ショウジョウバエの幼虫の「後退運動」を促す神経回路を発見
研究ではショウジョウバエの幼虫が嫌う青色光が照射され、後退運動を促しました。そしてこの時に利用される神経経路を探したのです。
その結果、次の経路だと判明しました。
まず、青色光はショウジョウバエの幼虫の「頭部光受容器」と体表全体に存在する「表皮痛覚神経細胞」の2つで感知されます。
次に、それぞれの信号は異なる神経回路を経由して1つの神経細胞(MDNニューロン)に収束。
そして、ここで統合された情報が後退運動を生じさせる運動ニューロンを活性化させていました。
つまりショウジョウバエの幼虫にはコマンド形式の神経回路がプログラムされていたと確定したのです。
ゲームであれば、Aボタンでジャンプ、Bボタンでダッシュ、AB同時押しで回転ジャンプなどとコマンドが決まっています。
同じようにショウジョウバエの幼虫も、「頭部」刺激で前進運動、「頭部」と「表皮痛覚」同時刺激で後退運動などとコマンドが決まっており、今回の結果により、いわばそのプログラムコードが明確になったのです。
さて、今回の研究からショウジョウバエの幼虫の行動選択メカニズムの一部が明らかになりました。
ショウジョウバエの幼虫の脳はシンプルな構造であり、神経細胞間の全ネットワークも電子顕微鏡レベルで明らかにされています。
それゆえに今回の発見は今後の神経細胞、神経回路の分析に大いに役立つでしょう。
将来的には、ショウジョウバエ幼虫モデルが、行動選択のメカニズム解明に貢献するかもしれません。