。これほど巨大な衝突ならば、火星トロヤ群に「101429」を送り出すことは簡単だったでしょう。

もっと詳細に分析してみなければ、この小惑星の親がなんであったのか明確にすることは難しいでしょう。しかし、研究者たちは、単純にこれが月の兄弟と考えることには消極的なようです。

大昔に月と分かたれた兄弟が火星のそばにいる、というのはなんだかロマンを感じるお話ですが、実際はどうなのでしょうか?

トロヤ群の小惑星の研究については、今後探査機を送り込んでより詳細な調査を行う計画も進められています。今後、その真実が明らかになるときが来るかもしれません。

みなさんのおかげでナゾロジーの記事が「Googleニュース」で読めるようになりました!
Google ニュースを使えば、ナゾロジーの記事はもちろん国内外のニュースをまとめて見られて便利です。
ボタンからダウンロード後は、ぜひフォローよろしくおねがいします。
Google Play で手に入れよう App Store からダウンロード
あわせて読みたい

SHARE

TAG